寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

寺田正夫 高等学校へいく(149)    

2017年05月16日 00時19分22秒 | 寓話

 翌日正夫は明子に手紙を書いた。

 明子さん、楽しい二日間を過ごすことができありがとうご

ざいました。

 おじいさま、おばあさま、この度は初めてお会いした僕を

この上ない歓待をしてくださりありがとうございました。楽

しい時間を過ごすことができました。なんとお礼を申し上げ

たらよいか分かりません。ありがとうございました。

 明子さん、西松島から乗った列車の車中で明子さんのこと

を考えていて、危うく乗換駅を乗り過ごすところでした。な

んとか飛び降り、乗り換えることができました。大新田駅に

到着したときには雪が降っていました。そのときはまだ積も

っていませんでしたが、夜を通して激しく降り続き、この様

子では根雪になりそうです。今朝8時頃には約86㎝の積雪に

なっていました。僕は毎年のことだから、なんともおもいま

せんが、降雪量の少ない地方の方(例えば明子さん)には大変

だと感じるでしょう。今日中には150cmを超す深い雪にな

りどうです。

 僕は今、おじいさんの宿題を解決する努力しています。我

が家には紅茶がないので日本茶で実験してほぼ解決したと思

います。次の段階は日本茶と紅茶とでは何か基本的な違いが

あり、それが実験結果に影響していないかを調べます。それ

には両者の製造方法について調べなければなりません。これ

は高等学校の図書館に行かなければなりません。報告はその

後になると、おじいさまにお伝えください。

 年末の28日に両親と兄姉が帰って来ると知らせて来ました。

姉は会社の仕事が忙しいので、1月2日には東京へ戻ると言っ

ていました。両親と兄は1月5日頃まで家でのんびりすると書

いてありました。

 それで明子さんに会う日を1月7日以後にしてほしいのです

がお願いできるでしょうか。

                                                          寺田正男

 

 正夫は手紙を書くことの難しさを感じた。自分の考えてい

ることが、この文章で通じるだろうかという疑問が出てくる

のだ。それにもっともっと書きたいことがあるのに書けない

もどかしさもある。それは自分の書く力が不足していること、

その原因は文章をただ読み進んだ来たことの結果だった。と

正夫は気づいていた。それで高校2年生になってから文章の

読み方を変えてみたのだ。

 ある文章を読むとき、初めに文章全体が何を表現したいの

かを考えてザーッと読む。次に各文章がどんな意味を持って

いるかを考えて精読する。その上でその文章が保っている可

能性、つまり読んだ人にどんな感銘とは言わないまでも影響

を与えるかを推測する。

 しかし、そんな文章を書くことは今の正夫には到底及ばな

いことだと自覚せざるを得なかった。それで、できるだけ簡

明に書くように気を付けていたが、書いた手紙を読み返して

みると心のこもっている文章とは言いがたいと思ってしまう

のだ。すぐに思うような文章を書けるようになる訳ではない

ので、練習するしかない。正夫は、その手本として、芥川龍

之介の小説を参考にすることにした。

 南村郵便局へ手紙を出しに行った。積雪は130cmほどに

なっていた。ただ防風林の東側は80cmほどだった。朝のう

ちにと思っていたのでワラ靴をはいて、雪が靴の中に入らな

いように上のところを縄で縛った。県道へ出るとそこはまだ

誰も通った様子がなかった。雪をかき分けるようにやっとの

思いで郵便局へ着くと開店休業のようで、窓口には誰もいな

かった。

「すみません」

 と大きな声で呼びかけること数回目にやっと人が出てきた。

それは中学の同級生で、今は大川市にある工業高校の土木科

へ通学している男子だった。彼に手紙を見せることはできな

いと思い、局員の方を呼んでほしいというとまだ来ていない

というので切手を買って封筒に貼りポストに投函した。正夫

は、彼と少し話をした。彼は高校を卒業したら東京の土木関

係の会社に入りたいと言っていた。

 正夫は勉強の結果次第で東京へ行くことになると言って言

葉を濁した。

 郵便局への帰りに開拓団の事務所へ寄ってみた。精油工場

の人と事務の人が出勤していた。正夫は事務の人に 

「こちらに紅茶はありますか。もしあったら少しでいいので

すがいただけませんでしょうか」

「紅茶、そんなものがあったかなあ」

 といいながらガラス戸付きの戸棚の中を探してくれた。

すると7,8cm角の缶が見つかった。そして事務員が缶を振

ってみるとカサカサと音がした。

「古いものだと思うがあったぞ、缶がさびているので、もう

これは飲むのは無理だと思うが缶ごともっていきな。そんな

ものをどうするんだい」

「ちょっと実験してみたいのです。湯でだした紅茶にレモン

を入れると紅茶の色が薄くなるんです。それがどうしてそう

なるのかを調べたいんです。まさかレモンは無いでしょうね」

「ちょっとまてよ、黄色いミカンを先週もらったけどあま

りの酸っぱさにそのままうっちゃってあるかもしれない」

 といって茶器の置いてあるあたりを探してくれた。する

と、萎びてしまったレモンが見つかった。

「これでよければもっていきな。何でもすぐ捨てないでとっ

ておくもんだなあ」

「どうもありがとうございます。昨日は日本茶でやってみた

ら予想通りの結果になったのですがやはり紅茶でもやってみ

たかったのです。しかもレモンまであったなんて僕には奇跡

が起きたようです」

「おいおい、大げさすぎるんじゃないか。もしかしたら、紅

茶にレモンを入れると色が薄くなるのが不思議なのか」

「そのとおりです。どうしてか知ってたら教えてください」

「そうさなあ、もうずいぶん前のことだけどな私のいってた

学校で日本でもようやく飲まれるようになってきた紅茶を作

ることができないだろうかと研究していた人に話を聞いたこ

とがあったな。日本茶と紅茶の相違は、日本茶は摘んできた

葉を蒸して手で揉んで細かくする。他方紅茶は摘んできた茶

を発酵させるという。これで日本茶は緑色になり、紅茶は橙

色がかった茶色になる。お茶を浸出させて出てきた成分の中

には多数の成分が含まれている、その中に酸と塩基で色の変

化する物質がある。その物質がレモンのような酸性物質によ

って色がうすくなり、塩基物質(例えば重曹)によって色が

濃くなる。その変化に関わる物質は分からないけどな。変色

することは事実だ」

正夫は事務員の人が話してくれたことを必死にメモした。こ

れで家へ戻って食酢と重曹水で試してみることにした。この

実験は、学園祭で発表したことと関係があることに気がつい

た。明子のおじいさんは正夫達がやった学園祭の発表につい

て明子から聞いていたのかもしれないと思った。正夫はやは

り明子のおじいさんは科学者なんだと推測した。

 

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 寺田正夫 高等学校へいく(1... | トップ | 沖縄本土復帰45周年について... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。