寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

寺田正夫 高等学校へいく(185)

2017年06月28日 23時12分07秒 | 寓話

 明子がキッチンへ行ってしまったので、正夫は手持ち無沙汰に

なったのでラックから月刊雑誌を取り上げた。初めの方のペー

ジに写真が載っていた。いろんな経歴の人が数人集まって移っ

ていた。同級生という題がついていた。それぞれの写真に移っ

ている人たちは大学で仲のよかった人たちなのだろう。

 この雑誌には、随想の他に小説も数編載っていた。その中の

1編を読み終わったとき明子が応接室へ戻ってきた。

「お待ちどおさまでした。昼食時の用意ができました。あちら

のテーブルへお移り下さい」

「もうそんな時刻になったの。ちょうど短編小説を読み終わっ

たところだった」

「おじいさまとおばあさまは二階の部屋でお食事をするそうな

ので、今日は二人だけです」

「おじいさまにご挨拶してこなければ」

「おじいさまはベットの上では申し訳ないけど、よろしくお伝

えしてほしいといっていましたから。それで後ほどお話しで

きると嬉しいともいっていました」

「わかりました」

「ではどうぞ、あちらへ」

「かしこまりました」

「ほっほっほ、こういうのも面白いわね」

「僕は肩がこってしまったよ」

「あらまあ。ごめんなさいね」

「どういたしまして」

「まだ続けますか」

「いえ、とんでもない。と思いましたがけれど、たまにはハイ

ソサイテイの真似も気分を高めるね」

「マオ様お手をどうぞ」


「ほんとは僕が言う言葉だね」

「お招きしたがわの言葉ですよ」

「なるほど。それではよろしくお願いします」

 正夫と明子はママゴトをしているような気分になっている

ようだった。只野が見たら微笑ましく思ったかもしれない。

 昼食はグラタンというものだった。それはスパゲッチを5

cmほどの長さに切ったものをゆでて特製の深皿に入れ、ミル

クソースをかけてその上にチーズをのせて焼いたものだった。

麺はスパゲッチより太く、マカロニという。焼いているうち

に周囲に香ばしい香りが漂っていた。それと薄黄色のどろっ

としたスープだ。スープの上に、こんがり焼いたパンを小さな

四角形に切ったものが浮かしてあった。別の皿には薄茶色

長さ6,7cm太さ直径1.5cmほどのものを油で炒めたもの

載っていた。これはウインナソーセージというものだ。そ

と野菜サラダだった。

「今日もすごいご馳走だね。それぞれ料理の名前を教えてくれ

ないか」

「はい、マオ様。メインデイッシュはグラタンといいます。次

のお皿はウィンナーソーセージソテイ、薄黄色のものはコー

ンスープです。サラダは分かりますね」

「これらはどこの国の料理なの」

「メインデイッシュはイタリア料理、ソテイはいろんな国にあ

りますが敢えて言えばドイツ料理かしら。スープはアメリカ

でしょうか」

「今日はたくさんの国へ行くことになりますね」

「はい。ご案内は私、只野明子ことアコがいたします。熱いう

ちに召し上がって下さい」

「いただきます」

「いただきます」

 正夫は初めて食べたグラタンは香ばしい香りだけでなく、

もっちりしていて美味しいと思った。グラタンの中にはネギ

の味がするが今まで見たことがないネギの種類と思われるも

のの細切りが入っていた。もう一つ肉の味がする細切りにし

たものが入っていた。スープも少し塩をかけてスプーンです

くって食べた。これも美味しかった。次にウィンナーソーセ

ージは何かの川の中に肉がめてあった。これも美味しかった。

明子の家ではいつもこんなに美味しいものを食べているのか

なあと思ったが、明子の体型を見る限りではそんなに太ってい

ないし、いつもは普通の食事を食べているんだろうと勝手に想

像した。

 食事が終わると、明子はキッチンへ行って紅茶と何かぶよ

