吉嶺史晴のブログ

音楽教室の御案内、日々のことなど

愛の惑星

2017-05-15 | weblog
しばらく前に書いた文章が出て来ました。今日はこんな気分なのであります。

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「おい、太郎、知ってるか?地球はなあ、愛の惑星なんだとよ!」
「はあ?何じゃそりゃ!?」
「あのなあ、この地球というのはなあ、この広い宇宙のなかで世にも稀なる惑星なんだとよ。愛に満ち溢れた惑星なんだとよ!」
「はあ?そんなこと俺には関係ない。明日の仕事のことで忙しいんだ。明日は500人の小学生と一緒にリコーダー吹くんだからな!宇宙のことなんぞ知ったこっちゃない」
「あのなあ、俺も忙しいんだぞ!でも何となくお前にもなんか言いたくなってさ・・・・愛の惑星なんてさ・・・すごい良い言葉じゃんか・・・俺はこういう言葉の使い方好きだ!」
「はあ?愛の惑星がどうした!?愛の惑星だったらなあ、貧しい音楽家にもっと良い仕事がまわっても良いんじゃないのかよ!俺だってなあ、愛が欲しいよ!欲しいけどなあ・・・今はそれどころじゃないんだよ!明日までに牛乳の空き箱でなあ、マラカスを500個作らなきゃいけないんだからな・・・・地球がなあ、愛の惑星なんだか、恋の惑星なんだか知らんが、そんなによいもんだったらなあ、なんで俺がこんなことしなきゃいけないんだよ!!!???」
「太郎・・・怒るなよ・・・・なんかさあ・・・愛の惑星なんてさあ・・・・70年代の民放のテレビ番組の昼間のメロドラマみたいな言葉だよなあ・・・よくよく考えてみるとさ・・・・・」
「昼メロだと!!!???俺だって、一度くらい昼メロみたいないいことしてみたいけどなあ・・・もうおんぼろの体育館みたいなところでほこりまみれで子供とリコーダー吹いたりしてるのがもう仕事になっちまってるからな!!!愛の惑星かよ!!!???お前はそんなこと俺に言うためにわざわざ電話して来たのかよ!?俺は忙しいんだからな!もう切るぞ!」
「まあ、、待て!じゃあ愛の話はとりあえずやめた。次はベートーヴェンの話だ。太郎、お前、ベートーヴェン好きだよな?」
「ああ、好きだよ。好きっていうか、なんというか俺に兄貴みたいな感じがする。バッハとかバルトークはあまりにも出来が良すぎて俺にはもうなんだか関係ないくらい遠い感じがするんだけど、ベートーヴェンはな・・・なんか、俺の兄貴みたいな感じがする。一緒に天文館あたりで焼酎飲んでるところとか、なんとなく想像できそうな感じがする・・・・ドイツ語なんて、鹿児島弁にちょっと似てる感じもするもんな・・・なんとなく、その無骨な感じとか・・・・ごつごつした感じとか・・・」
「そうか・・・あのな・・・・太郎・・・・ベートーヴェンてさ・・・・・若い頃はなあ・・・」
「なんだよ?ベートーヴェンの若い頃がどうしたんだよ?」
「あのなあ・・・・」
「もったいぶるなよ!早く言え!」
「すごくモテたらしいぞ・・・・・」
「なんと!」
「あのなあ・・・・歳をとって耳が聴こえなくなる前はなあ・・・それこそウィーンの社交界の王子様みたいな感じだったらしいぞ・・・・」
「そうなのか!」
「そうだぞ!・・・・・だからな・・・・・お前の好きなベートーヴェンもそれなりに若い頃はウィーンの上流階級の娘たちと楽しくやってたらしいぞ・・・・・」
「あのなあ、次郎!お前、何が言いたいんだよ!結局!なんか、お前の話、聞いているとさ・・・俺・・なんかすごくバカみたいじゃんかよ!ひとりでさ、寒いのにさ、わびしいアパートでさ・・・・・女っけもなくてさ・・・・ひとりで牛乳パックでマラカスなんか作ってさ・・・・・なんか俺、もうこんな暮らしどうでもよくなって来たよ・・・・」
「太郎・・・・あのさあ・・・・俺は思うんだけどさ・・・・・いきなり愛の惑星とか、そんなこと言われてもさ・・・・なんかそういう言葉ってさ・・・・俺たちとはあまりにもかけ離れてるよな・・・・だってさ・・・・もう、何というか・・・目の前のことを片付けるだけでさ・・・それだけでさ・・・もう、もうそれだけでさ・・・俺たちの生活なんてさ・・・・」
