陳 満咲杜の「為替の真実」

陳満咲杜のFXブログです。ブログ引っ越ししました。新ブログはhttp://chinfx.blog136.fc2.com/

投資か、投機か、円キャリートレードの真実

2007年09月12日 13時42分36秒 | FXの真実
ここ数年のFXブームでは、日本の個人投資家の大半が主に円キャリートレードを行ってきた。この背景には、今年7月までの円安傾向が鮮明であったことに加え、FX取引に対する認識の偏りに起因するものと思われる。米サブプライム問題から発端する金融危機が株安、円高をもたらし、円キャリートレード筋のポジションの解消(反対決済)による狼狽売りが各主要通貨対円のレートを大きく押し下げ、多くの投資者が損失を被ったことが記憶に新しい。いわゆる「プロ」の評論家でも、個人投資家の間でも、あたかも円安が宿命的と言わんばかりの論調がやっとドンを弱めてきたが、依然偏った認識を以って相場に臨んでいる投資者が多く存在しているのも事実だ。具体的に言うと、円キャリートレードを確実な投資手法と見なすことや円安を絶対視する風潮である。
  そもそも円キャリートレードとは、低金利の円を借りて高収益の金融商品への投資全般を指すが、為替に限定すれば、低金利の円を売り、高金利の外貨を買うことで、金利差(スワップ金利)を享受する取引手法を指す。この取引手法の肝心なところは、金利差の故に高金利通貨のレートが上昇する傾向にあることが前提となる。逆に言えば、高金利通貨のレートが上昇ではなく、下落傾向にいれば、円キャリートレードによる金利差の享受とのメリットだけでは元にもとれないリスクがある。その上、高金利だからといってレートが必ず上がるとは限らないし、金利差でだけに頼る上昇トレンドもいずれ転換するといったリスクが常に存在する。
  一部業者とマスコミの偏った宣伝によって、日本の個人投資家の大半が染められ、円安とのシナリオを絶対視する流れが根強い。この故、FX取引=円売りというイメージや先入観を持っている投資者はなお圧倒的多いのが現状だ。彼らは外貨を「買い」しか取引できない上、買った後、もしレートが下がっても損切りせず、相場の回復を待つのみ。少しレバレッジを高めに設定して取引された場合、トレンドの変更ばかりか、相場の波乱があれば、直ちに追い証と強制決済に遭う羽目になるにもかかわらずだ。彼らは円安傾向を確信し、円キャリートレードこそ成功の方程式と見ているようである。このような偏った認識が人気を博している背景の一つに、大衆の心理に起因すると筆者は思われ、即ち、楽に儲けたいからではないか。
  確かに、もし円安が宿命的で、絶対的なトレンドであれば、円キャリートレードほど楽な取引手法はない。「外貨を買って、待つだけ。しかも毎日スワップ金利を貰える」といったストラテジーも永遠に有効だ。が、少し理性的に考えてみれば、このような絶対的有効の取引手法が存在するなら、もはや相場自身が壊れて、継続できなくなることが自明である。つまり、世の中簡単に、楽に、長期にわたって有効な金儲けの方法が存在しないということ。
  FX取引=円売りとの認識しか持っていない投資者の多くは、二つの間違ったロジックに陥られている。一つは、低金利の円を売り、高金利の通貨を買う行為は理にかなう投資であるとの考え方。また、円安宿命論はこの故に生じた二番目の過ちだ。
  結論を先に申し上げますと、為替取引は典型的なゼロサム・ゲームであり、投機行為だ。証拠金取引となると、差金決済によるレバレッジをかけた取引であるため、その投機性を一層増大させるもの。為替相場が世界最大のカジノとも言われる故だ。
そもそも、投資と投機の違いは価値の生産の有無に尽きる。例えば、株式投資の場合、時間の推移と共に、投資対象企業が本業で利益を稼いでくれるとの期待ができ、この恩恵を株主も享受できる。加え、一株の実際価値を概ね算出できるし、割安かどうかを判断できるスタダーンドも確立されている。対照的に、為替レートの割高、割安を判断できる標準はないうえ、ポジションを持つだけで、時間をかけても利益の創出を期待できない。FX取引におけるスワップ金利もあくまで二つ通貨間の金利差によるもので、一国の通貨が生む富ではない。言い換えれば、円キャリートレードも為替取引における手法の一つである以上、投資行為とは本質的に程遠い。
 スワップ金利のメリットをばかりに追求し、キャピタル・ゲインを無視すれば、取引行為としては本末転倒だ。また、株式投資における配当目当ての取引とも本質的に違う。というのは、高配当自身が企業の成長を証明するような因果関係を、ゼロサム・ゲームとしての為替相場には求められないである。
  そもそも、高金利通貨のレートが切り上げるという発想は経済学の原理に反する。本来、円の金利が低い状態では、為替レートが円高に動くことで調整されるから、一般的な考え方と違い、円キャリートレードの理論的基盤は意外に脆い。歴史を検証すると、低金利通貨が買われ、高金利通貨が売られた時期は結構あった。ここ数年円キャリートレードが上手くいったのは、世界的資金の流動性を背景とするリスク容認度の上昇といったマクロ環境に依存しているほかない。ある業者の社長が言うように、高金利通貨が下落したとしても、いずれ上がってくるという保証もどこにもない。円キャリートレードの本質を見極められないと、8月以来の相場のように、手痛い損失をこれからもさせられるでしょう。

にほんブログ村 為替ブログへ




あなたの注文は市場を素通りしている?

