奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その131)

2017-01-02 09:48:01 | 奈良・不比等
アベノミクスで期待している「トリクルダウン(trickle-down)」とはレーガノミクス(米国レーガン大統領の経済政策)で成功したものと考えられており、中国では先富論(鄧小平の経済政策)と云われ改革開放政策の重要な考え方となっている。要は、お金を稼ぐ富裕層が儲(もう)けたお金を消費すれば経済的弱者に滴(したた)り落ちるように経済的恩恵が与えられると考える理論である。------
ここでトリクルダウンについて観光振興策の面で考えてみる。昨今、地方公共団体が観光客誘致のためのイベント(特に伝統行事を開催することが民間ベースでは難しい場合)に税金を使って行う例が多いようだ。歴史的には伝統行事例えば有名な祭礼であったりしても、その多くが富裕層の寄付により運営されてきたものである。織田作之助の小説「わが町」には主人公の佐渡島他吉が生玉神社の夏祭りで行列の奴をすれば日当が貰えるので喜んでいる場面がある。祭りは金持ちが庶民に振る舞い、庶民はその特別収入を毎年当てにしていた訳である。勿論、祭りの縁日で出店が並ぶのも露店商人にとっては有難いことであった。あらゆる伝統文化行事がお金を持てる者から持たない者への循環システムとして機能してきた。それを実行するのに寄付が集まらなくなって久しい。地元のお金持ちが稼いだお金を散財する責任を忘れてしまったとも云えるのではなかろうか。古き良き伝統はそうした施しで成立してきた面も大きい。それを、税金で開催せねばならないとは、残念な限りである。アベノミクスの観光振興面を具体例で考えても分かる。例えば世界遺産・古都奈良の冬の風物詩である「若草山焼き」も寄付が集まらずバブル崩壊後は奈良市の税金で開催されている。とてもアベノミクスの期待するようなトリクルダウンするお金持ちの行動は実行に移されていない。お金持ちがお金を使いたくなる仕掛けを工夫せねばならないのか、其れとも税金を累進で徴収して、伝統行事であれば税金で伝統文化を継承する必要があるのだろうか。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする