吉嶺史晴のブログ

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木材というものは常に振動させていれば振動しやすい癖みたいなものがつくのではないか

2016-12-07 | weblog
木材というものは常に振動させていれば振動しやすい癖みたいなものがつくのではないかと思うのである。
「弾き込み」という言葉を使うことがあるけれども、これは楽器を振動させて楽器の響板や側板、裏板などが振動しやすい状態をなるべく定着させるという作業を指すのであろう。

いわゆる「名器」と呼ばれるものにはそれなりの弾き心地というものがあるはずなのだが、これは最初の作りの良さだけではなく、長年に渡り、楽器自体が振動して来た、その振動しやすさということも「弾き心地」と深い関係があるのではないかと思う。

弦楽器の「鳴り」というのはちょっとあまりにも奥の深い世界であまり簡単に書き記すのもはばかられるような何かがそこにあるのではないかと感じることがある。

ガンバの開放弦を弾きながら左手で楽器の渦巻きのほうに手をやると渦巻きそのものもかなり振動している状況を確認することが出来る。ガンバの場合は渦巻きにあたる場所に人の顔などが彫刻されている場合もあるが、一説によると彫刻されたものよりも渦巻きのほうが質量が小さいので楽器全体としては軽やかな「鳴り」を実現することが容易だとのこと。真偽のところはどうなのだろうか。

ヴァイオリンやチェロの世界では名器の秘密が長年にわたって取り沙汰されているようである。
中には「ニス」に秘密がある、というようは説もあるようだがこれについては今は否定的な意見のほうが多いようである。

もちろん材料の良し悪し、そして何よりも最初の設計、そして工作精度そのものが重要であることは疑いない。

少し前まで弦楽器の「弾き込み」、そのようなものにはほとんど興味がなかったのだが、最近とみに思うことがある。

科学的な根拠があるものかどうか定かではないけれども、弦楽器に使われている各種の部材、これらは「振動」というものに関して、振動すればするほど、振動しやすくなってゆくのではないだろうか。

自分自身がその楽器の鳴らし方に熟達するということももちろんあるはずだが、それだけではなく楽器自体の「鳴り」が変化するということを否定出来ない。

リコーダーのような場合だとそれはもう明らかである。
ぼそぼそした吹き方の奏者のリコーダーはやっぱりぼそぼそした感じの音色になってゆくし、朗々とした表現を得意とするリコーダー奏者の楽器はやっぱり朗々とした鳴り方になってゆく。
もちろん楽器が出来た時点で「鳴る」楽器であることは最低条件だけれども。

リコーダーの場合、最初の1ヶ月、長くても2ヶ月ほどでその楽器の「鳴り方」は決定されてしまうように思う。つまり新品のうちにどんな鳴らし方をするのか、ということによって、その楽器のおおかたの「鳴り」は決定されてしまうということである。

このようなことを考慮するならばリコーダーの場合には最初の1ヶ月、2ヶ月ほどは熟達した奏者が「吹き慣らし」をするのが望ましいということになるのだろうけれども、そのようなことをしていたらその楽器自体のコストがどんどん上がってしまい現実的には難しいかもしれないし、最初の慣らしがうまく行ったとしてもその次に下手な鳴らし方をしていればやっぱり楽器としては下手な鳴り方にしかならないだろう。

ガンバの場合はとにかく楽器自体が振動している絶対時間を増やすということが重要なのではないかと思う。とはいえ練習時間が無限大に与えられているわけでもなく1日は24時間と決まっているわけで、そのなかで日常の仕事をこなしてゆかなくてはならないので、必然的に使える時間は限られて来る。

何よりも、忘れてはいけないことはガンバのような楽器を弾くということは「音楽を作る」ということであって、「楽器の鳴り方」というようなものはそれに付随してくる事柄であるということである。

ただし、楽器の鳴り方それ自体が音楽的なインスピレーションに少なからず、いや実際にはかなり大きな影響があるのではないかと思うのである。

弾き心地の悪い楽器から受ける印象はそのものずばり「弾き心地の悪さ」である。

そして弾き心地がよく、しかも音色の良い楽器ようなそのような楽器を演奏する際には演奏者自身のエネルギーをより多く音楽的な事柄に振り分けられるのではないかと思うのである。

しかも、ここでとても面白い事柄があって、なんらかの原因によって一時的に「弾き心地」のそれほどよくない楽器であってもほんの少しの調整、そしてある程度の弾き込みによって驚くほど大きな変化を遂げることがあるということである。ただしこの場合にはその楽器そのものが最初から「鳴る」ような設計、工作精度を備えた状態で作られていることが条件。
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