ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

役に立つ人間作り

2006年11月10日 | 通信-社会・生活

 日曜日、テレビのニュース番組を見ていたら、教育基本法改正案が今、国会で審議されていて、その案が今国会で可決されそうだという。教育基本法改正案の審議については前から聞いており、そう驚くことではないが、可決されそうということには驚く。
 先週も書いた「高校を卒業するための必修科目を履修していない」問題、いじめ問題、自殺問題等々、新たに審議に加えるべき事項はいくらもあるはず。それにも関わらず、当初案をそのまま審議しているのだろうか。そのまま可決しようとしているのだろうか。であれば、私は政治家たちの感性と脳味噌を疑ってしまう。
 現在の教育の問題の多くが、愛国心を中心とする修身教育で解決すると思っているのだろうか。子供たちに矯正下着を着けさせさえすれば、その心が真っ直ぐ育つと思っているのだろうか。自分たちの歪んだ背中は棚に上げて、ということだろうか。
 その数日後のニュースでは、東京都の足立区が、学力テストによって学校の予算に差をつけるというのをやっていた。区の教育委員会の言い分は「頑張った学校を支援する」ということらしい。つまり、「テストの成績が良かったらお金をあげるよ」とのこと。そうかい、子供たちの価値は勉強ができるかどうかだけで判断するというわけかい。
 学校の勉強は苦手だけど、昆虫を観察するのが大好きな子供や、歌うのが大好きな子供や、絵を描くのが大好きな子供や、おしゃれが大好きな子供たちなどには、区の予算を配分する価値は無いということだろうか。あるいは、「成績が悪いのは勉強を怠けているだけである。この世に勉強の苦手な子供はいない。」などと思っているのだろうか。

 「国家の役に立つ人間作り」というものを政治家など、権力を持った人々は考えているのかもしれない。有能で、国に大きな利益をもたらし、なおかつ、国のために尽くす心を持った人間、というだけなのであれば、私は何の文句も無い。ただ、それに加えて、お上の言うことやることに楯突かない人間、という事項があるのなら、大いに反対する。自分たちの言うことをきく有能な人間は自分たちに富をもたらすという考えから、子供たちの心を矯正するという教育改革なのであれば、私は諸手を横に挙げて反対する。

 今朝早く起きてこの文を書いて、ここまで進んだところで、フジテレビの番組『トクダネ』の声に注意が向いた。「日本の品格」と聞こえた。番組を観る。
 藤原正彦さんという人が出ていた。「日本の品格」では無く『国家の品格』という本の著者とのことであった。仕事関係、動物植物関係以外の本をほとんど読まない私なので、大ベストセラーというその本のことも知らなかったのだが、その時の藤原正彦さんの話には興味を持った。深く合点する内容の話であった。
 現在の教育に対する藤原正彦さんの考えを述べていたが、いくつかあった中で、「子供中心主義が日本の品格を落としている。」という言葉が私の耳に残った。おそらく、「子供はまだ人間としての品格を持っていない。厳しく躾けて品格を持たせるべき。」ということなのだと理解する。確かにその通りだと思う。が、しかし、躾ける方の大人が今、どの程度の品格を持っているのかと疑問を持つ。ガツガツ食って、だらしなく生活して、ブクブク太った親が、「食べ過ぎるな!不健康だ!」と言っても、子供は・・・。
 何週間か前に、学校の給食費を払わない親が増えているというテレビ番組を見た。「払えない」のでは無く、「払わない」のである。「払わない」母親へのインタビューがあった。「欲しいものが他にあるので、給食費は払いたくない」とのことであった。自分の欲を満たすためにインチキしているわけである。そんな母親は、どのように子供を躾けているのだろうか。自分の歪んだ背中は見せないようにしているのだろうか。そんな母親に育てられた子供はどんな大人になるのであろうか。そんな子供が親となったら、子供をどのように育てるのであろうか。「自分が得するためにはインチキしてもいい」というような人たちが増えたら、いったい日本はどのような社会になるのであろうか。
 藤原正彦さんのおっしゃる通り、日本の品格は廃れつつあるようである。

 記:2006.11.10 ガジ丸