♪Tin Pan Alley♪

50~70年代のロック・ポップス、ソフトロック周辺についてのブログです

A Date with the Everly Brothers :US #9 /UK #3

2006-02-27 | 1曲ずつ一言
The Everly Brothers
1960.10

ムチャクチャお勧めアルバムですソフトロックだとまでは言わないですが、そっち系ファンは一聴の価値有り

前回のアルバムが、同じ年の4月。同日発売されたシングル⑫が世界中で大ヒットしたのでワーナー・ブラザーズ・レコードは、まさに起死回生だったでしょうね(笑)。

この60年は、古巣ケイデンスが“残り物”を次々とリリースした年でもあります。
以前ここに書きました。
すると、この年は完全に“The Year of The Everly Brothers”ですよね~。全米トップ10が4曲全英トップ5が3曲

この年、例えばジョン・レノンが20歳、ポール・サイモンが19歳、ブライアン・ウィルソンが18歳、ジョージ・ハリスンが17歳

みーんなでエヴァリー・ブラザーズの真似をして、コーラス・ワークを成長させていったようですね~

・・・ちなみに、当のご本人たち、ドンが24歳で、フィルが21歳です(笑)。若っ。

しかも、この60年の大人気ってのは大事

バディ・ホリーが59年2月に、エディ・コクランが60年4月に亡くなります。エディと同乗していたジーン・ヴィンセントも重傷。チャック・ベリーも59年12月に売春容疑で逮捕されます。リトル・リチャードも行方をくらましていた時期だったかと。

2年間の徴兵期間を終えたエルヴィス・プレスリーが戻ってきた60年、若者向け音楽の頂点にいたのは、エヴァリー・ブラザーズだったのでしょう

トラック・バイ・トラック

①Made to Love P.Everly
このアルバム全体の良さ、その決定打を放っているのがこの1曲って思ってます
アルバムの出だしに相応しい(歌詞もアルバム・タイトルに合ってる)、飛びっきりキャッチーなメロディは何とフィルの自作

演奏も歌も、歯切れの良さが実に見事なアップ・テンポで、一回目の「Girls×3 were made to love」が入る瞬間なんて、“あ、アルバムが始まるな”って気分にさせてくれます新時代です
エコーたっぷりのエンディングも印象的ですね。

こんな良い曲をシングル・カットしてないってのは、、、実は色々問題があるようです、この頃。

②That's Just Too Much D.Everly - P.Everly
兄弟で共作した割りには、ベチャッとしっとり始まるのですが(?)、サビはさすがに抑揚があります

グッとテンションを上げてから色っぽく丁寧に歌うってのは得意ですね

③Stick With Me Baby M.Tillis :US #41
最っ高に心地良い前奏出色の出来です。
B面としてシングル・カットします。サビが違う別ヴァージョンも出回ってまして、そちらも魅力的です

ケイデンス時代と比べ、ワーナーでは録音にかなり時間を割くことが出来たようで、エコーの具合と良い、丁寧に録られた印象

作者のメル・ティリスは、エヴァリー兄弟の友人でもある、70年代カントリー界の大物この頃はまだ他人に曲を書くのが中心だったようです。

④Baby What You Want Me to Do J.Reed
こってりしたブルース。あんま好きではないですが、彼らはライヴでもアンコールで使うなど、結構お気に入りのようですね

かなりの方々が取り上げる、クラシック曲のようです。
トニー・リヴァース&ザ・キャスタウェイズのは大好きですあれは爽やか。

⑤Sigh, Cry, Almost Die D.Everly - P.Everly
自作曲の量が増えてて嬉しいです…これはリズム隊のキレの良さに助けられている印象も

声だけ残してフェイド・アウトしていく録音スタイル、ブライアンも好きですよね。関係あるのかな?

⑥Always It's You B.Bryant - F.Bryant :US #56
シングル⑫のB面。
誰かが、“前奏が「イン・マイ・ルーム」を感じさせないこともない”って言ってたけど、それは鋭いなるほど。

ブライアント夫妻お得意のバラード・メロディを、エコーがかかった歌声に、エレクトーン(?)や鐘の音の効果で、ふんわりと仕上げてます

エヴァリーズの音作り、この頃は大変に凝っています
ちなみに、バカラックやスペクターが、スタジオ・ワークの可能性を広げだすのは、61年辺り。

⑦Love Hurts B.Bryant
泣きそうになるメロディって、いくつかあるのですが、本当に目に涙が浮かんだのは、現時点でこれだけ
ポップス・ファンでこの曲をまだ聴いたことない方、是非是非

ってな訳で、恐ろしいほど美しいメロディをしてますエヴァリー兄弟の歌い方も、怖いくらいに上手い。“恋愛なんて良いことない”って気分になる(笑)。

中間部のフィルの高音パートがたまらないですし途中から入る、ピチカートしているギターも雰囲気が合ってます。

グラム・パーソンズとか、結構カヴァーも多く、ナザレって連中が大ヒットさせてます

・・・エヴァリーズもシングル・ヒット狙いたかったらしいです
が、当時はどうも、マネージャーのウェスリー・ローズさんと、意見が合わなかったみたいなんですよ。
彼は、エヴァリー兄弟に俳優になってもらいたかったらしく、“シングルで出したい”と文句を言われた腹いせなのか何なのか、ウェスリーはすぐにこの曲をロイ・オービソンにカヴァーさせてます

