歩かない旅人

 彼がなした馬鹿げたこと・・・彼がなさなかった馬鹿げたことが・・・人間の後悔を半分づつ引き受ける。ヴァレリー

『和式リベラル』の偏った思想傾向。

2016-01-12 10:47:41 | 単行本の抜粋から

 

  

 

 昨年の11月ごろ、何の気なしに面白そうなので買ってみました。『リベラルの中国認識が、日本を滅ぼす』という題名の本です。産経新聞出版部からの発行です。

   

 著者は石平氏と有本香氏の対談形式になっている、全243ページの、同年代の著者です。二人とも硬派の論客として、テレビ番組や、ネット発ユーチューブ系テレビの政治関係の番組に、保守派として出ているかなりな有名人です。

   

 本の帯には、「経済崩壊、政情不安、(海)への拡張、AIIBという対日宣戦布告…激変する隣国」。【「中国の脅威を煽るな」という言説をこそ疑え!】。なぜ彼らは「中国の代弁者なのか」、≪日中関係とプロパガンダ≫の副題も付いています。

 二人が最も力を入れて話していることは、日本のチャイナに対する政治家や学者やメディアに対するおかしな関係を、鋭く切り込んでいます。今まさに旬の論者とも言えます。

 その前に。有本氏が46ページでこのリベラルという言葉の定義をしています。虎の門ニュースというテレビ番組がネットで流されていますが、『和式リベラル』という言葉を使いだしたのも有本氏です。

   

 ♥有本・・・いわゆる「リベラル」とは、リベラリズム(自由主義)という政治思想から来てると思うんだけど、現代ではかなり広範囲な意味を含んでいますね。

   

 国柄が反映されるため、各国で様相も異なります。とはいっても、日本の『リベラル』は、他国のそれと大きく違う。

 まず、中国の人権問題にこれほど関心の薄いリベラルは、他の先進国に例がない。一部の方々はチベット支援もしているけれど、それでも「中国を決して非難せず怒らせないように」が大前提のユニークな支援活動です。

   

 ♠石・・・こんな異様な状態が問題にされないというのは、にほんの「リベラル」全体において基本的な人権感覚がマヒしていると言う事でしょう。

 言葉の暴力を容認するような「リベラル」はリベラリズムと言えるのか。日本の「リベラル」はすでに死んでいる。

 ♥有本・・・日本のリベラルは、中国問題全般への認識についても同じく「死んでいる」。現実を見ようとしていないですからね。

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 このように両者はリベラルに対して考えています。

 ちょこっとだけ3ページ半くらいを抜粋してみます。かなり面白い本です。青山繁晴氏が年末に産経新聞に、書評を載せたところ、売り上げが急ピッチで伸びているそうです。

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 「リベラル」は常に間違っている(92ページ)

  ♥有本香(以下有本)・・・日本のリベラルは、70年間ずっと同じ出し物、同じ茶番を繰り返しています。

 ♠石平(以下石)・・・戦後も70年経ったから、彼らの主張は全部、日本のためにならなかったと歴史が証明している。これは確実です。かって自衛隊に反対した。安保に反対した。

   

 PKOに反対した。最近では特定秘密法に反対し、安保法制に反対した。長期的な視点から見れば、彼らが反対した物事は、すべて日本の平和と繁栄につながっている。

 ♥有本・・・それを言うならば、戦前から朝日新聞が唱えたことの逆をやっていれば、日本は間違わなかったと言う事でしょうね。

   

 ♠石・・・なるほど。もし、日本の「リベラル」だと言う人たちが間違った主張を一度だけしたと言うのなら、後で軌道修正すればよい。でも常に間違っている。中国との関係でいえば、常に中国を擁護する。

