Zooey's Diary

本家サイトはブックマークの一番目の”Banana Fish's Room”です。

「捕まえようとすれば逃げてしまう」春樹と「ノルウェイの森」

2016年11月20日 | 
先の「ノルウェイの森」の誤訳問題について書いて思ったのは
村上春樹氏はそれについてどう考えたのだろう?ということです。
世界的に大ヒットした小説「ノルウェイの森」。
陰鬱な雨模様のハンブルク空港に着陸した飛行機のBGMで「ノルウェイの森」が流れ、
37歳の僕は、20歳の頃の草原の匂いを思い出し、激しく混乱する。
こんな書き出しで始まるこの小説は、私に言わせれば春樹の作品の中では異質な存在で
あまり好きではないのですが、そう言いながら何度読み返したか分からない。
で、英語に堪能な春樹が、何を思ってこういう題をつけたのだろう?と。

ネットで探したら出て来ました。
2011年発刊の春樹の「雑文集」という本の中で言及しているらしい。


(2009年に行ったリバプールのCavern Club)

"翻訳者のはしくれとして一言いわせてもらえるなら、Norwegian Woodということばの正しい解釈はあくまでもNorwegian Woodであって、それ以外の解釈はみんな多かれ少なかれ間違っているのではないか。歌詞のコンテクストを検証してみれば、Norwegian Woodということばのアンビギュアスな(規定不能な)響きがこの曲と詞を支配していることは明白だし、それをなにかひとつにはっきりと規定するという行為はいささか無理があるからだ。それは日本語においても英語においても、変わりはない。捕まえようとすれば、逃げてしまう。もちろんそのことば自体として含むイメージのひとつとして、ノルウェイ製の家具=北欧家具、という可能性はある。でもそれがすべてでない。もしそれがすべてだと主張する人がいたら、そういう狭義な決めつけ方は、この曲のアンビギュイティーがリスナーに与えている不思議な奥の深さ(その深さこそがこの曲の生命なのだ)を致命的に損なってしまうのではないだろうか。それこそ「木を見て森を見ず」ではないか。Norwegian Woodは正確には「ノルウェイの森」ではないかもしれない。しかし同様に「ノルウェイ製の家具」でもないというのが僕の個人的見解である。"

"この、Norwegian Woodというタイトルに関してはもうひとつ興味深い説がある。ジョージ・ハリスンのマネージメントをしているオフィスに勤めているあるアメリカ人女性から「本人から聞いた話」として、ニューヨークのパーテイーで教えてもらった話だ。「Norwegian Woodというのは本当のタイトルじゃなかったの。最初のタイトルは"Knowing She Would"というものだったの。歌詞の前後を考えたら、その意味はわかるわよね?(つまり、"Isn't it good, knowing she would?)彼女がやらせてくれるってわかっているのは素敵だよな、ということだ)でもね、レコード会社はそんなアンモラルな文句は録音できないってクレームをつけたわけ。ほら、当時はまだそういう規制が厳しかったから。そこでジョン・レノンは足跡で、Knowing She Wouldを語呂合わせでNorwegian Woodに変えちゃったわけ。そうしたら何がなんだかかわかんないじゃない。タイトル自体、一種の冗談みたいなものだったわけ」。"
(村上春樹「雑文集」から)


(同じくリバプールのストロベリーフィールドの門)

Norwegian Woodは、春樹にとってはあくまでもNorwegian Wood。
これが結論か。
確かに彼の作品のタイトルは、歌の題名からそのまま取ったのも多いのです。
私は春樹の評判になった本は殆ど読んでいたつもりでいたのですが
「雑文集」という題名が気に入らなくて、これは買っていなかったのでした。

こちらを参考にさせて頂きました。
「ノルウェイの森」誤訳問題について http://yagian.hatenablog.com/entry/20110424/1303634272
【ノーベル賞残念対談】内田樹×平川克美「なぜ世界中の人が村上春樹の小説にアクセスするのか」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33810?page=4
村上春樹「ノルウェイの森」という題名について http://oshiete.goo.ne.jp/qa/8097535.html

ジャンル:
ウェブログ
コメント (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« ノルウェイの木材?ABBEYROAD@... | トップ | 「東京ブルース」って… »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (tona)
2016-11-20 21:57:02
さすが、zooeyさま、村上春樹を全部読まれていらっしゃる。私は大江健三郎と春樹は読んでいません。もちろん他にもいっぱい読んでない人はいてその方が多いです。

話は違って以前「インフェルノ」の感想を読ませていただきました。その時第2作の「天使と悪魔」のお話もありました。最近ジョ-ジ・ブル著『知られざるバチカン』を読んでいたのですが、丁度時を同じくして娘から「天使と悪魔」を借りたので再び見ました。随分忘れていたのですが、読んだ本のバチカンが出てきて、ローマではポポロ教会には行ってないですが他は見たことがある所で、非常に美術や宗教が絡み、うんちくも楽しめました。
「インフェルノ」は見ていませんが、ダンテの『新曲』は難しそうなので、娘が阿刀田高の『やさしいダンテ<新曲>』あたりが良いのではないかということで、婿が持っているそうなので読むことにしました。
tonaさま (zooey)
2016-11-21 23:07:35
村上春樹が文芸誌で新人賞を取った時から
私は追いかけているのです。
なんとなく好きで、読んでいて心地よいのです。
最近では腹が立つことも多いのですけど。
ノーベル賞候補なんて、こんな有名になる日が来るとは夢にも思いませんでした。
今では気恥ずかしくて、ちょっと言いたくないのですけどねw

「インフェルノ」は映画を観た後、本の「下」も読みました。
映画と本と、結末があまりに違うので驚きました。
ダン・ブラウンの本は、観光案内だと思えば最高ですよね。
ダンテなんて、読んだことないです~

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事