ここ数年のFXブームでは、日本の個人投資家の大半が主に円キャリートレードを行ってきた。この背景には、今年7月までの円安傾向が鮮明であったことに加え、FX取引に対する認識の偏りに起因するものと思われる。米サブプライム問題から発端する金融危機が株安、円高をもたらし、円キャリートレード筋のポジションの解消(反対決済)による狼狽売りが各主要通貨対円のレートを大きく押し下げ、多くの投資者が損失を被ったことが記憶に新しい。いわゆる「プロ」の評論家でも、個人投資家の間でも、あたかも円安が宿命的と言わんばかりの論調がやっとドンを弱めてきたが、依然偏った認識を以って相場に臨んでいる投資者が多く存在しているのも事実だ。具体的に言うと、円キャリートレードを確実な投資手法と見なすことや円安を絶対視する風潮である。
そもそも円キャリートレードとは、低金利の円を借りて高収益の金融商品への投資全般を指すが、為替に限定すれば、低金利の円を売り、高金利の外貨を買うことで、金利差(スワップ金利)を享受する取引手法を指す。この取引手法の肝心なところは、金利差の故に高金利通貨のレートが上昇する傾向にあることが前提となる。逆に言えば、高金利通貨のレートが上昇ではなく、下落傾向にいれば、円キャリートレードによる金利差の享受とのメリットだけでは元にもとれないリスクがある。その上、高金利だからといってレートが必ず上がるとは限らないし、金利差でだけに頼る上昇トレンドもいずれ転換するといったリスクが常に存在する。
一部業者とマスコミの偏った宣伝によって、日本の個人投資家の大半が染められ、円安とのシナリオを絶対視する流れが根強い。この故、FX取引=円売りというイメージや先入観を持っている投資者はなお圧倒的多いのが現状だ。彼らは外貨を「買い」しか取引できない上、買った後、もしレートが下がっても損切りせず、相場の回復を待つのみ。少しレバレッジを高めに設定して取引された場合、トレンドの変更ばかりか、相場の波乱があれば、直ちに追い証と強制決済に遭う羽目になるにもかかわらずだ。彼らは円安傾向を確信し、円キャリートレードこそ成功の方程式と見ているようである。このような偏った認識が人気を博している背景の一つに、大衆の心理に起因すると筆者は思われ、即ち、楽に儲けたいからではないか。
確かに、もし円安が宿命的で、絶対的なトレンドであれば、円キャリートレードほど楽な取引手法はない。「外貨を買って、待つだけ。しかも毎日スワップ金利を貰える」といったストラテジーも永遠に有効だ。が、少し理性的に考えてみれば、このような絶対的有効の取引手法が存在するなら、もはや相場自身が壊れて、継続できなくなることが自明である。つまり、世の中簡単に、楽に、長期にわたって有効な金儲けの方法が存在しないということ。
FX取引=円売りとの認識しか持っていない投資者の多くは、二つの間違ったロジックに陥られている。一つは、低金利の円を売り、高金利の通貨を買う行為は理にかなう投資であるとの考え方。また、円安宿命論はこの故に生じた二番目の過ちだ。
結論を先に申し上げますと、為替取引は典型的なゼロサム・ゲームであり、投機行為だ。証拠金取引となると、差金決済によるレバレッジをかけた取引であるため、その投機性を一層増大させるもの。為替相場が世界最大のカジノとも言われる故だ。
そもそも、投資と投機の違いは価値の生産の有無に尽きる。例えば、株式投資の場合、時間の推移と共に、投資対象企業が本業で利益を稼いでくれるとの期待ができ、この恩恵を株主も享受できる。加え、一株の実際価値を概ね算出できるし、割安かどうかを判断できるスタダーンドも確立されている。対照的に、為替レートの割高、割安を判断できる標準はないうえ、ポジションを持つだけで、時間をかけても利益の創出を期待できない。FX取引におけるスワップ金利もあくまで二つ通貨間の金利差によるもので、一国の通貨が生む富ではない。言い換えれば、円キャリートレードも為替取引における手法の一つである以上、投資行為とは本質的に程遠い。
スワップ金利のメリットをばかりに追求し、キャピタル・ゲインを無視すれば、取引行為としては本末転倒だ。また、株式投資における配当目当ての取引とも本質的に違う。というのは、高配当自身が企業の成長を証明するような因果関係を、ゼロサム・ゲームとしての為替相場には求められないである。
