Duke MBA 日本人ブログ

Duke University - Fuqua School of Business(非公式)

Team Fuqua で自分の限界を超える

2015-10-07 22:55:32 | Leadership

はじめまして,1年生のKoheiです.

光陰矢のごとく月日は過ぎ,渡米してから3ヶ月があっという間に経ちました.社会人になると時間の経過を早く感じるようになりましたが,MBA生活では異なる早さを実感しています.仕事はミスをすれば大きな社会的責任を伴うため,正確性が非常に重要であり,また,毎日永久的に続く長期戦のため,コンディションを保てるだけの精神的,体力的な余裕がないと体が壊れてしまいます.そのため,会社ではある程度余裕を残しキャパシティの範囲内に収まるよう,自然とアクセルの踏み具合を調整していたように思います.一方,MBAの学生生活は,学内でミスをしても誰にも迷惑がかからないので,自分の限界を振り切った冒険をすることでき,その結果,自己の成長が促されます.こちらではよく"Safe Environment"という言葉を耳にしますが,『失敗を恐れず挑戦できる』ことがMBA生活の大きな価値であると私は考えるようになりました.

さて今回の投稿では,学生が新しいことに挑戦し,成長できるよう手助けするFuquaの組織的な仕組み "Personal Development Program"(以降 PDP)を紹介したいと思います.

【PDPの概要】

Fuquaは教育機関としてリーダーを育てることに注力しています.学生がありたきリーダー像に向かって成長していけるよう,自分自身を見つめなおし,目標を定め,達成する過程を組織的にサポートするプログラムがPDPです.一年生は,8月に『Leadership, Ethics and Organizations』という授業の中でPDPの概念を学び,9月にC-LEAD(コア授業の課題を共にする6~7人のグループ)のメンバーと,COLE(Center on Leadership and Ethics)フェローと呼ばれる2年生の先輩とともに,PDPを策定します.策定した後は,各自が定めた目標とコミットメントを遂行できるよう,チームメンバーとCOLEフェローがサポートしながら1年の学生生活を過ごすことになります.

【PDPの策定】

目標を定める前に自分自身を深く振り返ることになりますが,その際には以下の問いに答える必要があります.

1年の学生生活を通じて

 ・どのような経験,行動,能力などを身につけたいか?

 ・何を成し遂げ,1年の終わりに自分はどうありたいか?

 ・Fuquaのコミュニティに対してどのようなインパクトを与えたいか?

 ・Fuquaのコミュニティから何を得たいか?

これに基づいてStatement of Purposeを定めます.なぜそれが自分にとって大切なのかをチームメンバーとCOLEフェローに説明できる必要があるため,自分自身がMBA生活に求めるものや将来のキャリアプランなどを振り返って深く考える必要があります.

また,以下のFuquaの価値観と,自分のミッションが繋がっていることが重要です.

 ・Authentic Engagement

 ・Supportive Ambition

 ・Collective Diversity

 ・Impactful Stewardship

 ・Loyal Community

 ・Uncompromising Integrity

【PDPの実践】

PDPを策定した後は,定めた目標とコミットメントが確実に実行されるよう,チームメンバーとCOLEフェローがサポートします.例えば,PDPを定める際に"Peer Coach"と呼ばれる身近な人を定めます.Peer Coachは,立てたプランが遂行されているかどうかを客観的に監視し,2週間に1回程度ミーティングを開き,日々の生活の過ごし方に対して話し合います.コミットメントが達成されていなければ,Peer Coachはプランが達成できるよう促し,それでもできなければ,なぜできないのか,他に良い方法があるか,など一緒に考えサポートします.また,チームメンバーから定期的にフィードバックをもらう機会が設けられ,自分の強み,弱み,クラスやコミュニティへの貢献などを評価してもらいます.私がこれまで過ごした日本では,同僚を褒めることはあっても,不足点を批判するような公式の機会はありませんでした.同僚から弱点を伝えられることに慣れていない私にとってはショックな経験です.また,同僚の不足点を探すことは,慣れていないと意外に難しいもので,なかなか建設的な批判を述べることができませんでした.しかし,PDPの組織的な仕組みがあることで,日々の生活から同僚のことを考える意識が芽生え,自然と鍛えられていきます.このように,将来のリーダーにとって必要でありながら,系統的に身につけることが難しい能力を成長させる機会がFuquaにはあります.

