今、半分空の上にいるから

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今、半分空の上にいるから 海と霧と空 その2

2017-07-19 12:03:52 | 今、半分空の上にいるから①(完結)

 禄郎が公吉を半分天上界に連れて来てからの続き……。

 驚いていた公吉は、急に神妙な顔で黙り込みました。しばらくそのまま考えた後、禄郎に尋ねました。

 「さっき腕を掴まれた時に、なんか急に色々な事が見えたんだけど?」

 「あー、それ?多分俺の記憶が見えたんだよ。」
禄郎が答えました。

 「え?記憶?」

 「半分天上界の力が扱えるものしか、他のものの記憶を見る事は出来ない。記憶も全部が見える訳じゃない。力が発動しているものの、力が発動している間の記憶だけ。」

 「あれ?でもなんか色々ありすぎてよく理解出来ないんだけど。」

 「じゃあ、もう一度記憶を見せるから。」

 そう言うと、禄郎は自分の指先で公吉の額に軽く触れました。公吉の頭の中に、景教の天使さんから始まった、禄郎の今までの記憶が流れ込んで来ました。

 「……えっ!何それ!?て、言うか、そもそも何で『半分天上界』なんて適当な名前が?」

 「本当に。もうちょっとマシな名前はなかったのかと。」
これには禄郎も賛同しました。
「普通に俺達の暮らしている地上界と、神々の世界の天上界。人間と神々が出会うのが半分天上界。
 でも、ここも半分天上界の力が使えるものしか来る事は出来ない。」

 公吉が尋ねました。
 「愛知県には昔三ヶ根山と観覧車の公園に観光に来たの?」

 禄郎が答えました。
 「愛知県は昔父親の転勤で住んでいて…、え?観覧車?」

 「なんか怖そうなおじさんが。」

 「観覧車の記憶まで見えるのか。あー、アレ、日本の偉い神様。」

 「スーツ着てたけど?」

 「地上界に来る時は結構今の時代の普通の服だよ。景教の天使さんもそうだった。」

 「で、俺がここに連れて来られたのは?なんで?」公吉が尋ねました。

 「例の怖そうなおっさんに連れてこいと呼ばれたからだよ。」
そう言うと、禄郎は呼び掛けました。
「近くいるんだろ?彼連れて来たから。
 約束を果たしたから、もう俺との契約は終わり。俺帰るから。」

 ふいに日本神話に見る様な、髭を蓄え、古代の日本の装束を身に纏った男神が現れました。
 
 「ご苦労さん。でもまだ帰るな。」

 「は?何でだよ?」

 「今、そいつと話してだろ?お前の記憶の話。」

 「…例の観覧車か。」
 禄郎はやれやれと言う顔で言いました。


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