炉端での話題

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エントロピーとは (14) -再考察-

2017-04-18 18:42:43 | Weblog
しばらくの間、エントロピーについての話題を中断していた。その間、暇を見て熟考をかさねており、さらに数々のエントロピーの書物にも接していた。その結果として熱力学におけるエントロピーの概念は捨て去り、その代わりにエネルギの視点に置き換えることが良い、との結論に達している。
あるいは独りよがりとの非難を受けるかもしれないが、ここで私見を述べよう。クラジュウスがエントロピーなる概念を提唱した理由を山本義隆氏による素晴らしい著書の「熱学思想の歴史的展開」を辿りながら、独断的となっている理由を明らかににしたい。

クラジュウスは1854年にエントロピーSとして
S=Q/T
を提唱した。ここにQはエネルギ量であり、Tは絶対温度、すなわち温度の単位表示をKで表すケルビン(0°Kに対応する通常の摂氏温度表示は-273.16°C )である。クラジュウスは、同一のエネルギ量に対して温度が異なると物理的な仕事を行うことも異なるということを示したかったのである。
いまある温度をTとし、これより高い温度をTとする。
エントロピーは、それぞれ
=Q/T
=Q/T
である。この式の意味は、異なった温度についても同じエネルギ量を持つためには温度が低い方が大きくなければならないと考えればよい。
クラジュウスの思想の原典であり、この思想を基にして、後の偉大な科学者も共鳴している。まったく別の見方をすればエントロピーは温度の容量とみなすこともできる。格式の高い理科年表にはエントロピーの単位は熱容量と定義している。
>T 
であるから
<S
となる。つまり、同じエネルギ量に対して温度が低い方がエントロピーの値が大きい。

エントロピーの概念はさしおくとして、高い温度から低い温度になることでエネルギが消費されて物理的な仕事をすると考えよう。その場合、温度の差があっても同じ量の仕事は同じエネルギ量の消費であって温度差には関係がない、とすべきである。
クラジュウスのエントロピー原典思想に反する。しかしながら、化学者からは環境温度により化学的な反応速度は変化する、と指摘されよう。また生物学者からは、動植物も適正な環境温度でなければ育成しないし、動物は動作もできない、と言われるであろう。
熱の温度によるエネルギ量の効果に差が存在することは認めておくことにする。ただし、この差をエントロピーで扱うことは避けたい。
ここで物理学での仕事とは、質量のある物体に力を加えて、ある距離を動かすことをいう。力を加えても物体が動かない場合は物理的な意味での仕事をしたことにはならない。熱を加えても液体とか固体は相転移(相転移とは、例えば液体から気体に変化することなどをいう)がない範囲では、気体の膨張とか収縮に比べると変形が少ない。したがって熱による仕事はほとんどの場合、気体が行う。

ここで物理的な仕事をエントロピーの変化量によるとすれば
->T
となる仕事に対して
->S
となる。
<S
であることから、物理的な仕事をするとエントロピーは増大することになる。クラジュウスは、宇宙に生じるすべての事象について、エントロピーは増大する、と高言している。本質的な疑問は、エネルギ量は減少しているにもかかわらず、エネルギ量の消費はないものとして、エントロピーの増大にすり替えているのはナゼかということにある。
地上で行われるエネルギを消費するすべての仕事は熱に変換され、その熱は宇宙に放散される。エントロピーの定義によれば、エネルギ量を一定として、逆の関係にあるから、宇宙温度として知られている3°K(-270°C)への熱エネルギの放散はエントロピーの増大となる。
絶対温度の0°Kにとなるにしたがって、エントロピーは巨大な値になる。もしも0°Kが実在すれば、エントロピーの値は無限大となることを意味しており、いかにも理解しがたい概念の単位である。インターネット上でも若い学徒から、疑問が寄せられている。
若い方々に、疑問を持つことはいいことである、といいたい。日本のノーベル賞を授賞したある科学者は、疑問を持つことで科学的な発見があると述べている。欧米諸国においても大きな発見をした科学者の伝記にも疑問を持ったことが発端であった、と多く記されている。エントロピーを定義することなく、エネルギ量の変化を基にして物理的な現象を解析する方がより優れているのではないか、と若き学徒に共感して思う。

さらに議論を深めよう。
一歩譲ってエントロピーの定義式
S=Q/T
から
Q=S・T
とする。Qはエネルギ量であり、様々な物理的な事象を表す。気体の圧力pと体積vの積であるp・v 、質量mと速度vの運動エネルギはm・v/2 、電圧vと電流iの積であるv・iの電気的なエネルギ等である。
ここで右辺のS・Tに関して、Sは温度Tをエネルギ量に変換するための係数Jと置き換えよう。すなわちJはエントロピーの定義から離れて単なる係数とみなすのである。
数学的な見地からすると、左辺の変数Qの値域(domain)と右辺の変数Tの値域は異なっている。物理現象としても異なるから、=の記号は使ってはならない。
より物理現象を正確に表現するためには、
Q:=J・T
J・T:=Q
とすべきである。ここで:=は右辺の変化は左辺に等価的に移行することを意味する。
山本義隆氏著「熱学思想の歴史的展開」には、物理的な運動で熱が発生するジュールの実験結果はJ・T:=Qであることが確かめられている。ジュールは、液体をかき混ぜる仕事Qを行うと液体が発熱することを明らかにした。ところが液体を加熱しても力を発生させることは困難であった。その理由はすでに述べたように、熱による液体の変形が小さいからである。トムソンはこの逆の過程が存在することを探求していたと記録されている。
Q:=J・Tの物理的事象は、気体の温度変化により実現される。
その詳しい内容は別途として述べる。
クラジュウスは、値域の異なる事象を分子と分母にまとめて右辺におきS=Q/Tとエントロビーを定義した。左辺のSはこの定義からは熱容量としか解釈できない。Tを一定として、エネルギ量Qが変化することは、熱容量Qが変化すると考えなければならない。これまでの150年間にわたり様々な誤解を生じる結果をもたらしているといえる。山本氏の著書によるとエントロピーの定義を提示する前の1850年の論文には、相転移に伴う潜熱、気体の熱にかかわる等圧比熱とか等積比熱をどのように扱えばよいか念頭におきながら、熱に関わるエネルギ量のことを記述しているという。
ここにカルノーによる有名なカルノー・サイクルが登場する。カルノー・サイクルは気体の状態変化を表すモデルである。気体内部の熱に関わる状態の最初の出発点を仮定し、状態変位を行う過程を気体の圧力と体積、温度の変化に応じて軌跡で表し、最初の出発点にもどるサイクルとして表示した。
サイクルとして一周することで気体内部に生じるエネルギ量の局部的な変化があるとしても、大局的にはその影響を相殺できると考えている。クラジュウスはカルノー・サイクルを基にして、さらなる理論を展開したとされている。

ここでは、理論的な観点からすると値域の異なる変数を同等に扱う変数としたエントロピーの定義は、物理現象を曲解する原因であることを述べた。

―――――――
脚注: インターネットでの「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説」に、絶対零度は次のように提示されている。
0.1K以下の極低温領域では、超伝導、超流動などの、常温ではけっして観測することのできない特異な現象をみることができる。1981年には核断熱消磁の成功によって絶対温度で20マイクロK(1マイクロKは100万分の1K)付近まで、さらに1995年以降はルビジウム87(87Rb)に始まり、ナトリウムNa、リチウムLiなどの原子核のレーザー冷却によって20ナノK(1ナノKは10億分の1K)まで到達できるようになったが、絶対零度は到達不可能である。
(応)

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