「だから、何なんだよ!?ちくしょう!ベートーヴェンはそんなにいい思いをしてたのかよ!知らんかったよ!」
「いいじゃんか・・・・俺はそれも良いと思う・・・・誰が良い思いをしようが、しまいが・・・・・だってさ・・・・俺たちの仕事は何なんだよ・・・・・音楽を作ることだろ・・・・それが俺たちの仕事なんだよ・・・・いつも良い環境ばかりじゃないよな・・・・ほこりだらけの体育館だったり、そんな時もあるだろうと思うよ・・・・」
「俺なんか、それしかないよ・・・・もうここ1年半くらいまともなコンサートホールで演奏したことないよ・・・・だんだんリコーダー演奏の仕方忘れてしまいそうでこわいよ・・・・・」
「俺はそれで良いと思う」
「なんだと!俺がリコーダー吹けなくなっても良いのかよ!?」
「吹けなくなることはないだろうよ。だってお前はリコーダー奏者なんだろ?リコーダー奏者って何だよ?誰だよ?どういうやつのことをリコーダー奏者って言うんだよ?」
「・・・・次郎・・・あんまり難しいこと言わんでおいてくれよ・・・俺はお前みたいに頭が良いわけじゃないからさ・・・あんまり難しくて細かいこと言われてもわからないんだ・・・・」
「それもお前の良いところだと思う」
「なんか、褒められてるんだか、何だかわからなくなって来た」
「あのさ・・・多分・・・・俺が思うに・・・・」
「???」
「ものすごくレベルの高い奏者たちと共演してものすごくレベルの高い演奏すること・・・・・・田舎の小学校のほこりのつもったようながたがたのピアノ伴奏で何か吹きながら、子供たちと遊ぶことって・・・・もしかしたら同じなんじゃないかと思うんだよ」
「同じじゃない!全然、同じじゃないよ!だって、俺だってバロックの曲とか、吹いてみたいよ!でももう、バロック音楽なんか吹いたって、仕事にならないんだもん・・・」
「良いじゃんか・・・それで・・・・お前はお前の仕事をちゃんとこなしながら、生きてるんだもん・・・・それで良いじゃないか・・・・・・リコーダー奏者だからバロック音楽演奏しなきゃいけない法律なんてどこにもないぞ・・・・・」
「そうかな・・・・・・」
「あのさ・・・・・忙しいのに邪魔して悪かったな・・・・・でもなんか、お前に言いたかったんだよ・・・・」
「そうか・・・・」
「どうなんだよ・・・・真理ちゃんは・・・・お前の大事な真理ちゃんはどうしてるんだよ?」
「真理子か・・・元気だよ・・・・っていうか、元気にしてると思うけど・・・・・・・」
「太郎よ・・・・真理ちゃんを大事にしたほうが良いぞ」
「大事に?」
「ああ、そうだ。時々は一緒に美味しいもの食べに行ったりとかさ・・・・一緒に珈琲飲んだりとかさ・・・・映画見にいったりさ・・・・オンナはな、花をもらうとすごく嬉しいらしいぞ」
「花かよ!?」
「そうだ。花だ」
「花なんかもらって何が嬉しいのかなあ・・・・」
「俺たちにはよくわからんが、とにかくオンナは花をもらうとすごく良い気分がするらしい。何かの本に書いてあった」
「ふ~ん・・・そうか」
「そうだぞ。脳みその構造がオトコとオンナでは全然違うらしいぞ」
「全然違うのかよ!?」
「ああ、全然違うらしいぞ。まるで違う生き物くらいに違うらしいぞ」
「だからオンナの考えることはよくわからんのか」
「多分な・・・」
「ベートーヴェンも苦労したのかな・・・・・・」
「多分・・・・・・」
「なんかさあ・・・・たまにはこうして話すのも良いもんだな・・・・・」
「ああ・・・・長くなってしまったな・・・・・お前も元気でな」
「お前もな・・そうだ!お前の演奏を聴いて、生きてて良かったって言ってくれた娘はどうしたんだよ?」
「ああ・・・時々は会ったりしてるけど・・・・」
「そうか!春が近いかもな!」
「そんな、おおげさなもんじゃないけどな・・・・」
「なんか俺も元気が出て来た感じがする・・・・・マラカス作り終わったら、天文館に行こうかな・・・・」
「おお!行って来い!そう来なくちゃ!」
「そうか!よし!じゃあ行ってくるかな!」
「おお!頑張って来い!」
「ほんなら、ひと段落したら天文館に出撃するかな」
「そうだ!出撃して来い!」
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