イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

遺産の行方

2012年03月15日 22時04分30秒 | イタリア・文化

今日もシャツ1枚、革ジャンで充分なお天気。
本当にこのまま暖かくなるのかなぁ・・・と疑い深いのは私だけではないはず。
久々(じゃ、まずいでしょう)に図書館に行ったら、アレだけ寒かったのに、今は暑いくらい。
いい加減暖房切れば・・・と思うものの、これは切ったら切ったで寒いのかもしれない。

夕飯を食べながらテレビのニュースを見ていて思わず笑った。
「私たちは中に入れないのに、夜泥棒は中に入れるなんて!?」
というフレーズから始まったこの話題。
でもねぇ、全然笑い話じゃないんですよ、これ。

Napoli(ナポリ)を州都に抱く、Capmania(カンパニャ州)
Napoliは今でこそ、イタリアのお荷物、悪の巣窟、治安の悪さやマフィアの問題などなど
マイナスのイメージでいっぱいですが、その昔は南の文化の中心だった。
中世の頃から様々な王家に支配されていたこのあたりには今でも多数の王宮が点在している。
その中でもひときわ有名なのが映画「アマルフィ」にも登場し(あれ?そうだったけ?最後のコンサートのシーンかしらん?)
世界遺産にも登録されているCaserta(カゼルタ)宮殿。

おお、この写真を見たらまるでヴェルサイユ宮殿じゃないですか。
私もカゼルタにはいつか行きたいと思っているんだよねぇ・・・いひひ、今年あたりいかがでしょうかねぇ?
という楽しいお話ではなくて・・・

こちら18世紀にヨーロッパに作られた一番大きな宮殿と言われているそうです。
作ったのはブルボン王家。
スタイルがヴェルサイユと似ているのは当然。
実はこの王宮の最初の建築家Luigi Vanvitelli(ルイジ・ヴァンヴィテッリ)が理想としたのがヴェルサイユ宮殿だったから。
詳しい説明はWikipediaに譲るとして

ニュースの話題はこのブルボン家(イタリア語ではBorboneと言いますが)の宮殿などが22も有るそうです。
Palazzo Reale di Napoli,
Reggia di Capodimonte,
Tenuta degli Astroni,
Villa d'Elboeuf,
Reggia di Portici,
Villa Favorita,
Palazzo d'Avalos nell'isola di Procida,
lago di Agnano,
Licola,
Capriati a Volturno,
Cardito,
Reale tenuta di Carditello,
Reale tenuta di Persano,
Fasano di Maddaloni,
Selva di Caiazzo,
Sant'Arcangelo,
Reggia di Caserta,
San Leucio,
Casino del Fusaro,
Casino di Quisisana,
Mondragone,
Demanio di Calvi

そちらの一つCasertaのSan Tammaroという場所にあるCarditello(カルディテッロ)

こんなところなんですが、数年間放置、昨今では泥棒に入られ、暖炉やしっくいなどまで持ち出され、闇で売買されているとのこと。
しかし、ちょっと調べてみたらここ、問題はそれだけではないようです。
過去のお話を紐解いてみると、ちょっとかわいそう・・・というより悲惨。

かなり前から国もその他の公共機関もどうすることも出来ず、2007年には一度建物全体が競売にかけられていたようです。
結局拉致があかず、それならユネスコの世界遺産として「カゼルタの18世紀の王宮と公園、ヴァンヴィテッリの水道橋とサン・レウチョ邸宅群」の中に混ぜてくれ~と頼んでみたけど・・・
1920年には既に調度、美術品は競売にかけられ国有財産なり(ここら辺は法律でちゃんと守られています)
2070ヘクタールの敷地は分割されて売られています。
問題は残されたお屋敷。
戦時中はドイツ軍が駐屯、その後放置されていたようです。
そして昨年2011年1月、20,000,000€つまり・・・え~と0が2個増えればいいんだよね?あれ2兆円?
売れなかったようですね。

問題はそれだけに留まらず、現在はなんと"ゴミ"。
ナポリと言えばゴミ問題というくらいいつまで経っても解決しないこちらの問題。
この空き地にも大量のゴミが投げ込まれているらしく、現在はボランティアである男性が一人で(無料で)ゴミを片付けてくれているらしいが、やってもやってもきりがないと。
こちらの市長の悩みはこの建物をマフィア(Camorra)に買われたら・・・ということらしいです。
これだけのお金・・・マフィアくらいにしか払えないだろうって。

現在サイト上で建物を守る為署名を集めているようです。
Salviamo la Reale tenuta di Carditello
結果が出なくてもとりあえず行動を起こそうというイタリア人らしいやり方だなぁ、とちょっと感心したりして。

このニュースでう~んとうなっていたら、この後の地方ニュースの1番が私もこの日曜日に見に行くMaggio fiorentinoのAnna Bolenaでした。
今日がこちらDonizetti(ドニゼッティ)のAnna Bolenaの初日だったのですが、ここ数年もめていた劇場関係者のリストラを実行することが今日正式に決まったとか。
う~ん・・・
なんで新しい劇場建てたんだろうか???
確かにFirenzeは他の都市と比べると、劇場の質とか雰囲気とか劣ると思うけど、充分今までももので機能していたよね?こちらの工事も終了していないはず・・・
確かに大きな建設事業を立ち上げるとお金が周る、というのは分からないこともないけど。

昨日も言ったけど、お金持ちが道楽で宝探しをしていますが、そんなことに使うお金が有るんなら、今困っているところに回すべきなんじゃないでしょうか?
何度も言っていますが、この国には現在の国民の生活を守る力も、過去の遺産を守る力もありません。
じゃあ一体どうしたらいいのでしょうか???
こうして大切な文化を売り、食いつないでいくしかないのでしょうか?
イタリアがイタリアでなくなる日もそう遠くはないなぁ・・・と思ってしまう私に何かできること、有るのかなぁ???

P.S 後日あるブログを読んでいたら、前出の署名の話が出ていました。
そちらにはパドヴァの「スクロヴェーニ礼拝堂を守ろう」という件名が取り上げられていました。
私も署名、しようかな・・・



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