Entrance for Studies in Finance

PP to branded entertainment

Hiroshi Fukumitsu

ちょっと雑談もしようか。
 Deep Impact(1998)の2年前のIndependence Day(1996)で主人公で地球防衛軍のパイロット役をしたWill Smith(1968-)は今、最も人気がある黒人俳優のようにみえる。Will SmithはMen in Blackのシリーズ(1997)(2002製作コロンビア配給ソニーP)の様な喜劇映画への出演も多いが、そのシリアスな演技力はAli(2001配給日本ヘラルド)で示されたように本物だ。Smithはthe pursuit of happyness(2006)では、1980年代のアメリカ、サンフランシコを舞台にドン底から這い上がる黒人父子の姿を見せてくれた。這い上がりのステップになるのが証券会社の営業セールスへの登用である。6ケ月の見習い(研修)期間がタダ働きで20人から1人絞るというのだが、ありそうな話ではあった。そのWill SmithとMen in Blackで主役で共演していたのがTommy Lee Jones(1946-)。JonesはVolcano(1997)にも主役で出ていた。 この人が2006年4月からサントリーコーヒー「ボス」のCMで宇宙人Jones役で日本のTVに出て、ハリウッド大物俳優の日本tvcmへの活用として話題を呼んだ。しかしよく考えると2005年4月から大塚製薬が「カロリーメイト」の宣伝に「24」(2001配給フォックス)の主演俳優Kiefer Sutherland(Jack Bauer)を起用しているといった例もある(season 7 of 24 will begin from Jan. 2009)。
 2005年4月にはペヨンジュンをロッテがアーモンドチョコレートの宣伝に起用することも生じた。なお小倉優子とペヨンジュンの組み合わせは2006年5月である。
このような大物俳優の起用は2006年秋からソフトバンクが携帯電話の宣伝にCameron Diaz(1972-)とTom Cruise(1962-)を起用したことで、早くもどのような大物も可能だという雰囲気になっている。とくにCameronのCMはソフトバンクのロゴを出さず、電話をかける楽しさを伝えている点でも好感度の高い作品となっている。
 このように大物外人俳優を連作CMで使うのは新しい傾向のように思える。俳優ではないがDavid & Victoria BeckhamをエステのTBCがCMに初めて起用したのは2002年11月だった。このあたりが大物外人起用の起点かもしれない。そして俳優を起用したという点ではSutherlandやJones起用が起点だろう。これは単に大物起用だけなのか。またこれは何を意味しているのだろうか。
 もうひとつこれらのCMで共通するのは、CMの筋書きが次第に進行するというコンセプトである。このようにお話が次第に進行するCMも最近の傾向である。それがネットでは過去の作品まで楽しめることも多い。つまりCMそのものが娯楽の対象になることであり、それが大物俳優の起用、筋書きの展開、多額の予算を使った映像化につながっている。
 たとえばサントリーが宮沢りえ(1973-)と本木雅弘(1965-)を使って流している「京都福寿園伊右衛門」のCM。これは2004年からでバックに流れる音楽は久石譲のOriental Windである。久石譲(1950-)は「風の谷のナウシカ」(1984)「トナリのトトロ」(1988)を始め宮崎駿監督作品のほとんどの音楽を担当していることで知名度が高い。
 また関東地区限定で流れているのは東京電力のエコキュートのCM.鈴木京香、それに当初は佐藤和也少年の組み合わせだった。神谷佳成監督。こちらも奇しくも2004年から始まっている。東京電力は節電のCMを延々と流して辟易したものだが、鈴木京香のCMはほのぼのとした雰囲気があってよい。(なお対抗するかのように東京ガスが妻夫木聡1980-を使って歴史上の有名人が、妻夫木の部屋に出現するCMを流している。こちらは同じコンセプトによるシリーズ物といえる)。
 なおエコキュートCMの近作の水車編で現れるカッパがアンガールズの山根(相方が田中)ではないかとネット上で話題になった(2007/7)。一瞬なのでこれを発見した人はなかなか偉いがその後、山根はTOKIOの長瀬智也と出演したロッテのトッポのCM「鶴の恩返し」編でやる気のない鶴を演じた。こうなると制作側の遊び心がみえてくる。次は山根をどのCMで何に変身させるかという具合に。山根だけがCMを渡り歩くわけでこれは新しいかもしれない。
