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保育士の「辞めたい理由」、1位は低賃金ではなかった -「人間関係」への不満が圧倒的に多い現実

2015-07-22 | いとすぎから見るこの社会-少子化問題
当ウェブログは、低所得に悩む保育士の待遇改善の重要性と、
事業者にピンハネされないよう給付付き税額控除の必要性を主張してきた。

それだけに、保育士を対象としたある最近の調査には大いに驚かされた。
保育士の「辞めたい理由」の第1位が低賃金ではなく、「職場の人間関係」だったのだ。

これは調査の主体が保育関連人材サービスの会社なので
雇用の流動性が高まった方が当該企業にとって好都合であること、
オンラインの調査だったのでネガティブな意見が強く出がちな傾向があることが
一定程度影響しているものと思われるが、それでも衝撃的ではある。

ただ、実際に民間企業の運営する保育所では「ブラック」な職場が多いこと、
公立保育所や幼稚園では江戸時代の士農工商のような正規と非正規の壁があることは
よく聞くので、強い不平不満が溜まっている状況であるのは理解できる。

しかし、待機児童の問題の陰に隠れて保育士の雇用の問題は後回しになりがちだ。
日本社会は一般に消費者の論理が強いので、どうしても有権者の関心も薄い。

職場の人間関係に対する保育士の不満が強いとなると、
所得に比べてどうしても改善が難しくなる。

離職率の低い保育所の補助金を引き上げて
離職率の高い保育所の補助金を引き下げること、
官庁もしくは役所が年に1度、直接保育士にオンライン調査を行って
事業者に保育所ごとの平均値をフィードバックして改善を促すこと等、
相当の労力と工夫が必要になるだろう。

同時に、所得の改善によって不満が緩和される可能性もあるので、
当ウェブログとしては引き続き給付付き税額控除で月数万は保育士の所得を引き上げるべきと考える。
(出生率も労働生産性も高い「先進国」北欧に比べて賃金が低過ぎるからだ)

▽ 出生率を急回復させた「先進国」デンマークは、保育ママでも日本の保育士より高収入



『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』(ケンジ・ステファン・スズキ,角川SCC)


前々から当ウェブログが指摘しているように、
族議員がのさばっている自民党の政権では保育士ではなく
福祉事業者寄りの政策になってしまうので、有権者が政権に圧力をかけることも重要だ。

「待機児童問題の改善も、黴のはえたドグマに浸潤された
 「保守退嬰」政党に期待する方が間違っている。
 本質は大衆受けを狙ったポピュリズムに過ぎない」

「小手先の誤摩化しに過ぎない安倍内閣の「早期解消プラン」のせいで
 保育士の求人倍率が跳ね上がって人不足が深刻化している。
 そして例によって根本対策を行わない厚労省は小出しの弥縫策ばかり」

「経済合理性から言えば、女性就業率を高めて労働投入を増やし、
 家事育児は集約化することが経済成長と税収増に結び付く。
 そうした発想が完全に欠けている「次元の低さ」が問題なのだ」

「保育士の賃金が低いのは次世代育成を軽視する
 日本の社会システムの問題である」

「社会保障予算を育児関連分野向けに確保すれば
 保育士の待遇改善など容易にできる。
 しかし実際には予算制約が強いであろうから
 次善の策として「給付付き税額控除」を保育士と介護士に適用することを
 当ウェブログは何年も前から提唱してきた」

「財源は、悪質な差別政策に他ならない配偶者控除の原則廃止と、
 安定職にありついた者の利権と化している退職金への控除縮小で充分確保できる」

そうした意味で、待機児童問題にばかり目がいきがちなメディアや有権者が、
保育士の雇用の問題にも気づいて構造的な改善を図ることが重要になってくる。
何しろ日本には、大勢の潜在保育士が能力を活かせないままになっているのだから。

↓ 参考

保育士の月給は全業種平均より10万円以上低い、給付付き税額控除の適用を-確実に雇用が増える成長分野
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9e67ae639fccb329366bbfde4028b066

日本の成長率が6%になる政策は「女性の北欧並み労働参加」- 税金の無駄の少子化対策白書は廃止せよ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d594f2169807f6331026c4f7689b7bea‎

日本のGDPが16%増える真の成長戦略は「女性雇用増加」- 韓国と同類の不平等さ、中国にすら負ける
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/3e998a613e089a435b2e5bfd8c374dce

▽ 高成長・高出生率のスウェーデンの特徴は、育児関連予算の多さと待機児童ゼロである





『スウェーデン・パラドックス』(湯元健治/佐藤吉宗,日本経済新聞出版社)


