ハリソン君の素晴らしいBLOG

素晴らしい日本人=波里尊(はりそん)君が、新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#713(後篇)

2017-07-12 14:17:41 | 素晴らしい刑事ドラマ









緊急捜査の結果、実際に老夫婦が行方不明で、ダイナマイトの盗難届けも出ており、脅迫電話はただのイタズラじゃないことが決定的になります。

そして拉致に使われた車の目撃証言から、磯部(田中浩二)という青年に容疑が絞られます。

彼はスプーン曲げの特技を持っており、かつての超能力ブームでマスコミに取り上げられ、ちょっとした有名人になった経験が忘れられず、今、時の人となった西谷 愛(工藤夕貴)への強い嫉妬心から、どうやら犯行に及んだらしい。

そこまで判明しても、老夫婦が監禁されてる場所だけは全く見当がつかず、時限爆弾が爆発する翌朝9時までに救出するには、犯人の言う通り愛の超能力に頼るしか無いのかも知れません。

ところが! またしても愛が自殺未遂をやらかします。マンションの屋上から飛び降りようとしたんだけど、今度は心臓に痛みを覚えて倒れちゃう。

駆けつけたドック(神田正輝)は、やがて嘘みたいに痛みが治まった愛の様子を見て、ようやく超能力の正体に気づきます。

「薬を飲んだんだ……」

薬を飲んだのは愛じゃなくて、拉致された老夫婦の奥さん。心臓病を患っており、恐らく発作が出てすぐに薬を飲んで、痛みが治まった。

たぶん愛の超能力は、ある特殊な状況の時だけ発揮される。その特殊な状況とは、彼女が自殺しようとした時。車に跳ねられた少年のテレパシーを受信した時もそうでした。

愛は恐らく、死のうとした時にSOSを無意識に発信し、それが他の誰かのSOSと呼応し、その人の見た光景や痛みを共有する。今回は拉致された老人のSOSを図らずもキャッチしたワケです。

「違うわ……違う! 違う! みんな違う! 私はそんな超能力少女なんかじゃない! 優等生でもない! スポーツ万能選手でもない! みんな違うのよ!」

愛はようやく、ずっと奥底に秘めて来た本音を、ドックとブルース(又野誠治)に吐露します。

「だから死にたくなるのか。キミはそんなのになりたくない。だけどいつの間にか、そういうレッテルだらけになっちゃって……それがイヤなんだ。そうだろ?」

ただの平凡な高校生のくせに、無理をして優等生でいようとする自分自身がイヤでイヤで仕方がない、と言って愛は泣きじゃくります。

「要するに、頑張り屋なんじゃないか。それは決して悪いことじゃない。恥ずかしいことでも何でもないよ」

両親が離婚して、周りから同情されるのがツラくて、愛は勉強やスポーツを人一倍頑張って来た。その結果、優等生でスポーツ万能な子と見られるようになったけど、それは決して本当の自分じゃないと彼女は思ってる。

そのギャップに苦しんでた時に、今度は「超能力少女」なんていうレッテルまで貼られ、世間の注目を浴びてしまい、いよいよアイデンティティーが崩壊しちゃった。何もかもブルースのせいですw

「普通の女の子がそうであっちゃ、どうしていけないの? エスパーや優等生は特殊な人間だから、つまらない普通の女の子であっちゃならないって、そんな決まりがどこにあるの? 誰が決めたの? そう思ってるのは、キミだけだ」

ドックは捜査のことを忘れて、ただ彼女に生きてて欲しい一心で、懸命に語りかけます。

「思いきって、自分さらけ出して生きてみろよ。その立派なレッテルと、キミ自身とのギャップってのは、キミが思ってるほど大きくない筈だ」

ドックの説得を理解したのか、ようやく愛は落ち着きます。駆けつけた母親(田村奈巳)に彼女を託し、再び捜査に戻ろうとするドック&ブルースに、愛が重要な手掛かりを伝えます。

「刑事さん! 菊の花が、見えたんです」

愛が心臓に痛みを覚えた時、つまり拉致された老人のSOSをキャッチした時に、菊の花を上から見下ろしたような光景が頭に浮かんだ。恐らく、そういう場所に夫婦が監禁されてる。爆破予告の9時まで、もうあと数時間しかありません。

「警部! 俺たち、これに賭けてみようと思います!」

「よし、やってみろ!」

橘警部(渡 哲也)の許可を得て、ヘリコプターをチャーターしたドック&ブルースは、上空から菊の花(のように見えるもの)を必死に探します。そして……

「ドック、あれ!」

小学校の校庭に、黄色く塗ったタイヤをピラミッド状に積み上げた、巨大な遊具がある。そのすぐ横のウィークリーマンション上層階から小学校を見下ろせば、菊の花みたいに見える!

