寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

寺田正夫 高等学校へいく(201)

2017年07月23日 23時27分28秒 | 寓話

「マオさんは仙台へ行ったことあるの」

「町中へ出たことはないけど。初めて宮城県へ来た

とき丁度8年前の今頃東北詮方軽便鉄道へ乗り換

えたとき。その次が小学校6年生の時の遠足でト

ラックの荷台に乗って松島、塩竃、仙台と回った

とき。最後は中学2年生のときで、今度はバスで

ほぼ同じコースを回った。仙台でまちなかをある

いたことはなかった」

「それじゃ今度は私がご案内しますね。ガイドの明子

と申します。よろしくお願いします」

「僕の方こそよろしくお願いします」

「先ほど止まった駅は多賀城と言います。多賀城は

古くなら時代から平安時代に国府が置かれたと言わ

れています。当時は調査によって海岸線が多賀城の

近くまで来ていたと言われています」

「そうだったのか。それにしても朝廷の権力がこの

辺まで及んでいたって言うことはすごいね。それと

もう一つ海岸がこの近くまで来ていたこともすごい

ね」

「東北地方は金がとれたので、朝廷はそれを手に入

れようとここへ国府を置いたと言われています」

「そうか、やっぱり金は権力の象徴なんだね」

「集めた金は都の建物や贅沢な生活のために使われ

たのね。そのために庶民は苦しい生活を強いられた

のね」

「何時の時代でも苦労するのは、一般市民と言うこ

とになるんだ。これは世界史の先生がおっしゃって

たことだけどね。そんな社会はいけないと思うんだ

けどね」

「申し訳ないんだけど、私には本当の貧しい生活っ

てどんなものか分からないの」

「戦争中は国民のほとんどが同じように貧しかった

けどね。例えば食事は、お米が手に入らなくなり大

豆から油を絞ったかすが主食になった。これは僕に

はどうやっても食べられる代物じゃなかった。終戦

後でも僕は母親と二人でいるも山菜を採りに行って

それをご飯の中に入れて雑炊にして食べていた。着

るものも家に西にある防風林に休暇でやってきたア

メリカ兵の食事を作るコックさんが着ていた白い服

を転身するときに捨てていくんだけど、それを拾っ

てきて母親が自分で黒い色に染めてくれた。それを

学校へ着ていった」

「でも着るものはあったんでしょ」

「一度ね、こんなことがあった。はいていたズボン

が小さくなっていたのを忘れて友達と相撲を取った

んだ、そうしたらズボンが縫い目の沿って着れてし

まった。それを母に言ったら、白い布を丸く縫い付

けてくれたんだ。猿のお尻は赤いと言うことを知っ

てるかい」

「猿のお尻は赤いの。知らなかったわ」

「それなのに僕のズボンは白かったから、みんなは僕

のことをシロザルって綽名を付けて笑ったんだ」

「私はそんなとき笑わないなあ。だって人にはそれぞ

れ自分ではどうにもならないことってあるじゃない」

「でも子供だったからね。それと何も怒らない村では

大事件だったのかもしれないね」

 そんな話をしていると仙台の町中を列車は走ってい

た。車内放送でもうすぐ終点仙台駅に到着するといっ

ていた。

「なんだか胸がドキドキするね。アコはどうなの」

「私はこんなときは度胸が据わってなでもないわ、と

いたいけれどやっぱり少しドキドキするわ」

 列車はホームへ入りガタンと音がして停車した。正

夫と明子は小さな荷物を持って列車を降りて、改札口

へ向かった。東北本線の駅と直角になるようにホーム

があったのだ。それで仙台駅にメインの改札口まで少

し時間がかかった。

  改札口をでると大きなビルデングがたくさん建って

いた。正夫はキョロキョロ辺りを見回した。明子はそ

んな正夫を優しい目で見ていた。

「マオさん、これからホテルに行ってチェックインを

します。少し休んだら、会場の下見とリハーサルを少

し見てて下さいね。その後でお昼ご飯にしましょうね」

「ホテルなんて始めて入るので震えてきたよ」

「別に怖くはないから大丈夫よ」

「よろしくお願いします」

「はい、かしこまりました。マオ様」

二人は仙台駅近くのホテルに入った。入り口を入ると

井の高い大きな広間があり、右側にテーブルがあり

4,5人の事務員のような人たちがお客を相手に話をし

ていた。明子はそこの後ろに並び、順番が来るのを待っ

ていた。明子の番になった。明子が氏名を伝えると、奥

から年配の人が出てきた。

「私は支配人の佐伯俊と申します。只野様ですね。只野真