Warriors of Heaven and Earth(2003)という中国映画で8世紀の中国で皇帝の命で西域にあって剣をふるう遣唐使役で主演した中井貴一(1961-)。その中井は、DCカードのCMイメージが強すぎる。それも道理でカッパとタヌキのCMが最初に放送されたのは1990年との指摘もある。つまり長寿CMそのものは昔からある。最近の特徴は筋が展開してゆくところだ。なお中井は俳優佐田啓二(1926-1964)の子息、成蹊学園出身の数少ない実力派俳優としても知られる。
 ちなみに三井住友カードの宣伝に立ち続けているのは中山エミリ。彼女はしばしば辺見エミリと混同される。辺見エミリは辺見マリ・西郷輝彦夫婦の子供で別人である。金融CMでは、清水章吾とチワワが登場する消費者金融のアイフルのCMも長く親しまれたが、アイフルが起こした強引な取立て問題のため2006年春で放映自粛になった。消費者金融が画面から消えたため結果としてクレジットカードのCMが目立つ結果になっている。
 阿部寛と小倉久寛の掛け合いが楽しいのはVISAカードのCM(阿部はサッポロビールのドラフトワンビールの宣伝でもやたらと目立っている)。{阿部が広末涼子と主演した「バブルへGO!!」(馬場康生監督2006)は痛快だった。阿部を最近見たのは「Hero」(2007)。これは2001年のテレビドラマの続編だが豪華俳優陣を眺めているだけで楽しい映画。木村拓哉(久利生)、松たか子(雨宮)の主演で阿部は木村の上司検事役(芝山)。阿部の長身が目立っていた。}
 そして「ゆれる」(2006)西川美和(1974-)の原案・脚本・監督で主演したオダギリジョー(1976-)を使い2004年4月からライフカードが人生のカードの切り方という連続CMを流している。映画ではオダギリジョー(1976-)が演じる主人公の気持ちはつねに揺れる。帰郷した故郷で出会った昔付き合った女の子。その子に恋ごころのある気弱な兄貴(香川照之)。伊武雅刀(1949-)が父役だ。そうした関係の中で女の子が事故死する。いや殺人なのか。そこが問題になる。練り上げられた脚本と俳優陣の熱演は見ていて心地よかったがライフカードCMの軽妙な印象とこの映画のオダギリは別人だ。
 そして今(2007年9月)最もホットなのはソフトバンクのホワイト家(白戸家)をめぐるお話だろう。娘が上戸彩(1985-)、お母さんが樋口可南子(1958-)、お兄ちゃんは黒人(米国人)、お父さんは白犬(声は北大路欣也1943-)。ソフトバンクのホワイトプランをめぐってお話は展開。でともあれこのCMは大人気なのだ(なお個人的にはテレビ東京で2007年2月に放映された李香蘭での上戸彩の体当たりの演技には感心してしまっているのだが)。
 いずれにせよ、以上の事例から同じ俳優を使いストーリーが展開するCMが新しい動向であることが確認できよう。
 またネットと地上波TV、映画の連動はメディアミックス効果(多様なメディアを活用して注目度を上げること)の一例といえる。また商品やサービスの宣伝そのものが娯楽として消費されるのは、もともと映画の中でのproduct placement(pp)つまり映画の中になにげなく、しかしはっきりとロゴが見える形で商品が置かれたり、会話の中に商品名が登場したりする手法の進化形といえる。テレビの世界では、product placementから進んで、番組(entertainment)全体が広告宣伝となるケースが見られるようになっている。背景には30秒のスポット広告を視聴者は見なくなっているとか、あるいはテレビよりはネットを見るようになったという問題がある。別の言い方をすると見る映像を視聴者が選択するようになった。また選択できるようになった。そこで番組全体を広告宣伝の媒体にするということが広がっているのではないか。すでに議論したように広告の娯楽性を高めて、その結果、広告が選択視聴されるというのも同じ問題。こうした現象をbranded entertainmentと呼んでいる。
 なお言うまでもないがストーリー展開が長期にわたる商品は、対象商品も長寿である。カロリーメイトは大塚薬品により1983年に発売され現在では定番商品。またロッテのアーモンドチョコレートも1969年に発売されたという長寿商品。もっともアーモンドチョコレートとしては明治製菓が1962年に発売開始したものの方が古い。なおCMを別にして単に長寿商品を探せばもっと古いものもある。たとえば養命酒は1602年に製造開始。現在の瓶入りも1929年以来のもの。あるいは金鳥の蚊取り線香。これは1890年に大日本除虫菊という会社が製造開始したもので、あの渦巻き型は1902年以来の代物である。

参照
Music and Cinemas
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