大人のための歴史学

地方私大の日本史研究者です。「大人」の視点から歴史を眺め直してみませんか。

エッセイ:風景から考える日本史(1)能登七尾城

2017-04-16 13:12:54 | エッセイ
いま七尾城にいる。改めてこの山城の堅固さと風光明媚さに感嘆している。諸説あるが、上杉謙信が越山併せ得たり能州の景と詠みたくなる気持ちがよくわかる。この城とその麓には、都からの文化人も度々訪れたというが、この眼前に広がる穏やかな里山、里海とそれが一体となった絶景を眼にして、戦国乱世のなか、ひと時の安らぎを覚えたことだろう。ここはまるで別天地である。
しかし、この景色を眺めながら、この小宇宙に安住してしまうことの怖さも感じた。この穏やかな春の陽に、この穏やかな風景を眺めていると、何もしたくなくなる。歌ごころは湧いてくるものの、何か知的な刺激や洞察というものが何となく面倒くさいとさえ思えてくるのだ。これでいいと思ってしまう、のどかさな毎日に埋没しそうな感じがする。
岐阜城からの眺めも絶景だが、そこには何かを掻き立てるようなものがあった。この違いは何だろう。恐らく能登の内浦の穏やかな風景がそうさせるのだろう。
だから能登畠山氏は衰退したというつもりはない。実際謙信はこの堅固な山城の攻略には苦慮している。また、網野善彦氏のいうように能登は海運を通じて、われわれが想像するよりも他の地域とつながっていたとすれば、それなりの刺激もあったろう。
しかし何かこの安らかな小宇宙が、戦国乱世の生き残りという点では、そぐわなかったような気もするのである。
こう書いているうちに風が強くなってきた。山の神を怒らせたかもしれない。そろそろ山を降りよう。しかし繰り返しいうが、この景色が風光明媚であることは間違いない。城の造りといい、歴史好きなら一度は訪れるべきだろう。城下町も含めこれから研究も進んでいくことだろう。(了) 追記:Youtube動画の「七尾城CG」がおすすめです。迫力の映像が楽しめます。
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