現役保育士が「辞めてやる!」と思う時(@DIME)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150620-00010006-dime-soci
”保育士や幼稚園教諭の人材紹介サービス「保育のお仕事」を展開する、株式会社ウェルクスは、保育士を中心とする「保育のお仕事レポート」の読者131人に、独自のアンケートを実施、働いていて思わず「辞めてやる!」と思った経験の有無について聞いた。調査の結果、「辞めてやる!」と思ったことがあると回答したのは、全体の96.9%で、ほとんど全員に近い人が、一度は仕事に大きな不満を抱えた経験があることがわかった。
 では、実際にどのような時に仕事を辞めたいと感じるのか。調査によると、その原因として最も多く挙げられているのが、「上司・同僚との人間関係上の問題」で63.9%、次いで「業務量や残業の多さ」が19.8%、「園長・施設長に対する不満」が16.7%。園長や施設長との関係性も含めると、実に80%もの人が、職場内の人間関係が原因となり、不満を持っていることがわかった。
 下記は自由記述回答。
●職場の上司からの度重なる言葉の暴力で、体調不良になり、体を壊してその職場をやめた。(20代女性)
●先輩からは指導ではなく、嫌味、批判ばかり。誰かしらが誰かの悪口を言っている。(20代女性)
●休みがない。仕事量も多く、いつも仕事に追われている。(20代女性)
●園長に言われた通りに仕事をして、次の日そんなこと言ってないと言われた。なにか問題が起きた時、あたし責任取らないから!と逃げた。(20代女性)
●残業手当がつかないのがキツい。(30代女性)
●給与が上がらない。(50代女性)
●保護者からの理不尽なクレームがあった時。責任をすべて押し付けられると辞めたくなる。(30代女性)

〔中略〕
■アンケート調査概要
・実施期間:2015年6月1日~6月15日
・実施対象:保育士(80.2%)・幼稚園教諭(10.7%)・その他保育関連職(5.3%)・その他(3.9%)
・回答者数:131人(平均年齢:32.6歳)
・男女割合:女性/97.7%・男性/2.3%
・回収方法:facebookおよびLINE@で告知”

こちらが問題の調査。事業者の利害関係のバイアスと
サンプル数も少ないのでどこまで当てにできるかは何とも言えないが、
そういった問題は確かに聞くので、放置する訳にもいかない。


保育士に聞く女性の多い職場での処世術(@DIME)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150625-00010010-dime-soci
”保育士や幼稚園教諭の人材紹介サービス「保育のお仕事」を展開する、株式会社ウェルクスは、同社が運営するサイト「保育のお仕事レポート」にて、読者を対象に行ったアンケートに基づいた独自のコンテンツを発表した。これは主に保育士や幼稚園教諭として働く読者さまに対し、女性が多い職場で働くことの大変さについて伺ったもので、アンケート結果によれば、回答者の全員、100%が「女性が多い職場で働くことに、ストレスを感じた経験がある」と回答。また女社会のストレスが原因で辞めたいと思った経験の有無に関しても、95.9%が「辞めたいと感じたことがある」と回答する結果になった。
 今回は「女性が多い職場で働くことに、ストレスを感じた経験があるか」73名に聞いたところ、なんと回答者の全員が「ストレスを感じたことがある」とという結果に。
〔中略〕
 女性ならではの人間関係の難しさが、離職に直結してしまう可能性も十分あると言えそうだ。
 では、実際にストレスを感じるのはどのような場面なのか。寄せられた意見を一部紹介しよう。
・女は感情の起伏が激しいからプライベートで何かあると八つ当たりみたいになるし、充実していればご機嫌だしで面倒くさい。(30代)
・仲が良いように見えて実は悪かったり…変に気を使う。(20代)
・当事者がいないときに、その人の悪い噂を持ちかけられる。自分がいないときに言われていることもある。(40代)
・大奥のような人間関係。(30代)

 一方、ストレスに対する具体的な対処法や予防法についてもアンケートを実施。集まった意見をタイプ別に分けたところ、「深入りはせずに仕事と割り切る」ことで乗り切っているという意見が最も多く、38.4%。次いで「休日など職場の外でストレスを発散する」という意見が20.5%となった。男性保育士が増えてきたとはいえ、まだまだ女性の比率が高い保育業界では、女同士ならではのストレスを抱えている人も多く、長く働く上では、こういったストレスに対処する自分なりの工夫が必要であることが伺える調査結果となった。

■調査概要
・実施期間:2015年6月12日~6月22日
・実施対象:保育士:78.1%・幼稚園教諭9.6%、その他保育関連職:2.7%・資格保有者(離職者など)9.6%
・回答者数:73人
・平均年齢:32.5歳
・男女割合:女性/98.6% 男性/1.4%・回収方法:facebookおよびLINE@で告知”

保育士の職場は、介護士以上に女性ばかりなので、
こうした問題が起きがちであることはよく聞く話だ。
(が、それにしても本音が炸裂し過ぎてはいるが)

そしてこれは、女性活用というスローガンを掲げている今の日本社会全体にも言える。
必ずしも政策ばかりではなく、当事者同士にも問題が隠れている可能性がある訳だから。
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