国語特に現代文 一瀬文孝

紆余曲折を経て、現在、河合塾現代文講師。

2017年高3生早大現代文 第二講 解答例

2017-04-29 20:13:42 | Weblog

高3生早大現代文の解答例。掲載するにあたり、本人の了解はとってある。

 

時間について人間の皮膚を切りとりその皮膚が修復されるまでの時間はどれくらいかかるのかを調べた学者がいる。この時時間は仕事の側から定義するほうが適当であると筆者は思った。これと同じように時間もまた一般的には単位時間をあらかじめ定める。しかし筆者は一つの仕事を達成するために必要な時間をそれぞれに設定し人間の生を設計するというような方法もあり得るかもしれない。それに加えておきたいことが一つある。時間は社会全体を支配する一般的価値観になりつつあり、科学研究において社会の価値観が影響力をもつ。なくもがなのものと考えない社会は時間を必要とする。

 

諸君は、この解答を見て、意味がわかるだろうか?

私は全く分からない笑。

では、添削してみよう。

 

 

 

時間について人間の皮膚を切りとりその皮膚が修復されるまでの時間はどれくらいかかるのかを調べた学者がいる

具体例は不要。

 

この時時間は

「この時、時間は」と読点を加える。句読点は文章が読みやすくなるようにきちんと打とう。字数を嫌がって全く打たないというのはダメ。

 

③仕事の側から定義するほうが適当であると筆者は思った

要約において「筆者は~」という表現は不要。

 

これと同じように時間もまた一般的には単位時間をあらかじめ定める。

「これと同じように」という表現が、直前文「時間を仕事の側から定義する」という筆者の論と、「時間もまた一般的には単位時間をあらかじめ定める」という一般論をつなぐ接続表現としては不適切である。

これは文のつながりを何も考えていない証拠である。概して生徒は、「接続という概念」をほとんど持ち合わせていない。

諸君は第一講で示した「十三種類の接続語」を覚えただろうか? まあ、覚えていない人も多いだろう。

そこで提案がある。接続語自体に問題意識をもてない人は、まず、古文の接続助詞を勉強してみてくれ。

「を・に」「ば・とも・ど・ども」「て・で・つつ」「ながら」「ものを・ものから・ものゆゑ・ものの」あたりを、早急に学習したまえ。

さすれば「接続という概念」が、文章読解でかなり大切であるということに気づけよう。

 

⑤しかし筆者は一つの仕事を達成するために必要な時間をそれぞれに設定し人間の生を設計するというような方法もあり得るかもしれない。

要約において「筆者は」という表現は不要であるし、そもそもこの主語に対する述語が存在しない。

ここまでくれば小学生の作文レベルとなる泣。

 

⑥それに加えておきたいことが一つある。時間は社会全体を支配する一般的価値観になりつつあり、科学研究において社会の価値観が影響力をもつ。

「時間は」ではなく、「時間を「悪」とする評価基準は」である。

 

なくもがなのものと考えない社会は時間を必要とする。

「なくもがなのものと考えない」について、「何を」という目的語が抜けている。

主語・述語・目的語が欠落している解答は多く見られる。

 

 

私は、生徒の答案を採点するにあたって10点満点の減点方式でつけるのだが、この解答は採点不能であった。点数が残らないのだ。内容的に不備があるのはもちろん、日本語も小学生レベルであったからだ。だいたい「文脈=文同士のつながり」がないので、読んでいて、なんの話か全く分からないのである。

 

ちなみにこの解答例を提示してくれた生徒の第1回河合塾模試(マークも記述も両方)の成績は、国語の偏差値30台であった。日本人かどうかも疑わしいレベルである笑。

 

しかし、である。

ここまで酷評されながら、また私の授業も最初はよくわからなかったということらしいのだが、彼は直前講習の早大現代文まで、定期試験があっても休まず(7月末まで部活もしていたにもかかわらず)、要約も毎回書いて来た。

 

そして、今年、中央大に見事合格した。上掲した解答例を書いた四月の段階で、中央大はほぼ無理、というか絶対無理であった。

でも、夏に一伸び、冬にさらに一伸びした。

最後まで諦めないことも勿論大事なのだが、それ以前の問題として、行動に移すか否かという問題がある。すなわち、正しい学習法を教わっても、実際行動に移せる学生は少数派なのである。大抵は言い訳をして、自分を正当化し、ごまかすものである。人が大人になるにつれ、行動も起こさないまま、夢を体(てい)よく諦める時のように。

 

そこで、このブログを読んでいる諸君にはぜひ確認してもらいたい。

 

現代文の学習では本文や設問を、ざっくり解説されて分かった気になってはいけない。

1、一文一文、一字一句にしっかり向き合って、文脈を精読する。その際、語彙力が重要となる。

2、そしてその理解を実際に、文章に起こしてみて、理解に欠落した部分がないかを確認する。

3、最後に、本文の読みを反復練習するによって文章を捉える思考スピードをどんどん上げていく。

以上。

 

 

 

 

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