寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

寺田正夫 高等学校へいく(177)    

2017年06月13日 22時29分59秒 | 寓話

 翌日、正夫は五時に起床した。初めに井戸へ行き新しい水

を汲んできた。くみ置きの桶は中程まであった水が凍ってい

たがその上に新しい水を入れると、初めはミシミシという音

がしていたが、しばらく経つとバシャッと大きな音がして氷

が割れた。 その水を使って正夫は食事の準備をしてから弘を

起こしに行ったがよくねていたのでそのままにもどって、1

人で食事をした。食事が終わると身支度を調えて家を出た。

昨日の雪は上がっていたが、外はまだ真っ暗だった。県道に

出ると、防風林のあるところは膝の下まで雪が積もっていた。

防風林が切れるところから先は膝の上まで雪が積もっていた。

正夫は汗だくだくになって雪道を進んだ。愛香山を越えると

前に人が歩いているのが見えた。正夫は少し急ぎ足になった。

人影の追いつくと、それは珍しく敏夫だった。

「やあ、お早う、敏夫」

「よう、正夫か、お早う。今日はおれの歩が早かったね」

「足跡がなかったのでまだ寝ているかと思ったよ」

「そうか。今日は前に調べておいた、愛香山を通らない道をき

たから」

「へー、そんな道があるのか」

「正夫の家からだと遠回りになるけどな。今度教えてやるよ」

「よろしくな。さあ急ごうか軽便列車に遅れてしまうとやっか

いだからな」

 正夫と敏夫は黙って道を急いだ。大新田に到着したとき、

2人とも汗びっしょりになっていたので服を脱いで乾布摩擦

をした。汗をかいたままにしておくと風邪をひくもとになら

からだ。2人は鞄から着がえの下着を取り出してそれを着た。

その頃になって駅に高校生や勤め人が集まってきた。2人は

客車に乗り込んで座席に座った。そこへ進、強、幸子と雅子

が乗り込んできた。偶然会としてか雅子が正夫の前に立った。

客車の中では座席に座っている物語っている人の手荷物を膝

の上に置かせるのが習慣のようになっていたので、正夫は自

動的に雅子の鞄を膝の上に置く形になった。雅子は、小声で

「ありがとう」

 と言葉少なく言った。正夫は感情を込めないように

「どういたしまして」

 とだけ言って、敏夫と話を始めた。その様子を幸子がチラ

チラと見ていた。国鉄に乗り換えるとき雅子が何か言いたそ

うだったが、正夫は急ぎ足に跨線橋をのぼっていった。すぐ

列車がホームに入ってきた。客車の中は、真ん中辺は好き好

きなのに出入り口付近は、身動きできないほど混んでいた。

それでも上級生は、参考書を見たり英語単語の小さな本を見

て英単語を暗記していた。 

  西の方から通学している古河恵という同級生は、正夫の姿

を見つけて手を上げた。正夫もそれに気がついて手を上げた。

恵ってなんだか女子の名前のようだったので1年生のときよ

くからかわれたいた。そんなとき正夫は恵と話をするように

した。そのことを恵はよほど嬉しかったようで以来仲良くな

った。

 恵は小柄で色白だった。それがからかわれる原因だった。

それを払拭することはできなかったが、恵は正夫を信頼でき

ると考えたらしい。正夫が列車に乗るのは冬の積雪の多いと

きと吹雪の激しい日だけだったから滅多に列車の中で恵と会

う機会は少なかった。大川駅から恵と連れだって大川高校へ

行った。その間少しだったが話ができた。恵は大学志望だが

成績が今ひとつ足りないと悩んでいた。3年生になるときに

は1組に入りたいが、2組に入るのも危ない状態だと言った。

 正夫は弁当を食べ終わると、恵を図書館へ連れて行った。

閲覧室は空いていたので周囲に誰もいない隅の方の席に座っ

た。正夫は、恵の勉強方法を聞いた。恵は、授業の下調べを

一応やるようだった。しかし一度目を通すだけらしい。正夫

は自分の勉強法を参考までにと行って話した。恵は自分のや

り方と全く違うので驚いてしまった。自分がいつもだらけい

ることがわかった。今度一緒に勉強する時間を作ってくれと

正夫に頼んだ。正夫は快く約束した。自習時間や昼食を素早

くとった後に一緒に勉強することにした。

 今日は始業式があるのでその後、午前中は自習時間になる

のが通例だった。

そこで恵と一緒に勉強する時間をとることができる。恵は少

しの間渋い顔をしたがすぐ取り直してお願いしますと言った。

  始業式は校長の挨拶があり、続いて教頭の話があった。教頭

の話では来年度とその翌年度は進学適性検査がないので、ど

こに大学でも大学で行う試験だけになるという。これは誰で

もがどの大学へも受験できると言うことになる。したがって

競争率は高くなることが予想されるが、逆の場合もあるだろ

うという。

2年生諸君は、この機会を逃すことなく頑張ってほしいと結

んだ。

 この年から受験生の間で、四当五落時代に突入した。この

意味は睡眠時間が4時間なら大学合格し、5時間睡眠をとる

と大学へは入れないといういみである。これは今の正夫の生

活そのものであった。ただし寝る時間のことだけであった。

始業式が終わると予定通り午前中の授業は自習になった。正

夫と恵は図書館へ行き隅の方の席に座って勉強を始めた。恵

は、正夫の勉強法を見ていたが、正夫が何をやっているか理

解できず落ち着かなくなっていった。正夫は初め問題をじー

っと眺めているだけだった。それが3分から5分間経過する

と回答を書き始めるのだった。恵は、正夫が考えている時間

に何をやっているかを知りたかったのだ。正夫が回答を書き

終わるのを待って、

「正夫君、問題をじーっと見ている間に何をやっているのか教

えてほしいんだけど」

「いいよ。初めに問題が何を求めているかを考えているんだ。

問題が何を求めているかがわかると自然に解凍の筋道がわか

ってくる。そのまま続けると答えが出てくるんだ」

「正夫君の頭の中でやっていることがわかると嬉しいんだけ

どな」

「それは、口では言えないことかもしれないよ。初めのうち

は系統を見てもいいからたくさんの問題をやることだと思う

んだけど。そのときただ写すだけでなくどうしてそういうこ

とをやるのかを考えながらやるんだ。すると少しずつ回答の

筋道がわかるようになってくるんだ。継ぎに同じ問題をやる

ときは回答を見ないで回答してみる。ここでもどうしてもわ

からないときは回答を見て何故そんなことをやるのかを考え

るんだ。初めのうちはこれをたくさんやっていくうちに少し

ずつ全体が理解できるようになってくるんだ。ただ僕たちは、

難しい問題をどうしてもやりたいよね。だけど難しい問題と

いうのは易しい問題を幾つか組み合わせたものが多いような

んで、易しい問題をやることが必要なんだと思うんだ」

「なるほど、僕もどこかの大学の出題問題を初めにやろうと

していた。だけどすぐ行き詰まってしまい回答を止めてしま

うことが多かった。これからは易しい問題をたくさんやるこ

とにするよ」

「そうだね」

 その後、正夫は問題を一つずつ回答に導く過程を恵と始め

た。初め恵はすぐできる問題を始めた。弁当を食べる時刻ま

でそれをやっていた恵は、かなり簡単に問題を解くことがで

きるようになった。この日はそこまでにして弁当を食べるこ

とにした。図書館の中には別室がありそこは団らん室になっ

ていた。弁当もそこで食べることができるのだ。弁当を食べ

る時間にも恵の勉強法に関する話がつずいた。

 

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