間一髪、ドック&ブルースによって老夫婦は救出され、犯人も逮捕されます。愛の超能力が、見ず知らずの夫婦の生命を見事に救ったのでした。

後日、それを報告しに来たブルースに、愛は心からの笑顔を見せます。ドックに「自分をさらけ出してみろ」と言われて、急に気がラクになったと彼女は言います。

「結局、頑張ってた自分がホントの自分だってことが、やっと解ったの」

「うん。自分で自分を嫌ったって、意味が無いってこっちゃ」

ドックみたいな説得力は皆無だけどw、元気に生きていって欲しいというブルースの気持ちは、彼女に伝わったみたいです。

「澤村さんって怖そうに見えるけど、ホントは凄く優しい人なんですね!」

そう言って元気に学校へと駈けていく愛の後ろ姿に、ブルースはしみじみと呟きます。

「幸せになって欲しいよなぁ……」

今回の結果を受けて、西谷愛を七曲署専属のアドバイザーとして迎えよう!なんて言って盛り上がる同僚たちを、ブルースは「彼女はもう、エスパーじゃないんだよ」と一蹴します。

「えっ、どういうこと?」

「つまり彼女は、もう絶対に自殺なんかしないって事だな」

「そうです、警部」

「良かったな、ブルース」

「いやぁ、今回は楽しかったです!」

じゃあ普段は楽しくないのかよ?っていう疑問も残しながらw、一件落着。やっぱり『太陽にほえろ!』は、希望のドラマなんですよね。こういう爽快な後味を残してくれる刑事ドラマが、現在はなかなか見られません。

今回、銃撃戦やカーチェイスなど派手な見せ場は一切なし。にも関わらず、2時間の長尺を全く退屈させずにラストまで引っ張るクオリティー。

特に、超能力という言わば非現実的なテーマを、「理想と現実とのギャップ」という思春期に誰もが味わう超現実的なテーマと融合させることで、とても身近なものに感じさせた脚本が本当に素晴らしいと思います。

この『エスパー少女・愛』は本来、DJ刑事(西山浩司)の主演エピソードとして用意されてたんだそうです。ところが西山さんが体調を崩して入院する羽目になり、急遽ブルースが代役を務めたんだとか。

確かに、超能力を盲信しちゃう刑事としてはDJの方がキャラ的に自然だし、西山さんならまた違った面白さで笑わせてくれたと思うけど、ブルースだからこそ良かった部分も多々あるんですよね。

あの武骨な顔で愛=エスパー説を力説し、後輩のDJやマイコン(石原良純)に笑われちゃう描写はブルースだからこそ可笑しいし、女子高生との不器用な交流もブルースだからこそ心温まるものがありました。

DJが相手だと、ちょっと恋愛感情みたいなものも絡みそうで、それはそれで青春ドラマとして楽しめそうだけど、結果的にはブルース主役で良かったように私は思います。コミカルな役どころを自然にこなして見せた、又野誠治さんの演技力もまた素晴らしい!

そして、エスパー少女=西谷愛を演じた工藤夕貴さん、当時15歳(!)。ヒラタオフィス所属、つまり多部未華子さんの大先輩にあたる女優さんです。

デビューは小堺一機さんのバラエティー番組で、最初に注目されたのは「お湯をかける少女」のキャッチフレーズが話題になった、即席ラーメンのCM。

そして石井聡互監督『逆噴射家族』や相米慎二監督『台風クラブ』等の映画で高い評価を受け、演技派の若手女優として広く認知された上での『太陽にほえろ!』ゲスト出演でした。

確かに本エピソードは、工藤さんの演技力に支えられてる部分も多々あり、通常レベルの若手ゲストだと陳腐な印象に終わった可能性もあります。特に、泣きじゃくりながら初めて本音を吐露するシーンの演技は圧巻でした。

