フェルメールとレブラント展

2016-05-11 | 美術館
IDを忘れたため なかなか入ることができずにいました。


2016年2月 フェルメールとレブラント展に行ってまいりました。

17世紀オランダを彩った様々な48作家の作品60点

わたし的には フェルメールの作品だけを観に行った感じなのですがねw
フェルメールの作品 今の世に残っているものは30数点
世界に散らばっているので まとめて観ることは難しい



レブラント・ファン・レイン 「ベローナ」1633年
物語に登場する人物を誇張することなく等身大で描き
新しい人物像を作り上げ 
光と影の効果を使い 人物の性格を浮かび上がらせる。

ヨハネス・フェルメール 「水差しを持つ女」
部屋に広がる美しい光の世界と 青
絵の下地に 当時の金と同じくらい高価なラピスラズリを使ったと言われております
作品全体が「青」の美しさに魅了されてる気がしました とにかく美しい「青」

このモデルになった女性は他の作品にも登場してますね
手紙を読む青衣の女  窓辺で手紙を読む女 手紙を書く婦人と召使
このモデルは「妻」との説もあります

そして 手紙を書く女性 額が広く他作品にも登場します
少女 ギターを弾く女  「娘」との説があるようですね。 はたして真実は?

全ての作品を見終え 出口の外へ(お土産が売ってますw)
そこには フェルメールの全作品が飾ってありました (当然 本物ではないですよw)

ここからは フェルメールの話に・・・w

謎多き画家 画家自身による手紙も著書も 生存中の作品売却記録もありません
わかっているのは 出生と亡くなった日


デルフトの眺望 1660-61年頃
画家の故郷 43年の生涯のうち ほとんどを過ごした場所

フェルメールの絵には 窓から差し込む光の中で描いた作品が圧倒的に多い
しかし それに匹敵するほど多かったのは 画中画
その画中画の中に寓意が隠されていると言われています

ヴァージナルの前に立つ女(1673-75年頃)
画中画に描かれている天使  たった1人に捧げる愛を意味しているそうです

天秤を持つ女性(1665年頃)
画中画は最後の審判  物事の善悪を見極めよ という教訓

画中画ではないですが 
真珠の首飾りの女 は、鏡の中の首飾りを観察することと
天文学学者がどのように星を観察するかを対比にさせていると言う説もあります

とても有名な 真珠の耳飾りの少女(1655-1666年頃)
この作品は「ベアトリーチェ・チェンチェ」(1599?頃?)の一種のオマージュとして
描かれたのではという説がありますね
何故なら 当時のオランダでは被る習慣のないターバンをモデルが巻いている 
  ということからだそうです
「ベアトリーチェ・チェンチェ」に関しては肖像画をめぐる謎・説がたくさんありますよね
私 この色々な「説」がとっても好きなんですが フェルメールとは関係ないので止めておきます
知りたい方 いないだろうしww

オランダの繁栄とフェルメールの世界観を
うかがい知ることができる貴重な2作があると言われています。

天文学者(1668年)
今では当たり前ですが 昔は有り得ない描き方をしていると言われているようですね

この作品 日本で展示されたのに 見逃した私。。。ゆえに執着がww

フェルメールの特徴は 
室内の一角で正確な遠近法と写実的な光の効果で描かれているということ。
ところが 人物はボンヤリした輪郭
カメラオブスクラ(復元) 当時 多くの画家はそのガラスに薄い紙を置き
そしてなぞることで正確な遠近法をつかみ絵を描いていた
カメラオブスクラの特徴は輪郭が柔らか。 今のソフトフォーカスになります
では フェルメールのボンヤリした絵もガラスに映った画像をなぞったのでしょうか

