Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「希望のかなた」

2018年01月13日 | 映画


フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督による、難民問題を取り扱った新作。
冒頭、真っ黒な石炭の上のゴミのようなものが不意に動いて驚きます。
貨物船の中の石炭に隠れて密航しようとした、男の顔だったのです。
シリアのアレッポで家族を空爆によって殺されたカーリド。
その船がたまたまフィンランド行きであったことから、ヘルシンキに流れ着く。



ヘルシンキでアパレルの仕事をする初老の男ヴィクストロムは、
さえない仕事とアル中の妻に嫌気がさし、全てを捨てて第二の人生を始めようとする。
2人の男の人生が、並行して描かれる。

カーリドはヘルシンキの警察に難民申請を出し、とりあえず簡易宿泊所に入れられる。
簡易なベッド、歯ブラシ、タオルなどの最低限のものを与えられ、
詳しいインタビューによる、身辺調査も行われる。
それまでいたる所で暴力にさらされ、食うや食わずの生活をしていたカーリドにようやく、
安寧の時間が訪れたかのように見受けられる。
しかし難民申請は「アレッポが非常事態にあるとは思われない」という理由で
正式に却下され、本国に強制送還されることになる。
別室のテレビではその時、アレッポが激しい空爆に見舞われているシーンを映し出しているというのに。
送還されるすんでの所でカーリドは収容所を抜け出す。



ヴィクストロムが始めたレストランのゴミ捨て場にカーリドが寝起きしていたことから
2人は出会い、ヴィクストロムはカーリドを雇うことにする。
こう書き連ねると、まるで面白くない難民ドキュメンタリーのようですが
そこここにカウリスマキ節が炸裂するのです。
登場人物の誰もがニコリともせず、ジョークが飛び交う訳でもないのに
何とも言えない人情味、とぼけた面白味がある。
経営が振るわないレストランの起死回生を図って寿司レストランを始めるシーンは
日本人なら失笑なしでは見られない。
四角四面のお役所仕事より、民間レベルの助け合いの方がどれだけ人を救うかということを
その、しれっとしたユーモアの中に描いているようです。



しかしあのラストは…
私には、暗澹たる絶望にしか見えませんでした。
難民をとりまく現実は、夢物語ではあり得ないということか。

英題 The Other Side of Hope
公式HP http://kibou-film.com/


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« コーヒーのお値段 | トップ | 「便所のような国」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