先日、特許異議申立の状況をブログ記事として投稿しましたが、異議申立率が低くとどまっている理由について知人と話す機会がありました。意外と多かったのが特許庁の審査内容は以前ほど悪くなく異議申立したくなる案件が少ないのではないか、というものでした。ひょっとすると、と思い特許庁HPの「特許審査の質についてのユーザー評価調査報告書」の平成27年度版(平成28年6月発行)を見てみると以下のような調査結果が載っていました。
「平成27年度 特許審査の質についてのユーザー評価調査報告書」(平成28年6月)、要約ii頁、図i-2より、URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/h27_shinsa_user/h27_houkoku.pdf
なんと4年連続で満足度(満足+比較的満足)が上昇しています!2003年ころの統計がないので旧特許異議申立制度のときの満足度との比較はできませんが、おそらくは2003年ころの特許審査の質に対する評価は上回っているのだと思います。
上記調査の質問項目(報告書8頁)をみると条文の適用が評価対象となっているのですが、その他にも拒絶理由通知の記載内容、判断のばらつき、サーチ内容など、特許庁の審査の質そのものが評価対象となっており、判断基準の緩さや特許の取得しやすさが直接満足度と結びついている訳ではないようです。すなわち、報告書の調査結果によると審査に対する信頼度が上昇していることになります。審査内容が妥当でばらつきがなく、自社と公平に扱われた上で他社が妥当な範囲で特許を取得しているのであれば、それを是とする一定の傾向が出てもおかしくないでしょう。
ちなみに他人の出願案件の審査についての満足度についても別途調査がなされており、その結果は、満足度(満足+比較的満足)=8.2%で上記満足度を大きく下回っています(報告書22頁)。しかし質問内容(報告書67頁)を見ると「他者の出願案件の審査についてどのように感じていますか。」となっており、審査結果に対する印象をダイレクトに聞いています。一般的には他者の審査結果には皆さん厳しい意見になりがちなので、不満足=異議申立という構図には必ずしもならないように思います。
以上、まとめますと、特許異議申立率の伸び悩みの理由として情報提供制度への普及と異議申立手順の複雑さを先日のブログ記事で取り上げましたが、特許審査の質に対する満足度上昇も3つ目の理由として挙げられると思います。
ただ、新しい特許異議申立制度が施行されてからまだ1年数か月しか経過していません。上記3つが原因とは即断できません。今後の特許異議申立数の推移や他の要因を注意深く見守っていきたいと思います。