現代ではソフトフォーカスと自然に思うけれど この時代のフェルメールは
ガラスを使うことなく絵画によって空気感を描けている。

フェルメールのアトリエは屋根裏にあった
カメラオブスクラを使うには 被写体との距離が6,6m 必要
しかし彼の部屋の長さは 3,8m ここでは不可能
光あふれ そこに漂う空気感は」ガラスをなぞるのではなく 
自らの筆で描いていたという証拠になる。
だからこそ 唯一 無二の輝きを放ち 今なお世界中で愛されているのですね

天文学者 そこに描かれている球体は 地球儀ではなく天球儀である
その横には アストロノーム(天体観測器)
壁の右端には絵が掛けられています 画中画。。。

天球儀には 左上に おおくま座 中央には うしかい座
このような星座は神話の中の世界を案じています
手元にある本は オランダの化学者が書いた天文学地理学案内書(アドリアーン・マティウス著)
マニアックな本である。
しかも左に挿絵があることから刊行した第2版ということが分かるそうです
この作品をフェルメール最高の1枚にしているのは
室内に拡散する窓からの光をとらえた描写
学者の上着は光を照り返し柔らかなひだを作っている
詩集がされている布の上に煌く白い粒のような反射光もまた 
光の魔術師と言われたフェルメールならではの描き方

この絵には「対」とも言われている作品があります
地理学者(1669年)
どちらの人物も たっぷりとしたガウンを着ています
これは日本との貿易で輸入した着物をヒントにしたガウンで
知識層 や 富裕層の間で流行っていました。

この2枚 同じ人物に見えますが モデルは謎
候補として挙げられているのは 微生物学者 アントニー・ファン・レーウィンフック
顕微鏡を発明して 世界で初めて微生物を観察した人物。
でも 顔が似てない!

次は 哲学者のバールーフ・デ・スピノザ(父親と親交があったとか)
この人がモデルという論拠はないが そういう所を考え 想像するのも面白いところ

自然科学に精通している人物が注文しないと こういう絵の良さはわからないので
注文者がモデル という説もありました。


フェルメールが活躍した17世紀
オランダは東アジアとの貿易で莫大な利益を享受していた
この時代 海洋を航海する海には必ず天文学者と地理学者が乗っていました。
彼らがいなければ船の位置を判断できなかったからです
この天文学者(1668年)は オランダ繁栄の絶頂期に描かれた作品なのです.

さて天文学者の画中画ですが 旧約聖書の1節 モーセの発見

幼いモーセはエジプト王の虐殺から逃れるために ナイル川に流されました
その岸辺で水遊びをしていた王の娘に発見され 大事に育てられました
そして成長したモーセは 奴隷状態だったユダヤの民を引き連れて
エジプトを脱出し イスラエルに向かうことにした。

この旧約聖書のエピソードと天文学者との関係は何なのでしょう
モーセは天文学発祥の地エジプトで学問を修めたと言われ
エジプトからユダヤ人をイスラエルまで導いたことで
天文学にも詳しかったと言われております

この画中画は 
天文学者は聖書に出てくるモーセに通じる重要な学者だということを意味しています。
フェルメールは旧約聖書と天文学者の密接な関係を「この絵」で示していたのです。

そして絵の中の 机の上に置かれた天文学・地理学案内書
実際の本には 星を最初に観察し研究したのは 聖書に登場する人々であり
神からの助けを借りて我々のために計測し記録した。
この本も 天文学が聖書の時代から連綿と繋がる学問であり
神の導きによって探求されたということを示しているのでした。

この絵でフェルメールが背景にあらわしたかったのは
オランダ黄金時代到来に寄与した天文学者への畏敬の念
連綿と築かれてきた天文学の知識があればこそ 
今の繁栄がもたらされたということを描いているのでしょう

ちなみに ニュートンが「万有引力の法則」を発見したのは(1687)
こののちの20年後のこと
まさにオランダの絶頂期 繁栄がもたらした豊かな生活は芸術も豊かにした
その時代を支えた男たちに敬意をはらい この絵を描いた・・・という説。

フェルメールに限らず 1枚の作品に込められた「想い」って奥が深いですね。


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