寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

寺田正夫 高等学校へいく(204)    

2017年07月29日 22時13分01秒 | 寓話

 テーブルの上にたくさんの料理が並んだ。正夫は自分で情けな

い話だけどどの料理も美味しそうで早く食べたいと思った。が、

明子に食べ方を教えてもらいながら食べることにした。それまで

手を出さないことにした。

 正夫はテーブルに並べられたご馳走を見て浦島太郎を思い出し

た。大変なご馳走の山に囲まれて、それを食べてもよいという。

正夫は、これは夢かと思った。これで明子の踊りを見ることが出

来たら、正夫が浦島太郎になったことになる。お土産の箱には気

をつけようと頭に刻んだ。何故かというと一度に年をとってしま

ったら困るからだ。と子供ようなことを時々考える正夫の一面が

あった。

「マオさんはまた何か思いついたのですか」

「はい。子供っぽいことだからいいたくないんだけど。アコは知り

たいよね」

「その通りよ。是非知りたいですね」

「はい、アコ様。お話しします」

 ということで正夫は、先ほど考えたことを明子に話し出した。

すると、

「それじゃ、今度は私が踊りを披露すれば、竜宮城になるわけね」

「そいうことになるね」

「それじゃ後で私の踊りを見せてあげるわね」

「うん。期待しているよ。でも着物を持ってきてないだろう」

「それがね、こういうこともあるかと思って用意してきました」

「えー、ほんとに用意してきたの。それじゃこのご馳走を食べるこ

とが出来ないよ」

「正夫さんは本当にそう思っているの」

「そんなこと本気にしたわけじゃないよ。でもそんな想像をしてみ

ると楽しいじゃないか」

「これで緊張がとれました。アコさん。さあ、いただきましょう」

「なるほどそういう緊張緩和法もあるのですね。覚えておきますね」

「何か怖い感がするなあ」

「これも一つの緊張緩和法ですわ」

「そうかあ。わっはっは。面白いね」

「ほっほっほ。面白いですわね。それでは食事をいただきましょう」

「アコさん、その前にお願いがあります」

「はい、マオさんどんなことでしょうか」

「このご馳走を食べるときに何か食べる順序とか作法のようなもの

がありますか」

「判りました。公式の会食では順番を追って料理が運ばれてくるの

でその通り食べればいいのです。このように一度に出てきたとき

にはどれから食べても差し支えございません。お好きなものから

食べて下さい。一つだけこれはどうでもいいことですが、例えば

肉料理を食べた後ですぐ魚料理を食べると、あるいはこの逆の場

合も同じですが、前の料理の味が口の中に残っていると次の料理

の味が分からなくなることがあります。そのような場合はその間

に野菜とかご飯を食べるとよいといわれているようです」

「なるほどね、それは理にかなっているね」

「それじゃ、料理がさめないうちにいただきましょう。私もお腹が

空いてきました」

「そうですね。虫が鳴き出しました」

 正夫と明子は明日のことを話しながら、ゆっくり料理を味わい

ながら食べた。

料理を食べ終わると、ウエイターがやってきてテーブルの上を整

理した。

「デザートとお茶をお持ちしますので少々お待ち下さい」

  といって、食器を乗せた台車を押して洗い場の法へもとって戻っ

ていった。二人はどんなデザートが出てくるかと思っていたら、

ぼた餅と明子の家で飲んだことがあった抹茶をお盆にのせて持っ

てきた。

「デザートっていうからケーキとかせいぜい餡蜜かと思ったら、驚

いたねぼた餅が出てきた」

「マオさんの好きなものが出てきてよかったわね。よろしかったら

私の分も食べて下さる」

「それはちょっと無理かもしれないよ。料理が美味しかったからね。

たくさん食べてしまったから」

「それでは私もいただきます」

 二人はお互いの顔を見つめながらぼた餅を食べた。最後に抹茶を

飲んで豪華な夕食がすんだ。ウエイターがやってきたので明子は、

