【会員制】秘密倶楽部「オーヴ」

ここは東京のとある街。
ネオン街からは少し外れたところに「オーヴ」の扉は設けてある。
特に看板は出していない。
重厚な扉だけが、この店の目印。

一見さんはお断り。そして地位も名誉もある人間だけがこの扉を開けることができる。
政財界のトップが、夜な夜な訪れるちょっと不思議な空間だ。
ここの店の主人はフジコ。
いつも店に出ているワケではない。
たまに店に出ていると思えば、ＶＩＰ客といつのまにやら奥の部屋に籠もっている。
妖しい雰囲気を醸し出しながら、奥の部屋へと・・・。

今日、その空間に初めて入る娘が居た。

先輩にこのバイト紹介されたときは、ちょっと驚いたよ。
だって、「顔出さないでいいから」って、こんな格好させられるんだもの。
　しかも、
「基本的に、どこを触られても文句を言わないこと。」
だもんね。
　嫌だなっ、って思ったけど、時給が凄かったのと、ダメならやめていいって言われたから、やってみたんだ。

　でもね、やってみて解ったのは、本当にひどいことする人はたまにしかいなくて、ホトンドは手をずっと握っていたり、腿をスリスリしている程度なんだよね。
　それでさ、ここって「完全会員制」でさ、結構凄い人しか来ないみたいなんだ。
　だから、酷い人は少ないのかもね。
　あまり、酷いと、ちょっと厳ついお兄さんが助けてくれるしね。（笑い

　変わった人？
　いるいる。
　ずーっとあたしの話を聞いているだけの人。
　こんな格好だから、声がくぐもっちゃうでしょ？
　でも、それが良いんだって。

　逆にさ、「絶対、しゃべるな。」って言う人。
　あたしを本当の猫みたいに抱き寄せてさ、ずーっとよしよししてくれているの。
　たまにね、変なとこに手の先が当たって、
「あ」
とか声出すと、怒って帰っちゃうんだよね。
　変でしょ？

　飲み物は飲めるんだよ。
　ちょっと細めのストローを、この細い「口」の隙間から差し込んで飲むの。
　ここ、料理もいいから、食べれないのはつまんないけど、夜でしょ？
　いいんだ、食べると太るから。（笑い

　うん、もう少し、続けるつもり。
　先輩もまだ続けているよ。
　あ、あそこの角の席の凄く長い髪の真っ白な猫。
　先輩、素顔も綺麗だけど、あのお面と、真っ白なベルベットのようなゼンシンタイツが、似合っているんだよねぇ。

　あ、ごめん。
　指名だから。
　ん。じゃ。またね。