ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

イナムドゥチ

2011年03月17日 | 沖縄の飲食:食べ物(料理)

 盆正月の味噌汁

 沖縄では、正月、盆、シーミー(清明祭)の際、重箱に詰める料理はだいたい一緒。天ぷら、煮付け、蒲鉾など。母は毎年、そのほとんど全てを手作りしている。
 母の手作り料理を、私は好きではあるが、その場では儀式的に一口二口食べるだけで、いつもそれぞれ少しずつ貰って帰っている。天ぷらや昆布巻き、豚ロース肉とゴボウの煮付けなどはその夜の酒の肴になる。蒲鉾(これは手作りではない)、豚三枚肉の煮付け、揚げ豆腐等はイナムドゥチという沖縄の伝統料理に用い、翌朝から食す。

 イナムドゥチはイナムルチとも発音されるが、倭語にすると、イナは「猪」、ムドゥチは「擬き」で、イノシシモドキとなる。その意味は、「イノシシに似た者」というのでは無く、「猪汁(シシジル)に似たような物」ということ。

  実家から貰って帰った蒲鉾には2種類あり、表を食紅で赤くした普通の蒲鉾とカステラ蒲鉾(カステラカマボコはどうやら沖縄独特のものらしいので、別項で説明する)。2つの蒲鉾ともにスーパーでよく見る紀文の蒲鉾より大きい。断面積は2倍以上あり、長さも2倍ほどある。母によって6、7ミリにスライスされたカマボコをさらに千切りにし、厚さ1ミリ程度の短冊形にする。その他の材料、豚三枚肉もカステラカマボコも厚揚げもカマボコとほぼ似たような大きさ、形に切り揃える。
 以上の、実家から貰ってきた材料の他にはコンニャクとシイタケが必要である。コンニャクはスーパー(沖縄のスーパーならほぼどこにでも)にイナムドゥチコンニャクというのが置いてあるので、それを用いる。イナムドゥチコンニャクはすでに短冊形に切られている。シイタケは干しシイタケを用いる。
 天ぷらなどを肴に酒を飲みながら、以上の包丁仕事をし、水を入れた鍋を火にかけ、切った材料とコンニャクを加える。料理の本には水でなく鰹ダシを使うとあるが、私の場合はダシを使わず、本には無い日本酒とみりんを加える。沸騰したら火からおろす。干しシイタケは、一晩かけて水戻しをすると抜群に旨くなるので、酔っ払って忘れてしまわないうちに準備しておく。蓋付容器の中に水と共に入れ、冷蔵庫で寝かしておく。翌朝スライスして、料理に加える。もちろんダシたっぷりの漬け汁とともに。
 
  沖縄にはイナムドゥチ味噌というのもある。これもほとんどのスーパーにある。甘い白味噌。年に数回しか作らないイナムドゥチのための味噌ではあるが、もちろん、普通の白味噌として使える。特に鯖味噌煮、ヘチマの味噌煮などに用いると美味しい。が、私はこの甘いイナムドゥチ味噌は使わない。甘くない合わせ味噌を使う。家に常備してある味噌はその1種類しかないからだ。煮る時に加えた酒とみりんが甘さを出してくれる。
 材料の分量を書かなかったが、適当でいい。豚肉が多いとそういう味、シイタケが多いとそういう味で、それぞれに美味い。ダシは豚肉、カマボコ、シイタケからたっぷり出るので不味くなるということは滅多に無い。少なくとも私は、自作を含め不味いイナムドゥチに出会ったことは無い。味噌を入れすぎたならお湯を足せばいい。朝昼食って、ちょっと飽きたのならニラやネギを加えてもいいし、ワカメもいい。何しても美味い。

 「猪擬き」という名は、元々は猪の肉を用いた料理だったと文献にある。しかし、それは少し懐疑的。同じ材料を味噌仕立てではなく醤油で味付けしたものはシカムドゥチ(鹿擬き)と言う。沖縄に猪はいたが、鹿(注1)は17世紀になって鹿児島からごく一部に移入されたのみ、ということから考えるとイナムドゥチ、シカムドゥチという名前はたぶん、味噌仕立てのカマボコの入った豚汁をイナムドゥチ、同じ材料で醤油味にしたものをシカムドゥチということにしようと、この料理を考えた人が便宜上つけた名前で、それがいつのまにか一般化したものではないだろうか、と私は考える。
 注1、慶良間諸島にはケラマジカ(国指定天然記念物)が生息している。詳しくはこちら
 
 
 
 

 記:ガジ丸 2005.1.12 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行

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