Entrance for Studies in Finance

現代自動車の苦境:転換点に立つ韓国経済

韓国はFTA戦略で日本より先行。EUとは2011年 米国とも2012年3月に協定を発効させている。中国ともFTA協定で交渉中(2004年に中国が最大の貿易相手国に)。2013年11月にはTPP交渉への参加に向けた協議入りを表明。

その結果、現代自動車は国内で輸入車の販売が増加する矛盾に直面している。環境性能では輸入車が有利。現代自動車(サムソン電子に次ぎ時価総額2位 乗用車世界販売で5位)の韓国でのシェア(傘下の期亜と合わせて)が2013年に7割(販売高全体の16%だが利益率高く 研究開発 販売促進費用支えていた・・・日本のビール業界と似ている)を切ったとのこと。
現代自は2010年に自前の現代製鉄を稼働させた。現代製鉄による現代Gの内製化は国内唯一の高炉メーカー、ポスコに打撃を与えた。結果としてポスコはエネルギーなど非製鉄事業に活路を求めるようになった。

現代自動車は、FTAによる関税引き下げが輸入車の国内シェア浸食を招いている問題で脅かされているほか、一時収まっていたウオン高が2013年夏以降再発したことでも苦しんでいる(2014年に入って1ドル1100ウオンを一貫して下回っているがこれは6年ぶりのウオン高=リーマンショック以前の水準とされる 2014年6月には一時1015ウオンまでウオン高が進んだ)。リーマン危機のあと、ウオン安を武器に拡大した韓国企業の国際競争力をウオン高は低下させた。ウオン高は現代自動車のほかサムソン電子をも減速。造船(現代重工業 サムソン重工業)や鉄鋼(ポスコ)の輸出競争力にも影響している。

品質問題による企業イメージ低下。米国では2012年11月発覚の燃費誇張問題での企業イメージ悪化(EPAによる平均3%の性能水増し指摘 背景には米国基準をギリギリ達成した絶対的な性能問題)。→2013年12月 原告と和解。最大3億9500万ドルを米国の消費者などに支払うことに。

さらには労使リスク、ストによる減産=販売機会ロスも知られる。2013年春に続き2013年年8-9月(毎年の恒例行事 2012年にも同様 国際展開を制約 そのたびに賃上げ) 韓国工場でスト発生した。結果として商品不足で販売機会ロスとなった。他方、米国工場はフル稼働(4割ほどを韓国から輸出する構造)→韓国でのストが販売機会ロスに直結 年間で13万台の機会損失が生じた。
背景には労組が強力で、13年9月の妥協では賃上げに加えて国内生産台数の現状なみ維持も約束(設備投資も人員配置も労組の同意必要 自動化投資や機動的な生産体制変更もしにくい)
2012年の平均賃金9400万ウオン855万円 車1台作るのに30.5時間 中国なら18.8時間 米国15.4時間 生産性低い 賃金高い 国際展開しにくい(投資協定により新型車を韓国で優先的に生産→高コスト)

以上の結果 現代の先進国での販売が減少した。これが一時的な減少なのかが注目されている。
ウオン高がダイレクトに影響する背景として、自動車の国内生産比率が高めであることもよく指摘される。
2013年の発売で好調なのは中國ブラジルなどの新興国市場のみ 先進国(米国欧州韓国)で落ち込む

なお中國では新工場建設(重慶)でVW GMを追撃する体制整える方針(中國では現地生産体制で成功
日中関係冷却も追い風)。なお同様に3位を争うのが日産。VW GM 日産とも生産能力拡充を急いでおり
中國をめぐって各社は熾烈な争いを続けている。

2014年3月 新型車投入で再起図る 新型ソナタ(現代の戦略車)発売開始2014年3月

韓国は先進国と新興国の立場を使い分けてきたとされるが、現代の先進国での販売不振はその戦略の限界を示すものかもしれない。
1996年にOECDに加盟。2012年6月 一人当たり国民所得2万ドル超(など先進国の側面)。人口5000万超。
ところが金融面では新興国にとどまる。通貨ウオンの交換制限 オフショア通貨市場や時間取引がない。
多国間貿易交渉でも発展途上国を自称している。 

→韓国では失業給付が手厚くないことが低失業率につながっているとされる。
離職前平均賃金の50%
上限日額4万ウオン
最長240日
自己都合離職者には原則支払われない。
企業別に賃金交渉。交渉力の強い一部企業の労働者賃金は上がるが、広がらない。退職者が起業することもある。
(労組が強い大企業を中心に賃金体系が日本以上に年功序列型となっている 3倍程度 日本は2倍程度 初任給と年数が長い従業員との差)

加えてこれまで政策的に抑えてきた電気料金の引き上げの方針も決まった(2013年11月)

一部の企業は海外展開に活路を見つけ始めている(化粧品のアモーレパシフィック LG生活健康。テレビ通販のCJオーショピング GSホームショッピング 検索サイトのネイバー)

なおウオン高となる前のウオン安(リーマンショックにより2008年9月から急落。2008年11月下旬には一時1500ウオン台のウオン安に転落した(急激な円高を防ぐためもあり日本は韓国を通貨交換の資金枠を増やして支援した)。これは1997年のIMF危機の再来(IMF管理下に入る 98年の経済成長率はマイナス5.7%)を思わせた。その後次第にウオン高(1200未満)に戻す。しかしウオン高(1100未満)が進むとウオン安(1100超)に戻す動きが続いた。
こうした相場の動きを介入の結果とみるかは微妙。ウオン安が韓国に有利ともいえない面がある。比較的大規模な対外債務(4割が短期債務で逃げ足が速い)がありウオン安は大規模な海外マネー流出の一因になる。またインフレ率が相対的に高く、輸入原材料の多いポスコ、電力会社などには不利で通貨安は物価高につながる面もあり、ウオン安は輸出企業にも有利でも一般国民の不満拡大につながる。
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