![]() | 動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか福岡伸一木楽舎このアイテムの詳細を見る |
☆私たちの言語構造や論理、科学的発想は、まだまだデカルト的機械論や要素還元主義の罠におちいっている。
☆しかし、本書はそこをあらゆる素材で乗り越える思考を展開している。この展開を体得できるのがこの本のすばらしさだ。中高生も十分に理解できる表現なのである。
☆美しい表現部分がある。紹介しよう。
秩序あるものはすべて乱雑さが増大する方向に不可避的に進み、その秩序はやがて失われていく。ここで私が言う「秩序」は「美」あるいは「システム」と言い換えてもよい。すべては、摩耗し、酸化し、ミスが蓄積し、やがて障害が起こる。つまりエントロピーは常に増大するのである。
生命はそのことをあらかじめ織り込み、1つの準備をした。エントロピー増大の法則に先回りして、自らを壊し、そして再構築するという自転車操業的なあり方、つまり「動的平衡」である。
しかし、長い間、「エントロピー増大の法則」と追いかけっこしているうちに少しずつ分子レベルで損傷が蓄積し、やがてエントロピーの増大に追い抜かれてしまう。つまり秩序が保てない時が必ず来る。それが個体の死である。
ただ、その時にはすでに自転車操業は次の世代にバトンタッチされ、全体としては生命は活動が続く。現に生命はこうして地球上に38億年にわたって連綿と維持され続けてきた。だから個体というのは本質的には利他的なあり方なのである。
「生きている」とは「動的な平衡」によって「エントロピー増大の法則」と折り合いをつけているということである。
☆そして、この「動的平衡」=“Dynamic equilibrium”とは弁証法と置き換えてもよいかもしれない。
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