一郎さまから伺っています。それではこれに宿泊者のご氏

とご住所をご記入願います」

「はい」

 といって明子が正夫と明子の2人の氏名を書いた。打

合わせ通り正夫は只野正夫と書いた。

「お食事はいかがいたしましょうか。ルームサービスもご用

意できますが」

「食事はレストランでいただきます」

「承知しました。只野様はお元気でいらっしゃいますか」

「はい、今、体調を崩していますが、気持ちが元気です。

支配人さんは祖父のことをご存じなのですか」

「はい。只野様には大変お世話になっています。このホテ

ルを計画した際にも大変ご尽力いただきました」

「そうですか」

「当ホテルに滞在中はなんでも申しつけて下さい。それで

はお部屋へご案内いたします」

 支配人は待機していたボーイを呼んでかぎを渡した。

その際、何事か小声で話した。ボーイは、

「只野様、どうぞこちらへ」

 ボーイはエレベーターの方へ二人を案内していった。

エレベータに乗るとボーイは最上階のボタンを押した。

エレベーターを降りて広いローかを端の方へ歩いて行っ

た。ボーイが一つのドアの前に達かぎを差し込んでドア

を開けた。「どうぞこちらのお部屋です。ホテル内の各施

設はご案内の冊子にでています。何かございましたら、

どんなことでも電話で申しつけ下さいませ。それではご

ゆっくりおくつろぎ下さいませ」

 といってボーイは出て行った。

 正夫と明子は、窓から外を見た。大きな山がすぐ近く

に見えた。あれはきっと蔵王産だと思った。明子は正夫

の手をとって自分の後ろへ回し自分が抱かれるような姿

勢になった。

「アコさん。こんなすごいところに泊まっていいのだろう

か。贅沢すぎるんじゃないかなあ」

「そうねえ。でもおじいさまが、ここなら安全だといって

ました」

「そうだねえ。都会では安全なことが第一だからね」

「もしよければ、会場へ行ってみたいんだけど一緒に行っ

てくれますか」

「もちろんさアコの近くから離れないでいるよ」

「ありがとう。それじゃ出かけましょう。かぎを持って下

さる」

「はい、アコ様」

 正夫の緊張は溶けてきたようだった。二人は荷物を置

いて一階へエレベーターで降りた。フロントに明日の会

場を見に行ってきますといってカギを預けた。

「お気をつけていってらっしゃませ」

 フタルはふぉろんと係の人たちに見送られてドアを開

けて外へでた。明子は行く先の道夫知っているようで、

正夫の腕に自分の手をかけて歩き出した。

 正夫はなんだか周辺がまぶしかった。発表会の会場は

ホテルから歩いて10分くらいのところにあった。会場

に入るとたくさんの親子ずれが練習の順番を待っていた。

中の一人が明子を見つけて近寄ってきた。

「只野明子様ですわね。いつもありがとうございました。

宅の諒子もようやく発表会に出させていただけるように

なりました」

「安田様、ご無沙汰していました。諒子さんの演奏を見ら

れるなんて私もとっても嬉しいです。よく頑張りました

わね」

「只野様のおかげです。今後ともよろしくお願いいたしま

す」

「私の方こそよろしくお願いします。明日が楽しみですわ

ね」

「あの方は只野さんの係累の方ですか。いえ、失礼しまし

た」

「あの方は私の大切な方です。いつかご紹介しますね」

「あら、それはそれは」

 安田は明子から離れたいった。舞台では子供が熱心

にピアノを弾いていた。

「これじゃアコがピアノを弾ける時間が無いね」

「明日の朝、会場が開く前に練習させてもらうようにお願

いしてくるわね」

 明子は舞台に上がって、一人の女性に何か話しかけた。

お互いに挨拶をして明子が何か言った。するとその女性

が肯いて”わかりました”というように肯いて、近くにい

別の女性に何か指示してからまた明子に話しかけた。

れで明子は正夫のところへ戻ってきた。

「明日、朝一番で練習させてくれることになったわ。マオ

さんも一緒に来てね」

「分かりました。そのようにいたします」

 

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« ヒグラシが一斉に鳴き始めました | トップ | 20170724今朝はミンミンゼミ... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

寓話」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。