mukan's blog

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ノザーン・テリトリーの旅(3) 乾きと水に気を配る旅

2015-09-20 09:58:57 | 日記

 ノザーン・テリトリー(NT)の人口は20万人、準州の首都ダーウィンに、その65%が集中している。南部の中心都市アリス・スプリングスの人口は27000人。にもかかわらず、NTはどうして、さびれているという印象を与えないのだろうか。半月の間通過しながら、なんだ、これなら、日本の人口が半減しても何も心配ないじゃないか、と思わないではいられなかった。それくらい、彼らの暮らしぶりはおおらかに豊かに見えた。ダーウィン以外の家屋のほとんどは平屋、街のつくりも中心街はそれなりに大きく、公園が各所に設けられゆったりしている。人々はジョギングをしたり散歩を楽しんだりしている。ビジターセンターや博物館、記念館も設けられ、たいていは無料。アリス・スプリングスの有料の植物園や野鳥の観察フィールドも観光客がけっこう入っていて、見ごたえのある鷲鷹ショーを見せて楽しませてもいる。

 

 500kmもの間に3箇所しか人が住まっているところがないという原野に住む人たちは、何を頼りにしているであろうか。まず乾燥帯に住む人たちは、水を確保できる(洪水に脅かされない)場所に腰を据える。私たちが通過した町のあったところも、Pine Creek、Timber Creek、Daly Water、Tennant Creek、Wyclife Well、Barrow Creek、Alice Springsと水にまつわる名が冠されている。creekというのは「用水路」のように思っていたが、こちらでは小さな川ほどの意味らしい。むろん乾季であるから、私たちが訪れたときには干上がっているcreekが多かった。ことにNT第二の都市Alice Springsの大きなトッド川の川床は年中干上がったまま。そこで行われる年中行事のボートレースは、ボートをかついで競争するというものだと聞いた。それほどに、ここに住む人たちにとって「水」は不可欠の自然なのだ。でも、(洪水に脅かされない)と付け加えたのは、道路のところどころに「floode way」という標識が置かれ、推移を示す目盛りを入れた白い標柱が立てられていたからだ。雨季の降り具合によっては冠水して、車の通行に支障をきたすのであろう。にもかかわらず、5月頃から11月頃までの乾季の間に水はすっかり干上がり、名称も「砂漠」と名づけられたところが多い。上述のアリス・スプリングスの有料公園は「Desert park」であった。深い井戸が掘られ風車が強い風に回わっている。遠方からでもそれは見え、水を汲み上げているのだとガイドが説明してくれた。今は電気で汲み上げることもしているようだ。街中のところどころにはスプリンクラーが動いていて、水をそれなりに撒いて、芝地は青々としている。

 

 乾燥帯と熱帯雨林の端境に当たる町・キャサリンのスーパーマーケットには、豊富な新鮮野菜が並んでいた。また私たちのコックでもある運転手のピーターは、毎食、葉物の生野菜やトマト、キュウリ、果物(リンゴ、オレンジ、バナナ、パイナップル、マンゴー)を出してくれた。それらはどこで生産されて運ばれてくるのだろうか。水さえ確保されれば、陽当たりと気温は(暑くなりすぎることを別とすれば)申し分ない。あとは土質が適当なのかどうかわからないが、じつは乾燥帯で野菜を栽培している気配を、ほとんど感じなかった。目に入らなかっただけなのか、適地生産によって輸送に頼っているのか。ただ、交通網と輸送力の強烈さからみると、(いまは)交換に依存しているというのかもしれない。トマトの値段だけチラッと記憶に残っているが、1kgが5豪ドルであった。日本のそれとあまり変わらない。だが一般的に物価ということについて言えば、日本より格段に高いという印象を持った。カップヌードルが3豪ドル、水は(町中の小売店で)500ccのペットボトルが4豪ドル、(スーパーマーケットで)10ℓをひとつのビニール袋に入れた紙箱ケースが5豪ドルだった。350ccほどの缶ビール30缶が30豪ドルというのも目にしたから、こちらは日本の安売り店と変わらないか。もっともレストラン(やパブ)では、ビールは6豪ドルから9豪ドル、これも日本とさほど変わらない。水に関しては格別扱いという感じがした(レストランなどでは、要求すればお水はサービスしてくれたが)。

 

 ただ、水道の水をそのまま飲むことはしなかったが、どこであったかホテルの「説明書き」に「飲んでも害はないが沸かして飲むことをお勧め」と書いてあった。また、カカドゥ国立公園で宿泊したリゾートの水は(口を漱ぐときに感じたのだが)少し口中でぬめるような感触があった。塩分が混じっているのであろう。ここの標高は20mほど、後で訪ねた近くのサウス・アリゲーター・リバーの標高は5m。120km北のチモール海に注いでつながっているというから、満潮時には潮が上がってくるのではなかろうか。しかし、いつもの海外の旅では「水当たり」とでも言おうか、口を漱ぐだけに使っていても、3日目くらいに下痢に襲われることがあったが、今回はまったくそういう不安を感じなかった。「害はない」というのが本当のところで、案外「水が合う」のかもしれない。

 

 何しろ真夏の日本から訪ねて行っただけに、「熱中症」には気を使った。まして乾燥帯と聞いてきた。朝は12度ほど(もっとも冷え込んだのはアリス・スプリングスの朝6度)というが、日中の最高気温は35度を超える。陽ざしが当たるところでは、40度に近かったのではないか。でも日陰に入るとホッとする。湿度が低いから凌ぎやすいが、その分、身体からの蒸散が多い。自ずと水不足になる。私は便秘になっていないかと、毎朝気を使った。毎日10時間ほど歩きながら、あるいは車の中で、「水」を飲んだ。山歩きと同じで、水を手放せない。おかげで何とかしのいだ。それだけ水を飲み、さらに夕食にビールを飲んでも、ほとんど夜中に起きることなく過ごしたのは、やはりぎりぎりの水分補給だったからではないかと思っている。

 

 羽田に降り立ったとき、折からの雨もあって、むっとする空気の膜が身体を包んだのを感じた。ああ日本に帰って来たと、懐かしくさえ思ったものであった。(つづく)


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