エヴァリー・ブラザーズの思い入れも強いようで、後にアルバムでセルフ・カヴァーライヴでも取り上げます。

⑧Lucille A.Collins - R.Penniman :US #21 /UK #4
リトル・リチャードの代表作。“ルッシーッアッ”って歌い方で有名この超有名なリフ、発明したのは誰なんでしょう?

しかししかし、さすがカヴァーの名人エヴァリーズ、原曲の強烈なイメージにちっとも縛られない、素晴らしい録音をしてくれました

何が凄いって、ナシュビルのギタリスト8人で同時に同じフレーズを弾かせてます凄いよ、その発想
おかげで独特のエコーたっぷり

この後の「ルシール」のカヴァーは、明らかにエヴァリーズのバージョンってのもちらほら。
特にイギリスでは「ソー・サッド」と両A面扱いで、大ヒットホリーズの「ルシール」は絶対にこちらです

⑨So How Come (No One Loves Me) B.Bryant - F.Bryant
ビートルズが63年のBBCで演った曲確かにとってもエヴァリー・ブラザーズな曲

「アッハ」や「オーイァー」も出ます(笑)。
ビートルズは低音パートを前面に出してましたかね。

⑩Donna, Donna B.Bryant - F.Bryant
子牛が売られるやつではないです

陽気でキャッチーな前奏が良かったのか、全く同じ録音と思われるものを、『ゴーン×3』の1曲目で使ってます。

⑪A Change of Heart B.Bryant - F.Bryant
これまた名バラードこの曲の位置が良い

⑫Cathy's Clown D.Everly - P.Everly :US #1 /UK #1
英米でミリオンという、彼ら最大のヒット曲印象的なドラムの前奏が頭から離れなくなる(笑)。

カッコ良くもあり、可愛らしくもある、ミディアム・テンポの傑作これが自作ってのがまた嬉しいよなぁ、正直。

特に、このコーラス・ワークは、若き、ビートルズやビーチ・ボーイズ、サイモン&ガーファンクルらにとって、思いのほか大事だったのではないでしょうか???
と言うのも、凄く簡単に再現出来て、決まるととてもカッコ良いのです

「Don't want your」まで ユニゾンで歌ったら「lo-------ve」を一音でひたすら伸ばす人と、「lo-uh-uh-uh-uh-ve」と順に下げる人がいればOK(笑)。←合ってます?

・・・お気づきかと思いますが、ビートルズ「プリーズ・プリーズ・ミー」なんかはこのパターンですよね
ジョージ・ハリスンは“エヴァリー・ブラザーズだけは毎日聴いていた”なんて言ってたけど、実際に歌ったりもしてたんでしょうね~

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さて、アルバム自体はここで終わりますが、同時期のシングルでアルバム未収録のものを紹介します。

1961.1
・Ebony Eyes J.D.Loudermilk :US #8 /UK #1
エボニーは、黒色を誉める言葉ですよね。
黒い目が素敵な恋人が乗った飛行機、1203便を空港で待っていると、墜落のアナウンスが入るという、あまりに悲しい歌詞です

でも相当ヒットしてますよね~。カントリー・チャートも、R&Bチャートも上位に入るという、彼らの代表曲。

間のトークの上手さ、彼らの器用さを感じます。

・Walk Right Back S.Curtis :US #7 /UK #1
ソニー・カーティスの出世作は、飛びっきりの名ポップス愛くるしいとしか言いようがないです(笑)。この曲が一番好きって方もいるようで

歌詞が一番分しかないんですが、メロディの良さと、ギター&ピアノのリフの可愛らしさ、サビのリズム隊の切れ味(ドラムが最高)、どれをとっても完璧な名曲

この2曲、イギリスでは両A面で1位

この時期のシングル、メロディもさることながら、仕上がり加減が非常に先進的で、大ヒットばかりだし、良いこと尽くめではあるのですが、あれだけ自作曲の出来が良いのに、シングルがライターさんの曲ばかりってのは悲しい

エヴァリーズは元々、曲を書くのが好きではないらしいのですが、ここにもウェスリー・ローズさんとの確執があるんだとか
彼は、とにかく一刻も早くエヴァリー兄弟に俳優の道を歩ませたかったようですねぇ。

ちなみに、当時は映画>音楽って力関係だったとか。お金になるには、エルヴィスのように映画ビジネスが必要だったんでしょうね~。

そしてこの確執、良くない方向に進んでしまい、エヴァリーズ受難の時代が始まってしまいます

余談ですが、色んなアーティストさん、状況が悪化する直前のアルバムって、何か良い作品が多い気がする


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