【PDPの実例】

私の場合,世界中の様々なバックグラウンドの人々から成るコミュニティにおいて,貢献によって自分の存在意義を示しつつ,自身のコミュニケーション能力を向上させることを目標としました.

 ①自動車が壊れて困っている人を助ける

 ②スポーツを通じてFuquaコミュニティを活性化させる

 ③語学と文化の壁を破る

①Fuquaの位置するダーラムは公共交通機関が限られるため,学生一人一台の自動車所有は必須となります.日本における自動車の保障8万kmに対して,米国では20万kmと非常に長く,日常で自動車が壊れるというトラブルに多く遭遇します.私は前職でテストドライバーとメカニックを経験したことがあるので,Fuquaの学生に対して,自動車が壊れたときのヘルプ,中古車購入時の相談,にボランティアで応じることにしました.具体的には,初回の授業時にクラスメートに自己紹介でアナウンスし,困ったときに連絡をくれればいつでも対応することをアピールします.何人か助けてあげると,噂が噂を呼んで,ガンガン電話がかかってくるようになりました.助けてあげたお礼として何かを自分に返してもらうのではなく,代わりにあなたも困っている人を助けてコミュニティに還元しなさい,と伝えるようにしています.こうして,自分にあって他人にない経験や能力を生かすことでコミュニティに貢献し,自分の存在意義を固めるという努力が私のひとつ目のPDPです.

②授業以外でFuquaコミュニティに参加する機会はたくさんありますが,私の場合は学生時代に力を入れたスポーツを通じてFuquaを盛り上げていくことにしました.サッカー部である"Fuqua United"に所属し,どんなに忙しくても週に1回は試合に参加します.特に南米やヨーロッパ出身の学生と知り合う機会が増えるため,学内でのネットワークが広がり,学業やビジネスにおける交流が活性化されます.また,学生時代にフットボール部だったこともあり,フラグフットボールに参加してアメリカ人と交流したり,アメリカ外の学生とフットボール観戦してアメフトの楽しみ方を教えてあげることで,彼らがアメリカ人と交流する一助となるよう努力することが,私のふたつ目のPDPになります.

③日本国外に居住経験がなく,学生時代や前職でも英語を使う経験のなかった私にとって,英語でのコミュニケーションは非常に向上努力を要する分野になります.また,言葉に問題がなかったとしても,文化の壁は意外に大きなもので,アジア人はアジア人と,アメリカ人はアメリカ人と,南米人は南米人と集まりやすい傾向にあります.日本人の私にとっては,中国や韓国の学生と一緒にいることは非常に心地よく,逆に,アメリカ人と一緒に過ごすことは言語的にも文化的にも非常に難しく苦しい時間です.昼休みは意識的に固定の友達とランチを食べることを避け,週に一回以上は異なる人種のクラスメートを見つけて横に座ることにしました.また,アドミッションのボランティアに参加し,Fuquaを志願する世界中からのMBA候補生がキャンパスビジットした際に学内を案内し,Fuquaの魅力を語り,質問に答えるという役割を担っています.学生の代表として,英語がペラペラのネイティブの質問に答えることは,私にとって非常に難しい挑戦的な仕事ですが,自分の限界を超える機会と思って努力を続けています.

他の学生のPDPの例として,授業で一回は必ず手を上げて発言をする,アカウンティングのコーチ,マラソンへの参加など,人によって様々です.学生それぞれがコミュニティに貢献しながら目標に向かって努力し,助け合い,成長をしていく機会こそがFuquaの魅力であると考えています.