頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『ピルグリム1・2・3』テリー・ヘイズ

2014-12-02 | books
サウジアラビア、王室に否定的な発言をして処刑された父親。息子はテロリストになるために、国を出て医者の資格を取る。目指すはバイオテロ。アメリカの諜報組織から引退した男がテロを阻止するために呼び出された。テロへと着々と進む男と、追いかける男。地球規模のマンハントがはじまった……

3巻もあるのでどうしようかと思ったのだけれど、まず第1巻だけ買ってみた。少し読んでみただけで面白いと分かったので、1巻を読み終わる前に2巻、3巻と買った。買っておいてよかった。すぐに読み終わったし、買ってなければ夜中に禁断症状を起こしそうだった。

現代のハイテクスリラーのようなものだと思っていたけれど、どちらかというとハードボイルドに近い。目的のためにまっすぐ進む男たちの闘い。どっちにも頑張ってほしい。どっちも頑張って。飛雄馬と花形に挟まれた明子のような気分。

マンハントと言えば、フレデリック・フォーサイスの「ジャッカルの日」を思い出す。ド・ゴール暗殺を依頼された伝説の殺し屋ジャッカルと追いかける警察。原作も映画もどちらも良かった。高校生の頃に読んだかと思う。その後、外交や国際関係論、軍縮などに興味を持つようになった。そんな影響を与えてくれた。

本作も負けないぐらい良くできている。しかし「ジャッカル」のときほどは自分に影響を与えるわけではなく、それは単に自分の感性が老化しているからだろうと思う。

エドマンド・バークによると、戦争にまつわる問題は、たいがいの場合、守るべき美徳を消してしまうことだ。正義や、品位や、人間性を守るために始めたはずの戦争が、それらを踏みにじってしまう。

トルストイが生きていたら、薬物依存者はみな似通っているが、アルコール依存者はそれぞれちがっている、とでも言ったかも知れない。

”アラビアのロレンス”として知られるトマス・エドワード・ロレンスは、この世界について何事か知っており、この土地の人間の性質も熟知していた。彼は、白昼夢を見る人々は危険だと言っている。彼らは夢に生きようとし、夢を現実にしようとするからだ、と。

そういえば、誰かがこう言っていた。戦争で最初に犠牲になるのは真実だ。


ピルグリム〔1〕 名前のない男たち (ハヤカワ文庫 NV ヘ)ピルグリム〔2〕ダーク・ウィンター (ハヤカワ文庫NV)ピルグリム〔3〕 遠くの敵 (ハヤカワ文庫NV)

今日の一曲

Eric ClaptonでPilgrim



では、また。
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2 コメント

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おすすめありがとうございました (パール)
2015-01-19 15:35:57
3巻もあったので、どうしようか迷いましたが、ふるさんのおススメならば、間違いはないと思い、1冊購入。
読み始めてすぐに、残り2冊購入しました。
面白かったし、どんどん読めました。

>飛雄馬と花形に挟まれた明子
の気持ちも堪能しました。

だけど、もっと何かがほしい・・・

以前読んだ本はもっと面白かったような気もするのですが、いくつかパラパラめくってみると、思い出ほどには記憶ほどには面白くなかったりします。
今までに読んだ中で、いっちば~んのミステリーは何だろうって本棚を探してみても、見つからないのはなぜ?
こんにちは (ふる)
2015-01-21 00:01:31
>パールさん、

>だけど、もっと何かがほしい・・・

何かが「ピルグリム」には足らなかったという意味ですね?
だとすれば昔読んだミステリーにはこの足りなかった何かがあるはず・・・
だけど何だったか今となっては分からない。
こんなお話でしょうか?

「ピルグリム」に何が足りなかったのかは分かりませんが、
昔読んで堪能した本(特にミステリー)を再読してみたら昔感じた興奮を感じなくなったということは確かにございます。
自分が変わったということが大きいのかも知れませんし、その前後で読んだ本や観た映画の影響もあるかも知れません。年齢の影響もあるでしょう。
私だけかも知れませんが、特にミステリーやノンフィクションの本だと、再読したときにそういうことが起こりやすいように思います。純文学やSF、歴史ものではあまり起こらないような。

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