そもそも、高金利通貨のレートが切り上げるという発想は経済学の原理に反する。本来、円の金利が低い状態では、為替レートが円高に動くことで調整されるから、一般的な考え方と違い、円キャリートレードの理論的基盤は意外に脆い。歴史を検証すると、低金利通貨が買われ、高金利通貨が売られた時期は結構あった。ここ数年円キャリートレードが上手くいったのは、世界的資金の流動性を背景とするリスク容認度の上昇といったマクロ環境に依存しているほかない。ある業者の社長が言うように、高金利通貨が下落したとしても、いずれ上がってくるという保証もどこにもない。円キャリートレードの本質を見極められないと、8月以来の相場のように、手痛い損失をこれからもさせられるでしょう。
そもそも円キャリートレードとは、低金利の円を借りて高収益の金融商品への投資全般を指すが、為替に限定すれば、低金利の円を売り、高金利の外貨を買うことで、金利差(スワップ金利)を享受する取引手法を指す。この取引手法の肝心なところは、金利差の故に高金利通貨のレートが上昇する傾向にあることが前提となる。逆に言えば、高金利通貨のレートが上昇ではなく、下落傾向にいれば、円キャリートレードによる金利差の享受とのメリットだけでは元にもとれないリスクがある。その上、高金利だからといってレートが必ず上がるとは限らないし、金利差でだけに頼る上昇トレンドもいずれ転換するといったリスクが常に存在する。
一部業者とマスコミの偏った宣伝によって、日本の個人投資家の大半が染められ、円安とのシナリオを絶対視する流れが根強い。この故、FX取引=円売りというイメージや先入観を持っている投資者はなお圧倒的多いのが現状だ。彼らは外貨を「買い」しか取引できない上、買った後、もしレートが下がっても損切りせず、相場の回復を待つのみ。少しレバレッジを高めに設定して取引された場合、トレンドの変更ばかりか、相場の波乱があれば、直ちに追い証と強制決済に遭う羽目になるにもかかわらずだ。彼らは円安傾向を確信し、円キャリートレードこそ成功の方程式と見ているようである。このような偏った認識が人気を博している背景の一つに、大衆の心理に起因すると筆者は思われ、即ち、楽に儲けたいからではないか。
確かに、もし円安が宿命的で、絶対的なトレンドであれば、円キャリートレードほど楽な取引手法はない。「外貨を買って、待つだけ。しかも毎日スワップ金利を貰える」といったストラテジーも永遠に有効だ。が、少し理性的に考えてみれば、このような絶対的有効の取引手法が存在するなら、もはや相場自身が壊れて、継続できなくなることが自明である。つまり、世の中簡単に、楽に、長期にわたって有効な金儲けの方法が存在しないということ。
FX取引=円売りとの認識しか持っていない投資者の多くは、二つの間違ったロジックに陥られている。一つは、低金利の円を売り、高金利の通貨を買う行為は理にかなう投資であるとの考え方。また、円安宿命論はこの故に生じた二番目の過ちだ。
結論を先に申し上げますと、為替取引は典型的なゼロサム・ゲームであり、投機行為だ。証拠金取引となると、差金決済によるレバレッジをかけた取引であるため、その投機性を一層増大させるもの。為替相場が世界最大のカジノとも言われる故だ。
そもそも、投資と投機の違いは価値の生産の有無に尽きる。例えば、株式投資の場合、時間の推移と共に、投資対象企業が本業で利益を稼いでくれるとの期待ができ、この恩恵を株主も享受できる。加え、一株の実際価値を概ね算出できるし、割安かどうかを判断できるスタダーンドも確立されている。対照的に、為替レートの割高、割安を判断できる標準はないうえ、ポジションを持つだけで、時間をかけても利益の創出を期待できない。FX取引におけるスワップ金利もあくまで二つ通貨間の金利差によるもので、一国の通貨が生む富ではない。言い換えれば、円キャリートレードも為替取引における手法の一つである以上、投資行為とは本質的に程遠い。
スワップ金利のメリットをばかりに追求し、キャピタル・ゲインを無視すれば、取引行為としては本末転倒だ。また、株式投資における配当目当ての取引とも本質的に違う。というのは、高配当自身が企業の成長を証明するような因果関係を、ゼロサム・ゲームとしての為替相場には求められないである。
そもそも、高金利通貨のレートが切り上げるという発想は経済学の原理に反する。本来、円の金利が低い状態では、為替レートが円高に動くことで調整されるから、一般的な考え方と違い、円キャリートレードの理論的基盤は意外に脆い。歴史を検証すると、低金利通貨が買われ、高金利通貨が売られた時期は結構あった。ここ数年円キャリートレードが上手くいったのは、世界的資金の流動性を背景とするリスク容認度の上昇といったマクロ環境に依存しているほかない。ある業者の社長が言うように、高金利通貨が下落したとしても、いずれ上がってくるという保証もどこにもない。円キャリートレードの本質を見極められないと、8月以来の相場のように、手痛い損失をこれからもさせられるでしょう。