寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

寺田正夫 高等学校へいく(179)    

2017年06月16日 00時29分02秒 | 寓話

 健樹はいいやつだ。だから間違いの無いように気をつけてほしいと

思った。

1年生のときも2年生のときも学園祭で協力してやったことは信頼で

きると思った。しかし雅子のことはたとえ健樹でも言えることではな

い。名前は忘れてしまったが健樹の付き合っている彼女は何でそんな

ことに拘るのだろうか。その前から諏訪村の誰かのを気にしていたよ

うだし。それもちょっと弁当を食べるとき水を飲ませてもらっただ

けなのに、こんなに関わってくるのは変だと正夫は思った。"君子危

うきに近寄らず”か、俺は君子じゃないか。もうこのことを考えるの

を止めた。

 ちょうど列車の時刻に近づいたので、健樹と分かれて大川駅へ向

かった。列車は1時間に1本しか大川駅に止まらないのでおくれな

いように急いだ。駅のホームに着いて柱に寄りかかって列車を待っ

ていると大川工業高の進達がやってきた。

「正夫じゃないか。今日は遅かったんだな」

「やあ、君たちこそいつもこんなに遅いのかい」

「俺たちは毎日午後は実習で、作業が終われば早く帰れることもある

し、遅いときもある」

「授業の他に実習もやるなんて大変だなあ」

「大変だと思ったことはないぜ。何しろ好きでやっていることだから

な」

 正夫は、はっと思い当たった。 ”好きこそものの上手なれ”だ。

「そういえば英一はいつもラジオを作っていたな。スピーカーまで

作っていた」

「俺たちはいつもどうやっていいものを作れるかを考えているんだぜ」

「そうかあ。それに引き換え、俺たちはただ問題を解くことしか頭の

中にない。こんなのは勉強じゃないな」

「俺はそんなこと無いと思うぜ。もっと難しいことをやるためには基

礎をしっかり身につけておかないといけないんじゃないか」

「いいこと言ってくれるじゃ無いか。俺はそう思ってやってきたし、

これからもやっていく」

「正夫、お前は俺たちの夢なんだから頑張ってくれないと俺たちは怒

るぜ」

「え...」

 そのとき列車が入ってきたので正夫はほっとした。いつもの下校

時の列車は高校生で混んでいたが、1本後の列車は勤め人が多く高

校生は少なかった。

  正夫は窓側に座って一面真っ白な外を見ていた。進達は、何か難し

いことを話し合っていた。列車はすぐに乗換駅に着いた。軽便列車

に乗り込むと幸子と2,3人の諏訪村から通学している女子高生が

乗り込んできた。幸子は正夫の隣の席に座った。

「正夫。正夫は大学へ行くんでしょう。勉強をちゃんとやっているの

すか」

「さっきも進に聞かれたよ。俺のことをみんなが心配してくれる。嬉

しいことだと感謝しているよ」

「後1年で正夫は諏訪村からいなくなるんだねや。いつか戻ってくる

ことがあるのすか」

「今からそんなことはなんとも言えないよ。兄が一人残るから、夏休

みとかに戻ってくることもあると思うけどね」

「雅子のことだけど、手紙でも書いてあげてほしいんだけど。あんな

ことが表面に出てしまったから、正夫は怒っているんだろうしね.

....」

「はっきり言って、雅子にとって俺は一体何だったんだい。幸子と進

はうまくいっているんだろう」

「それはねいろいろあるけどまあうまくいっていると言えるのかなあ」

「俺は雅子のことを忘れることにしたんだ。今は来年度の受験のこと

しか頭の中にないよ。先生みたい見駆け落ちする人もいるけどね。俺

はそんなにふらふらしないし、自分の夢を実現したいという覚悟で勉

強している」

「やっぱり正夫は、違うんだねや」

「それは誰でも同じだろうが、そこまで本気になれるかどうかの問題だ

と思うな」

「ところで、今誰かと付き合っているのすか」

「今俺が話したことがわからなかったんだね。もう雅子のことは口に出

さないでほしいんだ。諏訪村を嫌いになりたくないんでね」

「分かったわ」

 幸子は正夫の本心を未だに計りかねているようだったが、それは仕

方が無いと思う正夫だった。このまま諏訪村の同級生が何時までも雅

子のことを聞きたがるのはいやだった。正夫は少し諏訪村の同級生に

ついてうんざりし出していた。小さな村だから同級生といえども、日

常の中にちょっとした事件とまでは言わないまでも変化があれば、そ

れを話題にしたいと考えることが正夫には理解できなかった。

 軽便列車が大新田駅に着いた。駅前にはバスが待っていた。正夫は

一人で歩き出した。すると進達が後を追いかけてきた。それで何か話

しかけたがっているようだった。彼らの住んでいるところは正夫の家

までの距離の半分ほどなのでゆっくり歩いても1時間弱で家に着く。

正夫の場合は、急いでも100分間くらいはかかってしまう。英一もい

ないから小野田川を渡ると一人で歩くことになる。それでどうしても

早足になり愛香山の峠を駆け上がり駆け下ることになる。それでも正

夫が家に着いたのは18時40分頃になってしまった。

「ただいま。遅くなってしまった」

「お帰り。飯作ってあるぞ」

「はい。兄さんはもう食べたの」

「うん。7時からまた会議があるから先に食べた。風呂も沸かしてある

ぞ」

「兄さん、ありがとう」

 正夫はヤカンの湯を沸かし直し、味噌汁を温めて食事をした。正夫

は弘にすまないと思った。食事を済ませ、後片付けを終わると翌日の

予習を始めた。教科書を読むのはこれで3回目だから、暗記している

のを確認するだけだった。

国語は話の筋が分かり、この文章が何を言いたいのかも理解できてい

た。理科は、問題集をやったが、進との話を思い出した。この問題の

中に何か新しいことを発見できないだろうかとじーっと目を閉じて文

章を思い出した。すると今まで気がつかなかったことが理解できた。

その問題と2題後の問題は非常に似ているがちょっとしたことを置き

換えてそれを問題にしていることが分かった。数学の幾何学はおなじ

ように不足しているものを見つけてそれを図に書き込むことで解決の

糸口が分かるようになった。今のところすべての問題は解答できるよ

うになった。やっかいなのは世界史だった。今までは重大な事件や発

見・発明を年代順に並べることだと思っていたが、今は事項のかんれ

んせいをもとにかんがえるようになった。すると歴史の流れのような

ものが見えてきた。しかし世界中のことを関連付けるのは困難だった。

ここはもっと工夫しなければならないと思った。

 

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