 そういう人たちを僕は「工作員」だとは言わない。でも客観的に見て、日本の中に日本語を話す人たちだけれども中国のために働く組織されたものがあるかのようです。

 あたかも生き物のように、新聞でもテレビでも、実際の社会でも、おそらく官僚の世界でもそれは生きている。この物の正体が僕は分からない。

 ♥有本・・・繰り返しになりますが、日本にとって中国は永遠に『大柄の美女』なのです。

 ♠石・・・歴史的に見て、日本は中国と離れた時だけ安定が生まれている。日本が生きていくには、この『大柄の美女』に煩わされないこと。この悪女から離れることが重要。

 ♥有本・・・でも、この悪女が目の前に現れると、どうしても心が騒いでしまうらしい。

 ♠石・・・日本がずっと繰り返してきた歴史ですね。

 ♥有本・・・例えば、加藤紘一さん(元自民党幹事長)などと話してみると、分かることがあります。あの方は外務省のチャイナスクール出身です。

   

 利権もあるでしょうが、中国に心底惚れているんです。中国に惚れた女がいるのではなく、中国と言う存在が、惚れた女そのものみたいな感じ。

 ♠石・・・そういう感覚が結局、無分別に彼の政治行動を支配する。実際の彼を動かす。

 ♥有本・・・「中国については、悪いところも充分、分かっている」みたいに言いつつ、「でも」となる。

 よく「売国奴」だとか、「中国からカネをもらっている」と批判する人もいますが、ご本人の言を直接聞いてみると、カネだけではない。気持ちが入っています。

♠石・・・カネをもらう方が、まだ利口です。カネをもらっていれば、貰った分しか働かないですからね。一方、カネをもらわない人は、無制限に、全身全霊をかけて中国のために奉仕するのだから、さらに質(たち)が悪い。

   

♥有本・・・カネの分だけ働くのはビジネスですからね。冷徹だけれども、その方がまだ始末がいいです。しかし日本には中国に対して、「憧れ」と「上から目線」と言う相反する感情が常にある。

石さんは以前、「日本人というのは中国に対して、元中国人の自分でも信じられないくらいの特殊なフィルターを持っている」といっていましたよね。「俺、そんな美しい中国は知らないよ」と。日本人のフィルターで見ると、中国は素晴らしくなる。

   

♠石・・・そうそう。

♥有本・・・これも戦前から。日本人は、本当の圧政や抑圧、虐殺を知らないというのも影響しているでしょうね。大陸で起きていることに想像が及ばない。

 日清戦争で遭遇するまで、目や局部をくり抜かれたり、全身を切り刻まれるという大陸流の殺され方も、日本人には遠いものだったわけですからね。

   

日本の『中国史』は共産党史そのもの

♠石・・・先日、中国共産党の歴史観がどの程度、浸透しているかを調べてみました。例えば、1980年代までに日本の大出版社から出た中国史、特に近代史は、どの業者が書いたものでも「中国共産党史」そのものです。

   

 読めばすぐ分かる。すべて中国共産党の視点から、中国の近代史をとらえています。この現象がやっと少し修正されるのは、ベルリンの壁が崩壊した冷戦後。

♥有本・・・朝日新聞の本田勝一氏が1971年の中国に行き、後に『中国の旅』(朝日文庫)としてまとめられる連載を朝日新聞紙上などでおこないました。

   

 そこで、「南京事件」などの、現在、中国側が日本糾弾に使っている問題を日本人に向けて報道した。・・・・・・

 

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 今でこそ自由主義は、欧米から渡ってきた思想として日本でも、それ相応の価値観をもって取り入れられていますが、昔の日本では、自由という意味を自分勝手、我儘、奔放、野放図と言うような意味でとらえられていました。

 現在の日本でも、欧米とは違った意味合いが多く含まれています。政府や日本国に従わない自由、従わないどころか反抗するのも自由、共産化するのを望むのも自由とはき違えています。

 実にいびつな「リベラル」がまかり通っていて、俺はリベラルだと、良い事をしていると勘違いしている人さえいます。有本氏の言う『和式リベラル』とは、よく言った言葉です。


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