フィールズ国際特許事務所 代表弁理士ブログ

フィールズ国際特許事務所(FIELDS IP Attorneys)の代表弁理士が知財を中心に日々を綴っていきます

EPOの進歩性検討プロセスのtips

2017-01-12 17:07:56 | 欧州実務

昨晩、弁理士会派主催の研修会「欧州における進歩性検討プロセスとドイツ特許制度の概要」があり、出席してきました。講師は日本弁理士で欧州弁理士でもある長谷川寛先生です。

欧州進歩性実務の再確認を目的にして参加したのですが、日本実務を意識したポイントをついた説明は大変参考になりました。以下、参考になった点を2つほど記載します。

技術的効果が実施例で示されていない態様がクレームに含まれていると日本ではサポート要件違反や実施可能要件違反が通知されることがあります。一方、欧州では、(発明にもよりますが)サポート要件違反や実施可能要件違反ではなく、進歩性検討プロセスで技術的課題が構築できないとして、進歩性なしの拒絶理由が通知されます。この拒絶理由は追加実験データを提出することで解消することがあるのですが、データ後出しを認めるのはフェアではないのでは、と思っていました。この点、長谷川先生は、技術的課題は主引例との関係で客観的に定められ、審査官により認定された課題自体後出しなので、データの後出しを認めないとフェアとはいえない、という説明でした。

ちなみに、欧州における進歩性の検討プロセスは「課題解決アプローチ」により行われ、その中には「技術的課題」の確定というステップがあります。そこではClosest Prior Artとの相違点に基づいて本発明の技術的特徴(効果)が認定され、それに基づいて客観的な技術的課題が認定されます。技術的課題は、明細書に明示されていなくても課題として認定されることがあります。欧州における進歩性検討プロセスの枠内では上記のような後だしの問題点は意識されていないということでしょうか。

もう1点、日本では新規な課題を設定したこと(課題設定の困難性)が進歩性主張に効果的と考えられています。日本特許庁審査基準にも「請求項に係る発明の解決すべき課題が新規であり、当業者が通常は着想しないようなものである場合は、請求項に係る発明と主引用発明とは、解決すべき課題が大きく異なることが通常である。したがって、請求項に係る発明の課題が新規であり、当業者が通常は着想しないようなものであることは、進歩性が肯定される方向に働く一事情になり得る。」(第III 部 第2 章 第2 節進歩性、3.3 進歩性の判断における留意事項、(2))と記載されています。この点、長谷川先生によると、EPOでは課題設定の困難性に関する記載がガイドラインから削除されたことなどから、欧州では近年はこの手の主張はうまくいかないとのことでした。客観的な技術的課題の認定という検討プロセスから考えても、欧州では本発明独自の課題を主張する余地はそれほど大きくはないという印象を受けました。

ここ10年ほどで欧米の現地事務所で活躍される日本弁理士が増えました。それに従って、日本語の現地実務情報も格段に増え、日本語で意見交換できる機会も増えました。有難いことです!

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