寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

寺田正男 高校学校へ行く(103)

2017年03月06日 22時16分33秒 | 寓話

 自然の中で食べる食事はことのほか旨かった。食器は洗う

水がないのでそのままにしておいて明日の朝もそのまま使う

ことにする。

 正男は雅子に話があると言って少し離れたところに連れて

行った。今夜は2人だけになるのは避けようといった。みん

なが余計な気遣いしないようにしたいからと付け加えた。雅

子は少しの間黙っていたが、何でか分からないが目に涙をた

めていた。その代わりみんなが起きている間は隣に座ってほ

しいと頼んだ。それで雅子の気持ちが晴れたようだった。西

の空に1番星が明るく輝いていた。あれが金星だ。東の空は

暗かったが星はまだ見えなかった。食事の後、みんなで歌を

歌った。強や進達が旧制高校の寮歌の詩を作り替えた替え歌

だった。正男はこれらの歌は知っていたのですぐ歌詞を覚え

て歌い出した。続いて強達はラジオで流行っている”ひばりの

歌”や、”君の名は”という歌を歌っていた。正男はラジオを聞

くことがなかったので”ひばりの歌”はほとんど知らなかった

し、”君の名は”という歌を知らなかった。しかし、みんなか

ら離れると白けてしまうので黙って座っていた。正男は月が

昇ってきたので星が見えなくなる前に少し星を見たいからと

いって離れたところへ移動した。はくちょう座が真上にあっ

たし、わし座も見えていた。夏の大三角形が二つも見えた。

正男はこんな子とがるのだと嬉しくなった。そのほかにも地

峡では見えない星も1500メートルの高見にあれば見えるこ

とがわかった。

「こんなにたくさん星が見えるの初めてだわ」

 いつの間にか雅子がそばに来ていた。

「いえでもたくさん見えるけど、ここでは360度ぐるっと星が

見える。僕にとってこれはすごいことなんだ」

「ほんとにきれいとしか表現できないわね」

「一晩中でも星を見ていたいくらいだよ」

「マオさんが望むなら、私も付き合ってもいいわ」

「ありがとう。星はねも一つ秘密というのじゃないけど面白い

ことがあるんだ」

「面白そうね。教えて」

「それはね、マコさんは北極星がどれだか分かるよね」

「北極星はと、あそこが北斗七星だからあれが北極星ね」

「その通りだ。空の星はね、あの北極星を中心に一日でぐるっ

と一回転するんだ。だから写真機があれば一晩中シャッター

を開けておけば星の奇跡が移るんだと本に書いてあった。そ

こには写真も載っていた」

「そうなの。その写真を見てみたいわ」

「きっと高校の図書館にあると思うよ。天文の本とか地学の本

とか見ると出ているんじゃないかなあ」

「それなら9月に高校へ行ったら図書館で探してみるわ。マオ

さんてほんとに読んだ本の内容をよく覚えているのね。改め

て感心したわ」

「理解しているかどうか分からないけれども自然現象には興味

があるから覚えるのかもしれないね」

「私も読んだ詩を出来るだけ覚えることにするわ。そして誰か

に聞かれたときに話してあげることが出来るようになるわ」

「少し前に「天井桟敷の人々」という映画を見たんだけどさ、

外国人ってよくたとえ話で誰それはこういったといって聖書

とか詩とか、誰かが言ったとか言って引き合いにするらしい

ね。映画の中でも出てきたし。マコさんもきっと出来ると思

うよ。日本人だと昔から論語や漢詩などの文章や詩の一部を

引き合いに出すよね。あれってちょっと格好いいと思うんだ」

 こうしていつか時の過ぎるのを忘れて話し込んでいた。正

男は本気で一晩中起きていたいと思ったが、みんなはもう寝

たようだし、雅子を付き合わせるのは悪いと思って小屋へ入

ることにした。雅子はこっちを見ないで、ちょっと待ってと

いって少し離れたところでしゃがみ込んだ。正男は南の空を

見上げていた。もしかしたら蠍(サソリ)座が見えるかもし

れないと思ったけど見つけることが出来なかった。雅子は正

男のところへ戻ってきて一緒に小屋に入った。

 

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