試験・身分制度の根深い害

~現代の教育について分析しています~

学習指導要領を変えても教育現場が変わらない理由①

2017年01月25日 | 日記

●15歳までは世界一、日本の教育
【三宅義和・イーオン社長】鈴木先生は文部科学副大臣時代にも多くの政策提案をなさっています。なかでも産学共同で大学生を鍛えて人材育成する枠組みを構築しようとしたこと、そのために大学入試改革に非常に積極的だったと記憶しています。

【鈴木寛・文部科学大臣補佐官】ご存知のように、小中高というのは学習指導要領に基づいて教育が行われているわけです。現行の学習指導要領には、その方向性が出ていますが、大事なキーワードは思考、判断、表現です。それから、主体性、多様性、共同性と、こういう2つの方向性で2010年代はやってきました。それが、小学校、中学校においては割とうまくいっています、

例えば、12年にOECD(経済協力開発機構)の「PISA調査」。これは3年に1回OECDが15歳向けに行っている国際学力テストで、21世紀型学力を問うものです。暗記力や反復力ではなく、思考力とか判断力を見るテストだと考えてください。それで日本はどうかというと、03年あたりは非常に低迷していました。そのため“PISAショック”という言葉があったぐらいです。

私も副大臣になりまして、いろんな提言をしてきたつもりです。そのいくつかは施策となり、学校の現場はもとより、家庭教育、民間教育ともコラボレーションしてきたという経緯もあります。それぞれの立場から日本の子どもたちを一生懸命育てていただいたお陰で、12年にはPISAの科学的リテラシーで34カ国中1番、読解力1番、数学2番、総合1位となり、日本は先進34カ国中、15歳段階でトップに返り咲くことができました。

【三宅】すばらしいですね。本来なら、そういうニュースはもっとドンドン広まっていいはずです。

【鈴木】そうなんですよ。日本のマスコミは悪い話ばかり伝える(笑)。だから、私がキャンパスで学生に「日本の15歳は学力が高いのか低いのか?」と聞くと、みんな「低い」って答えるんですね。しかし、実際はそうではありません。日本は、トップ奪回を目標に頑張って、そこまできました。ただ、課題もあります。それは学ぶ意欲、あるいは自己肯定感、これがいつもOECDの34カ国中ブービー。下から2番目です。

【三宅】それはちょっと悲しいですね。最大の理由は何ですか。

【鈴木】これはやっぱり読書です。いま、小学生の96%は本を読みます。そういう指導をやってきました。学校では「朝読」という取り組みを相当しっかりやりました。不読者率という言い方がありますが、1ヵ月に1冊も本を読まない子どもは、4%を切ります。ところが、高校生になると5割が不読者になってしまう。

これは本来なら逆ですよね。読むことは、書くことにつながり、話すことにつながり、聞くことにつながると、私は考えています。本を読めば、それを感想文を書きますね。あるいは読んだ後に、クラスでみんなで意見交換をしますね。そういう意味で、やっぱり読むということはものすごく大事と言っていいでしょう。

15歳までは世界一の日本の教育が、高校になるとかなりそこで伸び悩み、おそらく大学では、もっと残念なことになっています。つまり、15歳の“金の卵”を高校・大学で孵化させ、雛鳥から立派な成鳥にさせられない。その可能性を伸ばせていないどころか、それを潰しているということが、わが国の高等教育です。だから、高校と大学をやっぱり集中的に改革しなきゃいけないというのが、私の現状認識です。


●マークシートは丸暗記力と反復力しか問えない
【三宅】今年8月5日には、次期学習指導要領の改定に向けて、中央教育審議会の中間答申が出ていますが、そうした理解なくして、まさに大学入試改革だけ俎板の上に上げてもダメですね。

【鈴木】個別の高校教師あるいは校長を見てみると、学習指導要領が強調する思考、判断、表現の向上に、すぐれた指導をしている人や学校があります。それにNPO団体なども含めて、意欲的に取り組んでいるのですが、なかなかメインストリームにならない。それはなぜかというと、要するに文部科学省の指導よりも影響力が強いものあるということですよ。それが現在の偏差値重視の大学入試にほかなりません。

よくマスコミでも取り上げられる「スーパーサイエンスハイスクール」という学校があります。これはすばらしい試みで、おそらくここから日本の科学技術を支える人材が輩出されることは間違いありません。ところが、そこの職員会議では、校長と教頭がいつも吊し上げに遭ってしまっている。「スーパーサイエンスハイスクールなんかやっていたら偏差値が上がらない」という理由からです。

このように、いくら学習指導要領を変え、高校ですばらしいモデル的なことをやっても、それが大きな動きになっていかないということで、やっぱり大学入試と一体的に変えていかなければいけないということがわかると思います。

【三宅】職員会議の光景が目に見えるようです。

                         ②へ続く・・・


井垣義稀
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