奈々の これが私の生きる道!

映画や読書のお話、日々のあれこれを気ままに綴っています

「水月」川端康成

2017-06-09 13:27:40 | 読書
実は先月の中頃、大ケガをして、現在、入院しています。



この写真は病室から写した都城市内の眺めです。
遠くに、霧島をはじめとする高千穂の峰々が見えます。


これは、先日、梅雨入りした時の写真です。

入院当初はベッドに寝たきりで、起きあがることさえままならなかったのですが、一週間後くらいから、読書をしたり、DVDを鑑賞出来るようになりました。

それで、外泊許可がおりた時に、家からDVDや文学書をいくつか持ってきました。
その中で、私がもっとも病院で読みたい本がありました。
それが、今回、ご紹介する川端康成の短編集「たまゆら」に収録された「水月」です。
この本には十のお話が載っているのですが、その一番はじめの「水月」に、病気で寝たきりの人物が出てくるのです。
しかし、私はこのお話をちょっと読んだだけで、内容をすっかり忘れてしまいました。
だけど、このお話の登場人物と似たような境遇の今なら、少しは理解出来るかも知れないなと思い、読んでみることにしたのです。


その病人は京子という女性の夫で、家の二階でずっと寝たきりで生活していました。
そして、京子がただ一人看病していたのですが、夫の退屈をまぎらわすために、ある日、手鏡で外の景色を見せることを思いつくのです。
その鏡は夫の病んだ心に潤いを与え、鏡を通して、外の景色を見るのを楽しみにするようになりました。
鏡には思いのほか、いろんなものが写りました。
京子の菜園や、空や雲や雪、遠くの山や近くの林も写しました。
野の花も渡り鳥も鏡の中に眺められましたし、鏡の中の道を人が通り、鏡の中の庭で子供たちが遊ぶ様子も見えました。
京子はその鏡に写る世界を夫と見ているうちに、鏡の中にもう一つの世界があるように思え、さらに鏡の中の方が真実の世界なのではとさえ思えてくるのです。

やがて、夫は亡くなり、京子は優しい男性と再婚するのですが、手鏡を通じて、元の夫と鏡のことを思い出さずにはいられなくなるのです。

夫が亡くなった時、夫が外の景色を眺めるのを楽しみにしていた大切な手鏡も棺桶に一緒に入れたのでした。

そして、その鏡が燃える時、鏡に写った多くの世界が無惨に焼けくずれているように感じるのです。


鏡について考えているうちに京子は奇怪な発見をします。

自分の顔は鏡に写さなければ見えない。
神は人間を自分の顔が見えないように作ったが、どんな意味があるのだろう。
そこで、こんな考えが浮かぶのです。

「自分の顔が見えたら、気でも狂うのかしら。なんにも出来なくなるのかしら。」


私はこれを読んで、はっとしてしまいました。


以前、谷崎潤一郎原作・小林清順監督の映画「陽炎座」を観たときに、品子が子供芝居の結末や作者が知りたくなり、子供に問いただそうとする場面があります。 
しかし、それは自分の影を見る事であり、知ってはならない事だっのです。

というのも、それを知った時に品子のすべては終わりを告げるのですから。


鏡は女性がお化粧する時に欠かせないものですが、真実の姿を写している訳ではないのですよね。
鏡に写った文字が裏返しになるのと同じように、真実と微妙に違うものになっています。
だから、鏡に写った顔もそのままではなく、自分の心がある程度、反映されて写っていると言っていいでしょう。
お化粧して綺麗になったなと思えば、そうであるように、どうせ、自分なんかお化粧したってと思えば、そういうふうにしか自分には見えないのではないでしょうか。

でも、神様が自分の顔を直接、見えないように人間を作ったのだとしたら、真実そのままを見てしまうと、発狂してしまうのかも知れません。


このお話の「水月」というタイトルは、水に写った月という意味ですが、本物の月はクレーターで穴ぼこだらけで、美しいというには程遠いらしいです。
だけど、水に写った月にはクレーターなどの醜い部分は遠すぎて写らず、ただ明るい光がゆらゆら揺れて、どこかしら風情を感じるものです。

人生を平穏に暮らすためには、水月の美しさにまず気づくべきなのかも知れないなと、このお話を読んで思いました。
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2 コメント

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大丈夫ですか? (シャンハイ山本)
2017-06-15 06:17:02
 お怪我されてたとは知らなかったので
浮かれたコメント何度も書いてすみませんでした。
私がウルトラセブンなら
悪魔の住む花 松坂慶子さん(子役)の
時の様にミクロ化して怪我な治しにいくのですが・・・
なんでもウルトラセブンになってしまいます・・・
もし笑ったら痛いのでしたらごめんなさい。
シャンハイ山本さんへ (奈々)
2017-06-15 07:37:26
お気遣い下さってありがとうございます。
今日の都城市は深い霧で、朝を迎えました。
もうそろそろ退院かなと思うのですが、そのあと自宅療養をしなければならないので、仕事に復帰するのはまだまだ先になるようです。

そう、「ウルトラセブン」には若かりし頃の松坂慶子さんが出てらっしゃるのですよね。
私は松坂さんといえば、「愛の水中花」のイメージが強いので、可憐な少女の姿にちょっとびっくりしてしまいました。(苦笑)

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