先月取り上げたセブン・イレブンの訴訟につきまして、YAHOO! ファイナンスに記事がありましたので、ご参考までにご紹介します。
セブン-イレブン 廃棄商品へのロイヤルティーの是非 控訴審でコンビニオーナー初勝訴
エコノミスト編集部
松山 徳之
経済が長期低迷を続けるなかで、コンビニはリストラや商売の不振に悩む人たちの「希望の星」である。しかし、オーナーとして店の経営を始めると、コンビニ本部の事前説明では想定外の事態に遭遇する。本部を相手に提訴しても、これまではオーナー側の連戦連敗。契約前の説明と実態が違うと訴えても、どの裁判もオーナーに「自己責任」があるという見解だった。ところが、コンビニのあり方を根本から問う判決が出た。
「コンビニ経営を左右する本部へのロイヤルティーが、廃棄商品にまで課せられているのはおかしい」として、セブン-イレブンのコンビニのオーナーが、同社に廃棄商品へのロイヤルティーなどの返還を求めた裁判で、東京高裁は2月24日、「廃棄商品に対するロイヤルティーは不当利得に当たる」と認め、同社にロイヤルティーの一部返還を命じた。セブン-イレブンは直ちに最高裁に上告したが、この判決は関係業界に衝撃を与えている。
衝撃を与えている理由は、三つある。
一つは、従来のコンビニ訴訟が「売り上げ予測で嘘の数値を示された」などという事前説明をめぐって争われたのに対し、この裁判の争点は、コンビニの会計システムの核をなす廃棄商品に対するロイヤルティーの是非だったことである。
二つには、この裁判でコンビニ独特の会計システム解明の扉が開いたことである。コンビニの会計システムでは、売上高商品原価や売上総利益という用語の概念が、一般の企業会計とは違う。コンビニの会計はコンビニシステムの最大の核をなすものでありながら、一般の税理士にさえ難解きわまりない仕組みだと嘆かせているほどなのである。
三つには、1974年のセブン-イレブンの1号店開店以来、全国のコンビニは5万店50本部にまで発展したが、いずれの本部のシステムも、セブン-イレブンのコピーとやゆされるほど同社の仕組みに準じており、廃棄商品に対するロイヤルティーの位置づけも似ている。つまり、高裁の判決が定着すれば、全国5万店のオーナーによる「過剰なロイヤルティー返還訴訟」が始まりかねないのだ。
この裁判が始まったのは2002年3月。94年に原告の早田信広さんがセブン-イレブンとフランチャイズ契約を結び、埼玉県所沢市で所沢中富南店のCタイプオーナー(土地・建物本部持ち)となって9年目のことである。
早田さんの店舗の1日の平均売上高は約80万円。ロイヤルティーを差し引かれても十分に利益を上げていた。しかし、本部から送られてくる店舗の月締めデータが自分の計算とは違うことの疑問が膨らんだ。廃棄商品にロイヤルティーが課されていると早田さんは考えた。
廃棄商品をゼロにすれば問題はなくなるが、それはできない。コンビニ経営の鍵は商品棚が商品で埋まっていることを前提(売り上げ機会ロスをなくす)としており、どうしても実際に売れる数より多く商品を仕入れることが求められる。しかし、コンビニでは弁当や乳飲料など食品は新鮮さを商品の生命としているから、消費期限を過ぎると即刻廃棄する。
早田さんの代理人の上田栄治弁護士は、コンビニ訴訟がオーナー側敗訴の歴史である点を踏まえて、裁判官にコンビニ会計の特殊性という業界の基本を理解してもらうことから始めた。
判決文は「チャージ(ロイヤルティー)金額算出の根拠となる売上高商品原価に、廃棄ロスを含むか否かは契約上の重要規定である」と断じ、コンビニの会計用語は一般になじまない内容であると認めた。
これに対し、セブン-イレブンは「早田さんと同じ不当利得返還訴訟6件のうち5件は我々が1審で勝訴し、控訴審2件のうちの1件が1審と同じ結果であったのに、早田さんの件では敗訴になったのは納得できない。最高裁に答えを求めるのは当然です」と説明している。
コンビニオーナーは、長らく本部の方針に対しては「沈黙するオーナー」と言われてきた。オーナー側初の勝訴となったこの判決をきっかけに、異議を唱えて発言するオーナーが増えていくだろう。
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※これらの訴訟は昨年の話ですので、また今後新しい展開があると予想されます。