部屋のカギを見せた。

「失礼しました。お夜食を必要かどうかを伺いたかったのですが、

いかがいたしましょうか」

「あなたは何か食べたくなるかしら」

 と明子が正夫に聞いた。

「食べるものはいいけど、温かいお茶を飲みたくなるかもしれないね」

「それでは、温かいお茶の用意をしておいて下さいますか」

「かしこまりました」

 といってウエイターは下がっていった。

 正夫と明子は食堂を出てエレベーターに乗って部屋へ戻った。

「美味しかったねー」

「そうね、おばあさまがすすめるわけがわかったわ」

 二人はカウチに並んで腰掛けて、話を始めた。

「明日の朝の練習は何時頃出かけるの」

「7時に会場を開けて下さるので、その時刻に合わせていきたいわ」

「目覚まし時計をセットしておこうか」

「多分大丈夫と思うけど、念のために6時にセットしておいて下さる」

「練習が終わってから朝食になるね」

「そうしてくれと嬉しいわ」

「僕も一緒に行ってもいいんだろう。客席で聞いているから」

「そうして下さると嬉しいわ」

「なんだかアコには悪いけど、明日が楽しみだね」

「悪いことはないわよ。私も楽しみなんだから」

「発表会でアコは何時頃演奏することになっているの」

「私は、親が我が子の必死の演奏を聴いて疲れた頃に配置されているの

で10時30分頃かしら頃かしら。発表の状況によって少しずれるかもし

れないけれど」

「僕は、父母達の後ろに座っているからね」

「そうそう、高い舞台から見ると会場の仲はとてもよく見えるのよ。だ

から、マオさんがどこにいるかをすぐ見つけることが出来るわ」

「でも、手を上げて合図をするよ」

「お願いするわね」

 二人は窓際に行って窓から仙台の夜景を眺めた。正夫は、さりげな

く明子の肩のあたりに手を回して身体を引き寄せた。明子も正夫の腰

のあたりに手を回して正夫に寄りかかっていた。しばらくの間二人は

そのままジーッと動かなかった。

「アコ」

「なあに、マオさん」

「ううん。このままジーとしていたいんだけど」

「私もよ。もうしばらくこのままにしていてね」

「よかった」

 二人はそれぞれ自分の将来を考えていた。正夫は、こんな夢のような

ことが実際に起きていることをどう考えたらよいのだろうかと。明子と

さっきのようなことになって本当によかったのだろうか。いやこれは決

して後悔では無い。明子に誘導されたとはいえ、正夫自身もそれを望ん

だのだから。そして、もう一つは只野真一郎という老人に見込まれたこ

とだった。初めはどういう人かまるで分からなかったが、その人の孫娘

の明子が、正夫を好きになったといったとき只野老人は正夫に興味を持

った。そこで正夫に会うことにした。明子が喜々として連れてきた正夫

に会って話をしたとき、只野老人は不思議な能力を正夫に見た。それは

好奇心の強さと、どこまでも明らかにしたいという願望だった。只野老

人は、正夫に一つの課題を出した。正夫は見事にそれの回答を見つけて

きた。それを見た只野老人は、正夫の将来に孫娘の将来を重ねることを

決意した。

  そのとき只野真一郎は病を得て病床についてしまった。それは現代の

医学ではどうしようもない病気で余命、後1年と医師は判断した。そのこ

とで只野老人は明子と正夫が生涯愛し合えるように仮の結婚式をした。

これらのことは只野夫人も了解していた。

 これは正夫が後で知ったことだが、二人が経済的に困らないようにと

いう配慮もしてあった。

 正夫は、自分の親兄弟に内緒で決心したとは言え、やはり後ろめたい

気がした。いつ親兄弟に報告するか考えていた。

「アコさん。そろそろ休もうか」

「そうね。明日の朝が早いから休みましょう」

 二人は、歯を磨き顔を洗って大きなベットはいった。明子は正夫と向

き合い正夫の手を自分の胸に持って行った。そして正夫の腕に頭を乗せ

て目を瞑った。

 

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