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ミラノ・スカラ座の「後宮からの逃走」

2017-07-08 10:11:39 | オペラ
6月29日(木)にミラノ・スカラ座でモーツァルトの「後宮からの逃走」を観る。ズービン・メータの指揮ということなので、張り切って平土間の最前列の中央少し左で観る。あまりにど真ん中だと指揮者が邪魔になる可能性があるので、3席だけ左に寄せて取った。ズービン・メータの横顔も見ながらの鑑賞で、なかなか貴重な体験。もう80歳を超えているのだろうが、若々しい指揮ぶりだった。

スカラ座の解説によると、偉大なる演出家ジョルジオ・シュトレーラーの没後20年の企画として、1965年のザルツブルグ音楽祭で大好評を博した舞台の再現をしたという。1965年にまだ若かったズービン・メータが指揮をして熱狂的な歓迎を受けたという、そのズービン・メータの指揮ではあるが、1週間ほど前にイタリアではテレビ放映されたためか、ボックス席の後ろなど、見づらい席は売れ残っていて、満席ではなかった。

シュトレーラーの演出は、時代を移したり、読み替えたり、という最近の流行とは異なり、簡素なセットながら照明を大胆に設定して、光と影で白黒の影絵で見せるような美しい演出だった。フット・ライトはほとんど使わずに、横からの照明とスポット・ライトが中心で、舞台奥と手前で歌う時には影となり、ちょうど中ほどで歌う時には照明が当たって色彩豊かに見えるという具合。普通の考え方では、歌う人物にスポットライトを当てて、聴く側の人物は目立たないように影にするという演出となるのだが、この舞台ではまったくの逆であり、アリアで自分の感情を歌う時には原則として前に出て影となって歌い、聴いている側の人物に照明が当たっている形となる。

こうした中で、コンスタンツェのここぞというアリアだけは、前に出てスポット・ライトを浴びて歌うので、その歌の意味が強調される演出で、結構長い作品だが全く退屈せずに見た。

ズービン・メータの指揮は出だしから快調で、話が進むにしたがってぐいぐいと引き込まれた。昨年だったか日生劇場で「後宮からの逃走」を観て、あまりに演出が馬鹿げていたので、それ以来この作品はトラウマになっていたのだが、それが見事に払拭された。やっぱり、モーツァルトはいいなと思った次第。

登場人物はそれほど多くないので、スカラ座の舞台の中にまたプロセニアム・アーチを作り、その中で話が進むのだが、次の出番を待つ歌手がその内側のアーチの外で待つところも見せていて、なかなか工夫された演出だと感心した。舞台の床は少し傾斜した傾斜舞台。

主演のコンスタンツェにはレネケ・ルイネン、ブロンデにはサビーネ・デヴィーレ、オスミンはトビアス・ケラーといった配役。ルイネンのコロラトゥーラも見事だったが、オスミン役のケラーが歌も演技も見事だったので、聴衆からも大きな拍手を受けていた。

スカラ座の最前列では、オケ・ボックスのところに小さな液晶ディスプレイが付いていて、ドイツ語、イタリア語、英語などの翻訳が表示されるので、知らない演目でも理解できる。もちろん平土間の各席でも、前の席の後ろにディスプレイが付いている。ボックス席は手をのせる台の下にディスプレイがあるが、位置が低すぎるので、舞台を観ながらディスプレイを見るのは現実には難しいだろう。今回は知っている演目なので、殆んど見なかった。

日本の新国立劇場では舞台の両脇に日本語の翻訳が出るが、外国人の観客のためを考えると、英語の字幕を何らかの形で出す方法も考えた方が良いのではなかろうか。

休憩も入れて3時間15分の演目で、宿に戻ると11時30分を過ぎていたので、昼に買っておいた生ハムとカプレーゼ、クスクスと白ワインで軽い夜食をとった。
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