「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法 (講談社文庫)茂木 健一郎講談社このアイテムの詳細を見る |
☆クリエイティブで夢をふくらませる子どもは、純真でかわいい。しかし、いつまでもそのままでいられるだろうか。ぎこちない自己表現や人間関係の作り方は、やがて洗練されて大人に成長していく。
☆それでも子どもの心を忘れない大人になりたい。アンもまた成長とともにそうなった。その生き様は、茂木健一郎さん自身が、「これは僕自身の物語だ」と言っているように、茂木さんにもあてはまる。
☆だから、「赤毛のアン」は、茂木健一郎さんの人生を表現する記号である。記号として一般化するや、どこか生きにくさを感じたり、教科書になじめなかったり、正解はひとつじゃないよなともんもんしていたりする人の生き方でもある。
☆このように、茂木健一郎さんは、「赤毛のアン」を人生そのもの、人間そのものとして受け入れているから、本書は、あるときは国際文化論だったり、シングルスクール論だったり、英語論だったり、友情論だったり、恋愛論だったり、両性具有論だったり、成長論だったり、またあるときは宗教論や哲学だったり、もちろん脳科学だったり、多肢にわたる論考が満載である。
☆しかし、重要な点は「内なる基準」の獲得だというオチではないか。大人になっても、ぎこちない人生を送れる人。茂木健一郎さんは、そういう人をクリエーターと呼ぶ。内なる基準を磨き続ける人、大きな尺度に脱構築していく人、つまり内なる基準を固定する壁の出現におそれおののき、対決し続ける人がそうだ。
☆そんな人に壁にぶつかっていく卵でありつづける村上春樹さんの例も登場する。