ぶよしたお菓子を小鉢のような器に入れて持ってきた。紅茶

は少し濃いめになっているようだと思った。皿の上にテイ

プーンとその上にレモンがのせてあった。

「アコさん、このお菓子は面白いんだけどなんていう名前なの」

「これはムースっていうの。例えば、日本のようかんを柔らか

くしたようなものかもしれないわね」

「味はミルク系だね」

「よく分かったわね」

 正夫は、ようかんと聞いて興味を持った。スプーンで少し

ずつ味わいながら食べた。

「これもアコが作ったの」

「気に入ってくれたかしら」

「もちろんさ。でも、不思議な味がするね」

「イチゴがあればもっと美味しくなるのよ」

「イチゴね。うちの畑にたくさんイチゴを植えてあるので6月

になったら収穫が始まる。そうしたらイチゴを持ってくるね」

「そうしたらイチゴムースを作ってあげられるわね。楽しみ

だわ」

「僕はイチゴそのまんまでしか食べたことがないので楽しみ

だなあ」

「私もマオさんの作ったイチゴでケーキを作れるなんて楽し

みだわ」

 二人は、夢の中でイチゴムースを食べているような感じだ

った。

「マオさん少し手伝って下さるかしら」

「はい、マコ様」

 アコはキッチンへ行って食器を洗うのを手伝ってねといっ

た。もちろん食器洗いは正夫にとっては日常のことだったの

で驚きもしなかった。ただ、ちょっと戸惑いがあった。それ

は自分の家で使っている食器と違って、明子の家の食器はい

かにも高そうなものだったからだ。洗っているうちに手が滑

ったらどうしようかと思った。その様子を見て明子は、 

「どうしたの。何か困ったような顔をしているようだけど」

「ううん。ちょっと戸惑っただけさ」

「食器は食器よ、何も変わりは無いわ。一つだけお願いがある

わ。それはね磨き砂を使わないでお湯で洗うの」

「分かった」

 正夫は明子と並んで食器を洗った。正夫は何故か嬉しいよ

うな恥ずかしいような思いだった。そこへ二階からおばあさ

んが下りてきた。二人がキッチンで楽しそうに食器を洗って

いるのを見てニッコリした。

「明子さん。お客様にお手伝いさせたりして困った子ねえ。

正夫さんすみませんね」

「いいえ、僕が手伝わせてほしいと無理にお願いしたんです。

申し訳ありません」

「いいえ、明子のわがままを聞いて下さって、申し訳ありま

せんね」

「おばあさま、その食器もこちらへ渡して下さい」

「はい、明子さん。ついでにお願いね」

「分かりました」

「そうそう、夕食はおじいさんも正夫さんと一緒に食事をし

たいといっていました。よろしいわね」

「もちろんよ。正夫さんが寂しがっていたのよ。ねえ正夫さ

ん」

「はい。その通りです」

 おばあさんはまた二階へ上がっていった。正夫と明子の

二人は食器洗いが終わったので明子の部屋へ行った。正夫

はすぐ窓の所へ行き松島湾を見た。明子も正夫のそばに来

て並んで窓から松島湾を見た。

「台所仕事を手伝って下さってありがとうございました。と

っても嬉しかったわ」

「僕も嬉しかった。ただ、おばあさまに見られたのはまずか

ったんじゃない。もう来てくれるななんて言われたらどう

しよう」

「マオさん。私の顔を見て下さい。私はむしろ喜んでいるの

よ。何故かというとね」

「なんで」

「おばあさまはきっとおじいさまに報告しているわ。それで

二人で微笑んでいると思うのよ」

「どうしてそう思うんだい」

「だっておばあさまはマオさんをキッチンから追い出さなか

ったでしょう。それは喜んでいた証拠よ」

「そうかなあ」

「夕飯をおじいさまが同席するっていっていたそうよ。分か

ったでしょう」

「分かった。おじいさまが床を離れる気持ちをもたれたのは

いい兆候だね」

「私も久しぶりにおじいさまとご一緒に食事ができるのは嬉

しいわ」

 

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