養傳寺を出て進むと右に安立寺がある。
56 日蓮宗常観山安立寺(谷中5-3-17)
山門前右、樹木の暗がりの中に題目塔があって、側面に「鍋冠日親大上人四百遠忌法恩塔」とある。
開基者日養聖人は、日親聖人の拠点・京都本法寺の僧侶だった。
本堂には、日親木像と骨があると『新編武蔵風土記』には書かれている。(ブログ「猫のあしあと」より)
「鍋冠日親」の題目塔は、谷中寺町で2基目。
今回の谷中寺町巡りでの、私の個人的収穫は「鍋冠(なべかむり)日親」を知ったこと。
「鍋冠」は、焼けた鍋を頭に乗せる、日親が受けた刑罰の一つ。
鼻をそがれ、舌を斬られ、度重なる拷問にも屈せず、宗祖日蓮と法華経の唯一絶対性を伝導し続けた日親は、「人生は妥協だ」との諦観を持つ庶民にとって、超人的英雄として映った。
それは、私にとっても同様です。
日親らしさの片鱗でもないか、と思いつつ境内に入る。
清掃が行き届いて、気持ちいい。
参道に等身大石仏がおわす。
もしかして日親聖人?と思い、寺に確かめたら、なんのことはない水子地蔵だった。
画家、下村観山の墓の後ろに坐すのは、日蓮。
偶像崇拝否定の日蓮宗だが、宗祖日蓮聖人像だけは例外。
古そうな墓があるので近寄って見る。
明暦三年と読める。
谷中5丁目最後の寺は、興禅寺。
57 臨済宗大道山興禅寺(谷中5-2-11)
上野に近い谷中なのに天海和尚の名前を聞かないなと思っていたが、やっと天海慈眼大師開基という寺に出会った。
天海開基だから天台宗寺院だったが、天海が禅寺興聖寺を訪れたことから、天台、臨済兼学寺院となった。(ブログ「猫のあしあと」より)
3段の台石の上に立つ地蔵無縁塔の他は、見るべき石造物は少ない。
「茲生供養塔」とあるのは、犬猫供養塔のこと。
墓地には、落語家桂小南、三笑亭可楽、関取高津山芳信、新劇俳優村田正雄らの墓があるが、写真は撮らなかったので、お見せできない。
次回更新日は、10月15日です。
≪参考図書≫
◇台東区教委『台東区の歴史散歩』昭和55年
◇石田良介『谷根千百景』平成11年
◇和田信子『大江戸めぐりー御府内八十八ケ所』2002年
◇森まゆみ『谷中スケッチブック』1994年
◇木村春雄『谷中の今昔』昭和33年
◇会田範治『谷中叢話』昭和36年
◇工藤寛正『東京お墓散歩2002年』
◇酒井不二雄『東京路上細見3』1998年
◇望月真澄『江戸の法華信仰』平成27年
◇台東区教委『台東区の歴史散歩』昭和55年
▽猫のあしあとhttp://www.tesshow.jp/index.html