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『世界史サミット 同時代を生きた偉人たちが国境越えて大激論!』浅野典夫

2012-03-27 | books

「世界史サミット 同時代を生きた偉人たちが国境越えて大激論!」浅野典夫 徳間書店2012年

昔高校の世界史をしていた知り合いに教えてもらった「世界史講義録」というサイトがすごく面白くて少しずつ読んでいる。そこの著者が本名で書いたのが本書。同じ時代を生きた歴史上の人物が集まって話をしたらこうなるというもちろん架空の話。

これは面白い。この人物とこの人物が同じ時代に生きていたのか、というのも面白いし、会話をさせるとまたさらに面白い。


第1回サミットは、216年で、ローマのカラカラ帝、曹操、諸葛亮、卑弥呼。議題は「市民権は必要か」

第2回は、618年厩戸王、隋の煬帝、東ローマ帝国ヘラクレイオス1世、ヴァルダナ朝ルシャ・ヴァルダナ 。「議題はイスラームの苦悩」

第3回は、1077年、ノルマンディー公ウィリアム、ローマ法王グレゴリウス7世、白河天皇、宋の王安石。「政治と宗教」

第4回1215年、イングランドのジョン王、高麗の高宗、源実朝、チンギス・ハーン。「モンゴルの脅威」

第5回1453年、オイラトのエセン・ハーン、オスマン帝国メフメト2世、足利義政、フランスシャルル7世。「百年戦争の終結」

第6回1600年、エリザベス1世、徳川家康、ムガル帝国アクバル帝、イタリアの学者代表ジョルダーノ・ブルーノ。「打倒!無敵艦隊」

第7回1689年、徳川綱吉、ピョートル1世、ルイ14世「絶対君主は是か非か」

第8回1793年、ジョージ・ワシントン大統領、マリー・アントワネット、エカチェリーナ2世、本居宣長、清の乾隆帝 。「啓蒙君主は国家を救うか」

第9回1865年、リンカン大統領、坂本龍馬、カール・マルクス 。「資本主義の矛盾」

第10回1900年、ハワイのリリウオカラニ元女王、フィリピンのエミリオ・アギナルド大統領、西太后 。「押し寄せる帝国主義」

紀元前特別対談B.C.205年 、ハンニバルと項羽 。「名将の条件」



どうだろう?集まった人の名前だけも読みたくなるけど、議題を見たらもう読みたくてたまらなくなってしまう。(わけないか?)

歴史上の人物が言ってはいないけど言いそうな言葉があちこちにあって、例えば第6回では、エリザベス1世がヘンリー8世が英国国教会を作った前後の事情を説明する。すると家康はなぜ離婚するのに誰かの許可がいるのだ?と尋ね、アクバルは、言う。

なぜ神と人の間にローマ教会が割り込んでくるのか。人は皆一人ひとりが直接神と向き合えばいいのだ。神の意志を解釈する仲介者などいらぬはず。(124頁より引用)


おお。確かに。カトリックでは神父がいてプロテスタントでは牧師。神父は神の代理人であって、牧師は違う。もし神がいるとして(それが人間の妄想の産物なら話は別だけど)、それを人間が代理できるという考えよりも、アクバルが言うように信仰なんて個人のものだからという考えの方が納得できる。ふむ。ワタシはカトリックよりプロテスタント寄りだったのか(いやそういう問題ではないのか?詳しくないのでてきとーなこと言ってはアカンか)などとどうでもいいことを思ったりするのも面白い。

30万部も売れたというウィリアム・マクニールの世界史や、網野善彦の「日本史を読みなおす」も悪くないけれど、そんな小難しい本が売れるならこんな本が売れてもいいんじゃないかなとも思う。

特に昔歴史を勉強したんだけどそれほど面白くなかったとか、すっかり忘れてしまったという人にオススメ。

では、また。



同時代を生きた偉人たちが国境越えて大激論!開催!世界史サミット 世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)
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6 コメント

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Unknown (midori)
2012-10-31 09:07:52
おはようございます。
今日は『世界史サミット』のこちらからコメントさせて頂だいてます。物凄く面白そうなので、もう一冊こちらもとっても気になる『刑務所図書館の人びと』と一緒に注文しました。また素敵な積ん読本が増えます。えぇっと‥ヘリウム‥私はやってみた事はないのですが、もしかして吸うと声が変わるアレですか?太陽のエネルギーの源泉が水素とか全然知らなくて‥もう何だか色々と私恥ずかしいです‥。ふるさん、何でも知ってるのですね。凄いです。テレビでたまに放送している巨大隕石がぶつかるッ‥なんていうような事がない限り、400年後も地球はちゃんと存在してて、歴史小説は未来の作家さんによって書かれるのですね。良かった。ふるさん、ブログの内容に関係ない事なのにすみませんでした‥ありがとうございます。



こんにちは (ふる)
2012-11-01 14:04:38
★midoriさん、

同一著者による「ものがたり宗教史」もおススメです。
私が何でも知っているわけでは勿論なく、どこかに書いてあったことの受け売りです。
Unknown (midori)
2012-11-02 06:23:14
おはようございます。本を読むという事はそれだけ知識も増えていくという事なのですよね。私の唯一の趣味と物欲は、せっかく読書と本を買う事なので、これからもふるさんのお薦め本、どんどん読ませて頂きたいと思います。
この世にたくさんある宗教の違いとても興味深いので『ものがたり宗教史』是非読んでみたいです。そう言えば、『聖書男(バイブルマン)現代NYで聖書の教えを忠実に守ってみた1年間日記』という爆笑体験日記本が凄く面白そうなので前から気になっていたのですが‥ふるさんはもう読まれましたか?

こんにちは (ふる)
2012-11-03 06:27:54
★midoriさん、

本が売れない時代ですから、本を買うのが唯一の物欲という人は、国家で保存しないといけない希少な方ではないでしょうか。
そのタイトルは初めて目にしました。
面白そうですね。
Unknown (midori)
2012-11-03 13:36:17
こんにちは。
ふるさんも小さな頃から本が大好きな男の子だったんだろうな‥とすみません、勝手に想像してます。私は子供の頃から本や漫画を読む事が一番の娯楽で図書室や本の匂いが大好きでした。大人になって自分で本を買う事が出来るようになり、手元にずっと置いておける事が嬉しいです。ふるさん、紙で作られた本いいですね‥。
『聖書男』面白そうなので『ものがたり宗教史』と一緒にまた購入したいと思います。読むの遅いくせに読みたい読みたいでどんどん増えて‥これはきっともうお正月休みの為に準備しているのだろうと思えてきました‥。
それではふるさん失礼します。
こんにちは (ふる)
2012-11-05 13:11:47
★midoriさん、

私は小さな頃に本が大好きだったという記憶は特にありません。
昨今、本は早く買わないと絶版になり、手に入れられなくなるスピードが速くなっているようですから、財力が許す限りどんどん買った方がよいものなのかも知れません。

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