龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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『概念と個別性』朝倉友海、読了。

2017年12月01日 14時01分43秒 | メディア日記
朝倉友海という人のスピノザ論『概念と個別性』を読み終えた。
もちろん哲学書は一度読んだからといってそうやすやすと理解できるものではないから、分かるのはこれからだ。

10年前、まずスピノザの本文に魅せられつつ意味不明のまま震災を迎え、何をどうかんがえていいもやら分からないままウロウロしつつもスピノザのテキストはいつも掌の中にあって繰り返し眺めて来た。
ドゥルーズ『スピノザ 実践の哲学』を読み、上野修の『デカルト、ホッブズ、スピノザ』を読み、江川隆男さんの本や講座に接しつつ、震災後はなんといっても國分功一郎氏のコトバの傍らでぼんやり考えるともなく考え続けてきたそのことのひと区切りが、この『概念と個別性』でついたような気がしている。

第一章の 「観念と概念」が一番難しい。観念(これ、頭の中で考えている思考)と観念内対象(頭の中で考えられている観念における対象物、つまり事物)と形相(実際のモノ)の関係、とか言われてもそう簡単には腑に落ちないよね。

でも、対象もまた観念内の対象だというところ、つまり
観念(観念→対象)であり、
観念(観念→観念)であり、
かつこれは無限遡行しないってあたりのところはぼんやり手応えがあった。

物事を観念の外部には置かないってことなんだろうね。
もちろん観念自体も観念の対象になるから、観念の観念もまた観念になる。
ただし
「観念の観念の観念の……」 
と無限遡行はしない。

また、観念の外部に事物を置かない。

つまりここにある十全な観念によって表現されたこの世界=自然が唯一の実体ってことになるわけね。

だからそこには外部がない。

それはすなわち、唯一絶対の神様をわれわれの外部(超越存在)に措定してそこから存在の代わりに表象が流出してくる 「のではない」ってことね。

これからいよいよドゥルーズの『スピノザと表現の問題』
を再チャレンジせねば。

このあたり、なんだかだんだんワクワクしてきた。

デカルトの観念説は中途半端だ、と批判したスピノザはそれをさらに徹底的に考えたのだ、っていう國分さんのお話とも平行する。

もしこの本だけ読んだら何のこっちゃ、だったから、分からないなりに勉強は大事だってことでもある。

しかし、たぶんここは自分の感覚とは大分離れているのでそのうちまた分からなくなると思う。

ただ頭の中でスパークした個所、
画期的におもしろかったのは

「表現的なる観念こそが真なる観念であり、そうした観念が持つ表現性が、われわれの知性を構成している」朝倉P40

というところだ。

これはドゥルーズを読んでいて、また江川隆男氏のドゥルーズ=スピノザ論に接していても感じていたことたちにコトバを与えたもらった感がある。

『エチカ』に出てくる 「属性」というものを理解する鍵にもなりそうだし、これから
ドゥルーズ『スピノザと表現の問題』を読む大きな助けにもなりそうだ。

実体があって、それが絶対的な規範や神様としてその下に属性(物質や精神)とか様態(具体的な個物=存在)が生じるのではないんだよね、スピノザ的には。

何となく『エチカ』を最初から読んでると神の存在証明とかやられちゃうから困っちゃう(おもしろいけど)わけだけれど、それを面白がって先に読み進めると、ある瞬間からその意味が変わってくる……そのあたりの機微はもう少ししないと説明できないんですが(笑)


第二章 「『身体の観念』とは何か」もワクワクだった。

「精神は身体の観念である」スピノザ

という有名な、そしてなんだかよく分からない決めぜりふを、丁寧に説明してくれている。

つまり、
「理性も観念もいいけど、身体とその精神の関係はどうなってるの?」
というスピノザを読んでいるとどうにもしっくりこない疑問点があって、思惟(精神的な思考)と延長(物質的なもの)の関係は 「平行」だなんて言われても困るわけです。実際スピノザは心身二元論についてデカルトのことを意味不明だと批判してるわけだし。

第二章はそれについても、事物と観念の不可分性を 「表現」というキーで読み解いてくれている。
 
まあ、
「観念と観念内対象との関係だから、所詮は脳内のお手盛り妄想じゃないか」
的な、主知主義に対する批判は想像できなくもない。

それについては別途。

でも、ようやくそういう不可知論的な、つまりは 「私的」なところから解放されそうな予感がある。
スピノザを読み続けてきてよかった、つくづくと思う。

(この項続く)

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