大人のための歴史学

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NHK「英雄たちの選択」坂本龍馬暗殺~幕府治安部局の「意地」と「怨念」をもっと考慮すべきでは?

2017-06-14 08:40:38 | レビュー

坂本竜馬の暗殺を宿所の観点から見るという発想は興味深かった。

筆者の意見を述べさせてもらえば、暗殺者は史料的に見ても京都守護職松平容保配下の京都見廻組であり、その理由は京都の治安維持を担当させられた会津容保以下の「意地」と「怨念」であると思う。容保は京都の治安維持という困難な役割を背負わされたが、政局の激動に翻弄さらされ、結局は自身が望まない大政奉還を迎えるに至った。この間、配下の新選組や見廻組は評判が悪く、また結局は尊王攘夷派の志士の活躍を許してしまい、容保以下にとっては受け入れがたい政局となり、また面子も丸つぶれである。

竜馬は幕府高官で大政奉還容認派の永井尚志の賛同を得ていたというが、番組でも触れられていたように幕府内部でも当然意見の対立やそれに基づく派閥の対立はあり、永井の賛同はすぐには竜馬の安全にはつながらない。これも番組内であったように永井は幕府高官であるので、護衛その他の用務で永井の周辺には藩士や幕府治安部局の者が少なからず存在し、また暗殺者が永井の判定のそば近く似たとすれば、当然竜馬が永井のもとを訪れているとの情報は自然と伝わっていき、京都守護職らの治安維持部局がキャッチする所となったであろう。

とすれば、今まで苦杯をなめ続けていた見廻組ら治安維持部隊の当事者にとっては、名誉回復とうっぷん晴らしの絶好の機会である。確かに竜馬は永井ら幕府高官の支持を得つつあったのかもしれないが、その空気や支持が組織の末端にまで浸透するには時間がかかり、ましてや容保が大政奉還に反対していたとなれば、なおさらである。永井や竜馬、あるいは歴史の流れを客観的に眺められる後世の我々から見れば、もっと大局を見よといいたくなるかもしれないが、激動の波にもまれ、ましてや由らしむべし知らしむべからずの幕府機構の末端にいる人物たち、あるいはいつの世も中枢からほど遠く、「グダグダ言わずにただ命令を忠実に実行してればいいのだ」としか言われない「末端」の人間にとってはそういうことはある意味どうでもよいのだ。

こういうふうに組織の論理、あるいは組織の病理から考えれば、竜馬暗殺の経過や理由は意外に単純に理解できる。ことさらに黒幕などを探る必要ないのである。(了)

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