ちょうどこの時期から工藤さんはハリウッドへの挑戦を始め、まさに今回の役柄さながらにコツコツ努力を続け、ついに'89年、ジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』で永瀬正敏さんと一緒にアメリカ映画デビューを果たされます。

以降、『ヒマラヤ杉に降る雪』や『ピクチャーブライド』『ラッシュアワー3』等、ハリウッドを拠点に現在も活躍中。

工藤さんにとって『太陽にほえろ!』は、日本における数少ないゲスト出演作にして、唯一の刑事ドラマだった筈。そういう意味でも、まさにスペシャルな作品です。
 
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感謝 (ゼリー)
2017-07-13 08:54:34
昭和47年、今から45年前、大げさに言うともはや時代劇のような東京新宿の町並み…
時代劇は大げさにしても、まだ戦後と言われていた頃の日本の風景が垣間見えますね。
いまや言い伝えられる昔話のように、いろいろな方が話してこられたマカロニやジーパン、スコッチの頃の太陽にほえろ!のうんちく。

そんな中私の無理なリクエスト叶えていただき、あまり語られることのない後を期太陽にほえろ! から数作にスポットを当て大変に読み応えがあるレビューを書いていただきました。

皆無であったわけでは無いにしても、この時期の作品にここまで深く探究された文章はなかなか見ることができませんでしたので感動しました。(ハリソンさんにしても、新雪が降り、まだ誰も歩いていない真っ白な雪道を1番最初に歩いた時のような、喜びがレビューを執筆されているときに感じられたのではないでしょうか… (笑))

私もこの番組に対しての愛情は、大変に深く抱いておりますので、同感できることばかりで魅了させていただきました。

このようなレビューを受けたことにより、おそらく埃をかぶっていた「エスパー少女愛」や「加奈子」といったマイナーな作品が再び呼吸を始め輝き始めたような気がします。

これからも、さまざまな時代の作品を抽出して優れたレビューを世に発表されてくださいませ。

できましたらもう一つ私のリクエストで女優の活躍は少ないですが「ボス!任せてください」をじっくりやっていただけるとうれしいです〜
それにしても… (ゼリー)
2017-07-13 09:15:15
それにしても、渡哲也さんと又野誠治さんは役者同士、ビジュアル的にも性格の分け合い方に対しても相性が良いですね。
まるで長年「大都会」や「西部警察」で同じ釜の飯を食ってきた戦友のような雰囲気すら感じます。
後の「ゴリラ」なども、谷川竜さんなんかの優男でなく又野さんを入れていたらもっと面白くなったのではないでしょうか。

それに引き換え、実質の舎弟ぶんでなくてはいけない神田正輝さんには、公私共に常に一定の距離があり、そこに館ひろしさんが加わると、完全に冷遇してる感がわかりやすく見えてきて、裕次郎さん亡き後の石原軍団の構図は昔から好きでありません…(*^_^*)
>ゼリーさん (ハリソン君)
2017-07-13 11:34:33
楽しんで頂けたなら嬉しいです。私も新鮮な気持ちで記事を書けて楽しかったです。こうなったら他の時期も取り上げて行きたいと思ってますので、『ボス、任せて下さい!』はしばらく経ってからのレビューになりそうですが、気長にお待ち下さいませm(__)m

ラストシーンにおけるブルースの「今回は楽しかったです」っていう台詞は明らかにアドリブで、それを受けて橘警部が、ブルースの両肩を持って満面の笑顔で、ほんと可愛がってる感じが伝わって来ますよね。

基本的に警部は部下をニックネームで呼ばないのに、ブルースだけはたまにニックネームで呼んでたし、あの不器用さに自分自身の若い頃を重ねておられたのかも知れません。

自分の人生を捧げる覚悟で石原プロ入りされた渡さんから見れば、裕次郎さんに直々にスカウトされた遊び人の神田さんは、まぁ気に入らないのも当たり前で、自分を慕って来た舘さんばかり可愛がるのは自然な成り行きだったかも知れません。

もしかしたら神田さんの方が、裕次郎さん亡き後は自由にやりたくて『ゴリラ』後の石原プロ作品へのレギュラー出演を避けておられたのかも?

小林専務やまき子夫人の思惑も色々絡んでそうで、確かに裕次郎さん没後の石原プロには、あまり良いイメージが無いですね。それは作品の出来にも表れてます。
 

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