2007年09月12日 13時32分05秒 | FXの真実
現在、各FX業者が提供している外国為替証拠金取引は典型的な店頭(OTC)取引であり、デリバディブの一種でもある。店頭取引の本質を一言で表すと、『相対取引』に尽きる。投資者の売買注文はあくまで業者が相手となって行われ、第三者には関与しない。したがって、FX取引は当事者同士(業者と投資者)の合意があれば、理論上如何なる価格でも取引可能で、業者の自己勘定でポジションを処理することができる。
  
また、デリバティブは、原資産にリンクした形で人工的に作られた金融商品であり、取引自体は原資産の価格形成に直接参加しないという大きな性質がある。このことから見ても、FXは為替レートの変動を原資産として作られた金融商品である以上、FX業者との相対取引において、例え大きな買い注文を出したとしても直ちにレートを押し上げるようなことはない。少なくとも、取引の瞬間で見れば、一般投資者の注文は為替相場を「素通りした」と理解しても間違いではなかろう。

そもそも、外国為替市場はインターバンク・マーケットと言われ、銀行同士の売買で結ばれたネットワークであり、一般投資家ばかりか、信用力のある銀行や証券会社以外は、一般の機関投資家でさえ直接参加することはできない。また、一回の取引量が大きく、最低でも100万通貨単位での取引が普通であることから、一般投資者の資金力では到底参加するには無理である。一般投資者にも為替取引に参加できるように作られたデリバディブ商品がFXになるわけだが、その性質上、直接為替市場に参加しているわけではない。

  このインターバンク市場における刻々と変化している為替レートを参照にして、FX業者は常に各通貨ベアの買値と売値を表示し、10万通貨単位や1万通貨単位、あるいはより小さい通貨単位で一般投資者の注文に応じるが、業者は店頭取引かつ差金決済という方式を取っているため、売買自体は単に業者との間で成立しただけと言っても過言ではない。理論上、自らのポジションの処理ができる業者(プリシバル)は全てのお客様からの注文を市場または他の業者に出さずに、自らリスクを取って勘定することもできる。勿論、単にブローカーとしての業者も多く存在しますので、ブローカー業者はすべての注文を「カウンターパーティー」と呼ばれている為替ディーラー(銀行なども含む)に取り次ぐ方式を取ってはいるが、殆どのカウンターバーティーはプリシバルであるため、自らのルールでポジションを処理することができる。
このことは、ディーラーにとって、同じ時間帯における買いと売りのポジションが同量であればあるほど好都合と言える。なぜかというと、社内で買いポジションと売りポジションを相殺させ、ほぼリスクなしで買値と売値の差額(スプレッド)を利益として手に入れることができるからだ。買い注文と売り注文のどちらかが大きく偏った場合にのみ、市場に注文を繋ぎ、リスクカバーをはかる。市場に注文を繋ぐときは、他の業者を経由したり、他社のポジションと相殺するなどしていることで、直接インターバンク市場へアクセスするまでに時間的なタイムラグと数量的な調整が発生するため、為替レートへの影響は間接的になる。


インターバンク市場で直接取引が行われていない多くの通貨ペアが、メジャー通貨ベアのレートから計算された「理論上のレート」として提示されていることで、一般投資者がFX業者と相対売買をすることができるわけ。この仕組みを理解すれば、中国政府の厳しい管理下に置かれ、本来は自由売買することができない人民元と円の取引を一部業者が提供していることにサプライズしないであろう。

一方、日本の個人投資者による高金利通貨買い/円売りの注文がここ数年継続的に行われ、このことが円相場を押し下げた一因になったことも事実である。それは、円売り注文に偏ったポジションがあまりにも大きいことから、業者はリスクカバーをするために、インターバング市場に継続的にポジションを出した結果である。

にほんブログ村 為替ブログへ



ユーロ/ドル、本日史上最高値更新か

2007年09月12日 13時02分28秒 | 市況の真実
昨日のコメントでは、ユーロ対米ドルの史上最高値更新が必至との私見を述べたが、現在のレート(1.3625/40)に鑑み、最早本日実現しそうだ。昨日も指摘していたように、あまりにも個人投資家のポジションがユーロ売りに傾いているので(特に日本では)、割りと早く高値更新ができそうだ。フォーメーションで測る本日の目標は1.3880近辺なので、ロンドン市場がオープンしたら、素直に達成されよう。

大事なのは、トレンドが続く限り、安易な値頃感からの逆張りをしてはいけないといった経験則を学ぶこと。天井と底は振り返してみるもので、途中では分からない。この意味では、ドル安のトレンドがいつ終わるかといった予測は全くナンセンスで、目下ドル安トレンドに乗るかどうかということの方が遙かに重要だ。本日ユーロの史上最高値更新があれば、英ポンド、スイスフランや円も追随しよう。私が今年2月から言い続けてきた「ドル/円100円割れ」の現実性も高まる。
にほんブログ村 為替ブログへ