寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

寺田正男 高校学校へ行く(114)

2017年03月21日 18時52分37秒 | 寓話
 正男も駒形につられて校庭の方を見た。緑濃い木々の幹にとまってあぶら

ぜみがじーと鳴いていた。木々の梢では、そよ風にわずかに葉が揺れていた。

駒形は旧弊社にいた頃よりも少しだけ老けたように見えた。頭にも白いもの

が見えるようになっていた。

「ところで、正男君はその女生徒のことをどう思っているんだい」

「はい、自分の本心がどこにあるのかわからないというのが事実です。こんな

ことを言うのは男子として卑怯かもしれませんが、僕を好きだと言ってくれ

るときは僕の心が温かくなってきます。しかし一方で戸惑いも感じる心があ

ります」

「君への答えを出すのは難しいと思う。しかし、私は二つの考え方ができると

思う。一つは、一般の大人としての考え方だ。もし君がその女生徒を心から

好きなら愛を育てるといい。しかし今は高校生であるという自覚を忘れては

いけない。もう一つの考え方は、高等学校の教師としては、今異性に気をと

られると言うことは君の将来にどんな影響が出るか誰にもわからない。しか

し私は、今は勉強に専心することだと思う。こういう考え方に反対の教師も

いるだろうが。私の話は参考になるかどうかわからないけれど、君自身が決

めなければならないことだと思う。一つだけ注意しておくことがある。もし

今の状態から進めば生物学の基本通り子供が生まれるような状態なることも

あり得ると言うことだ」

 駒形はまだいい足りなかったという思いがあったが、正男は賢い子だから

自分でどうすべきかを決めることができるだろうと考えていた。正男は駒形

の話を聞いて大人の考え方を知ることができた。そして自分で真剣に考えな

ければならないと思った。

 正男はしばらくの間、駒形の顔を見つめていた。そして駒形との出会った

ころのことが走馬灯のように正男の脳裏を通り過ぎていった。しかしそれは

そんなに多くないシーンだった。正男が駒形に初めてあったのは小学のとき

だった。その後中学生になって駒形に言われた言葉が高校2年生になって初め

て理解できた。

「駒形先生、今日は突然訪ねてきたのに僕の話を聞いてくださり、その上に貴

重なお話をしてくださり本当にありがとうございました。この問題は僕の人

生にとっても重要な問題だと受け止めて真剣に考えていきます。本当にあり

がとうございました」

「何かの役に立つことがいえたのであれば、私もうれしいです。君のように相

談に来てくれると私も少しは役に立てることができると思うのだが、なかな

か相談にきてくれないんだ。君の話はこれからの生徒指導に役立てたいが、

君の名前な絶対に出さないから安心してくれたまえ」

「はい。わかりました。それでは僕はこれで失礼します」

「正男君も大学へ向かって頑張りなさい」

 こうして正男は雅子とのことを真剣に考えることにした。その上で強からの

連絡のあった日は出席することにした。
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