福笑い(演劇サークル)

コンセプトは『ココニキテ楽シカッタ』。
そんな活動を目指してまっす。

作家先生の苦悩

2017-09-18 19:47:42 | コントネタ
コント『作家先生の苦悩』  2013年7月上演

 クラシックが流れる書斎。
 作家先生がわめきながら頭をわさわさしつつ室内をウロウロしている。
 締め切り間近の原稿が書けなくて困っているのである。

先生  あ~~、もうこんなんじゃダメだ!!何か、アイディアをくれ!アイディアを!!

 ノックの音。お手伝いのおばあさんがコーヒーを持って入ってくる。

いちえ 失礼致します。
先生  (いちえを見て)あなた、どなたですか?
いちえ あ~、ビックリさせちゃってゴメンなさいねぇ。わたしね、家政婦協会からピンチヒッターで
    やって参りました『いちごいちえ』と申します。ストロベリーって呼んでね♪
先生  はぁ・・・。いつもの家政婦さん、具合でも悪いんですか?
いちえ そうそう、急に体調崩しちゃって。それで、あたしがお手伝いしに来たってわけ!
先生  あのう。失礼ですが、随分お年を召しているような・・・・。
いちえ あら、やだ。女性に歳を聞くなんてルール違反だぞ!
先生  それは失礼致しました。いえ、こんな労働を強いるようなことをして大丈夫なのかと
    心配になりまして。
いちえ それは大丈夫大丈夫。あたしは家政婦のベテランですよ~。痒いトコまで手が届く!
    で有名な『いちごいちえ』でございます。
先生  じゃぁ、いちえさん。今日は一日お願いしますね。
    あ、コーヒーそこに置いてってくれればいいですから。(と、なにか作業を始める感じ)
いちえ はいはい、わかりましたよ。
    (ゆっくりコーヒーを置いて出て行こうとする。が、ドアのところで立ち止まり先生を見ている)

 先生はまた室内をウロウロし始め、いちえが見ていることに気付く。

先生  あ、何かあったらお呼びしますから。
いちえ 先生、何かお困りなんじゃないですか?
先生  え?いや。そんなことありませんよ。
いちえ さっきから、ウロウロウロウロしちゃって、頭なんかボサボサだし。
先生  これは・・・。
いちえ あたしがお手伝いしましょうか?
先生  何をですか!?
いちえ だって、小説、書けないんでしょ?アイディアに困ってるんでしょ?
先生  なぜそれを・・・。
いちえ 見ればわかりますよ。だってあたしは痒いところに手が届く、ベテラン家政婦なんですから!
先生  そうは言ってもねぇ、小説のアイディアなんて、そうそうありませんよ。
いちえ あたしのこと書いてもいいですよ。
先生  どんな風に?
いちえ 16歳年下の男性から求婚されるとか。
先生  そんな「おばあちゃんとおじさん」のコイバナなんて誰も読みたくないですよ!
いちえ ちょっとあんた、あたしを何歳だと思ってんの!
先生  わかりませんよ!
いちえ あたしは83!見えねべぇ~。
先生  見えますよ!充分見えますよ!16歳年下だとしても、67歳ですよ!
    どう考えてもフレッシュさに欠けるでしょ、その2人が主人公じゃ!
いちえ じゃぁ、こういうのはどう?地方のご当地アイドルを目指すあたし。
    そして、いよいよ東京進出という展開!!
先生  それって連続テレビ小説のパクリじゃないですか!
    だいたい、あなた既にアイドル目指すって歳じゃないでしょ。
いちえ アイドル目指すのに年齢なんて関係ない!
先生  あるでしょ。
いちえ じゃぁ、83歳にして海女(あま)に挑戦!
先生  危険!!危険過ぎますって!!始めるならもっと早くから始めましょうよ。
いちえ だったら「83歳の高校生」は?
先生  お前は米倉涼子かっ!あなた、今さら制服着れますか!?
いちえ 制服着れますよ。あたしはセーラー服よりもブレザーが好きです。
先生  聞・い・て・ま・せ・ん!!!
いちえ じゃぁ、これなら文句ないでしょ。
先生  次は何なんですか!!(やけっぱち)
いちえ 実は凄腕のスーパードクター『外科医:いちごいちえ』
    「いちえに掛かれば絶対不可能と言われたオペもお茶の子さいさい。」
先生  あり得ん・・・・。100歩譲ってドクターならまだしも、凄腕外科医の
    スーパードクターなんて設定、絶対あり得ん!!しかも、今どき「お茶の子さいさい」
    なんて使う人いるんですか!もうやめてください。全部テレビのパクリじゃないですか!
いちえ 違うわよ~、だいたい歳が全然違うじゃない。
先生  もういいです。出てってください。原稿は自分でなんとかしますから。
    頼むから放っといてくれ!!
いちえ あらそう。残念ねぇ。あ、じゃあ気分転換に空気の入れ替えでもしますかね。
    (と、客席に向かって窓を開ける仕草)きっと、深呼吸してきれいな空気を吸ったら、
    いいアイディアが浮かびますよ。
先生  ・・・・。
いちえ ほら、先生。こっち来てみなさいよ。たまには年寄りの言う事を聞くのも大事なことなのよ。

  先生、いちえの隣に移動し、窓の前に来る。

いちえ さぁ、深呼吸深呼吸。はい、大きく吸って~。

  先生が大きく手を広げて深呼吸。その瞬間、静かな銃声。先生が何者かに撃たれたのである。
  先生はその場に倒れこむ。

いちえ 『事実は小説よりも奇なり』なんてね。ミステリアスでしょう?

  いちえ、ストップモーション (照明スポットライトのみにする)

ナレーション「狙った獲物は逃さない。コードナンバー『0835』コードネーム『オバーサンゴー』
       本日のミッションは、作家『井上俊太郎』の射殺援護だった。」

いちえ さて、今日も忙しい1日になりそうだわ。あ~忙しい忙しい。

   再びクラシックが流れる。いちえ、おもむろに部屋から出ていく。

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