ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

クロアナバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 二つあるといいね

 保険会社か何かのコマーシャルで「二つあるといいね」というコピーの出てくるものがある。ネズミがネコに追いかけられて巣の中に入る。その巣の入口でネコが待ち伏せしている。だけど、出入口はもう一箇所あり、ネズミはそこから出て行く。出入口も「二つあるといいね」ということを示唆している、そんなコマーシャル。
 アナバチとはアナバチ科の総称で、地中に穴を掘って営巣するところからその名があるが、今回紹介するクロアナバチもその一種。地中に穴を掘り営巣する。クロアナバチはコマーシャルのネズミよりもさらに上をいき、出入口を三つ作るそうである。ただし、ネズミの巣とは違い、使える出入口は一つだけ。残りの二つは偽物。

  クロアナバチの幼虫や卵を好物とする他の昆虫、あるいは小動物が、クロアナバチの成虫が地面から飛んでいくのを偶然発見する。「やったぜ、あそこに巣があるに違いない」と喜びつつ、その場所へ行き、穴を見つけ、中を覗く。だけど、そこには何も無い。「ちぇっ」と舌打ちする。顔を上げると近くにもう一つの穴がある。今度こそと思って、その穴を覗くが、しかし、そこにも何も無い。「ちぇっ」と再び舌打し、回りを見渡すが、三つ目の穴は無い。「何だ、くたびれ損かよー」と呟きつつ、その場を去る。
 クロアナバチは、「本物の巣の入口」を「働きに出る場合はこの穴を塞いでおく習性がある。」とのこと。なかなか賢い。クロアナバチの幼虫や卵を好物とする他の昆虫、あるいは小動物は、「いやいや、近くに本物がきっとあるはず」などと粘り強く探すほどの根性は無いのかもしれない。あるいは、期待して穴を覗いて2回もがっかりしたら、気持ちが萎えるのかもしれない。ダミーの穴も、「二つあるといいね」というわけだ。

 
 クロアナバチ(黒穴蜂):膜翅目の昆虫
 アナバチ科 日本、南西諸島、台湾、フィリピンに分布 方言名:ハチャ
 地中に坑道を掘って営巣するところからアナバチという科があり、本種は体全体が黒色のアナバチなのでクロアナバチという名前。
 直翅目のキリギリス科の昆虫を捕らえて巣の中に入れ、これに産卵し、孵化後はそれがそのまま幼虫の食料となる。『沖縄昆虫野外観察図鑑』によれば、「穴を3本掘る。中央の穴が本物の巣の入口。働きに出る場合はこの穴を塞いでおく習性がある。」とのこと。その様子を見てみたいものだが、まだ発見できていない。
 体長25~31ミリ。体は大きくて、黒くて、艶があるのでよく目立つ。職場や家の周りでよく見かける。近付くと逃げるのでなかなか写真が撮れなかったが、一昨年の八重山旅行の際、竹富島で近くから撮れた。成虫の出現は5~10月。
 
 顔

 記:ガジ丸 2007.1.20 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行