セブン-イレブン 廃棄商品へのロイヤルティーの是非 控訴審でコンビニオーナー初勝訴
エコノミスト編集部
松山 徳之
経済が長期低迷を続けるなかで、コンビニはリストラや商売の不振に悩む人たちの「希望の星」である。しかし、オーナーとして店の経営を始めると、コンビニ本部の事前説明では想定外の事態に遭遇する。本部を相手に提訴しても、これまではオーナー側の連戦連敗。契約前の説明と実態が違うと訴えても、どの裁判もオーナーに「自己責任」があるという見解だった。ところが、コンビニのあり方を根本から問う判決が出た。
「コンビニ経営を左右する本部へのロイヤルティーが、廃棄商品にまで課せられているのはおかしい」として、セブン-イレブンのコンビニのオーナーが、同社に廃棄商品へのロイヤルティーなどの返還を求めた裁判で、東京高裁は2月24日、「廃棄商品に対するロイヤルティーは不当利得に当たる」と認め、同社にロイヤルティーの一部返還を命じた。セブン-イレブンは直ちに最高裁に上告したが、この判決は関係業界に衝撃を与えている。
衝撃を与えている理由は、三つある。
一つは、従来のコンビニ訴訟が「売り上げ予測で嘘の数値を示された」などという事前説明をめぐって争われたのに対し、この裁判の争点は、コンビニの会計システムの核をなす廃棄商品に対するロイヤルティーの是非だったことである。
二つには、この裁判でコンビニ独特の会計システム解明の扉が開いたことである。コンビニの会計システムでは、売上高商品原価や売上総利益という用語の概念が、一般の企業会計とは違う。コンビニの会計はコンビニシステムの最大の核をなすものでありながら、一般の税理士にさえ難解きわまりない仕組みだと嘆かせているほどなのである。
三つには、1974年のセブン-イレブンの1号店開店以来、全国のコンビニは5万店50本部にまで発展したが、いずれの本部のシステムも、セブン-イレブンのコピーとやゆされるほど同社の仕組みに準じており、廃棄商品に対するロイヤルティーの位置づけも似ている。つまり、高裁の判決が定着すれば、全国5万店のオーナーによる「過剰なロイヤルティー返還訴訟」が始まりかねないのだ。
この裁判が始まったのは2002年3月。94年に原告の早田信広さんがセブン-イレブンとフランチャイズ契約を結び、埼玉県所沢市で所沢中富南店のCタイプオーナー(土地・建物本部持ち)となって9年目のことである。
早田さんの店舗の1日の平均売上高は約80万円。ロイヤルティーを差し引かれても十分に利益を上げていた。しかし、本部から送られてくる店舗の月締めデータが自分の計算とは違うことの疑問が膨らんだ。廃棄商品にロイヤルティーが課されていると早田さんは考えた。
廃棄商品をゼロにすれば問題はなくなるが、それはできない。コンビニ経営の鍵は商品棚が商品で埋まっていることを前提(売り上げ機会ロスをなくす)としており、どうしても実際に売れる数より多く商品を仕入れることが求められる。しかし、コンビニでは弁当や乳飲料など食品は新鮮さを商品の生命としているから、消費期限を過ぎると即刻廃棄する。
早田さんの代理人の上田栄治弁護士は、コンビニ訴訟がオーナー側敗訴の歴史である点を踏まえて、裁判官にコンビニ会計の特殊性という業界の基本を理解してもらうことから始めた。
判決文は「チャージ(ロイヤルティー)金額算出の根拠となる売上高商品原価に、廃棄ロスを含むか否かは契約上の重要規定である」と断じ、コンビニの会計用語は一般になじまない内容であると認めた。
これに対し、セブン-イレブンは「早田さんと同じ不当利得返還訴訟6件のうち5件は我々が1審で勝訴し、控訴審2件のうちの1件が1審と同じ結果であったのに、早田さんの件では敗訴になったのは納得できない。最高裁に答えを求めるのは当然です」と説明している。
コンビニオーナーは、長らく本部の方針に対しては「沈黙するオーナー」と言われてきた。オーナー側初の勝訴となったこの判決をきっかけに、異議を唱えて発言するオーナーが増えていくだろう。
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※これらの訴訟は昨年の話ですので、また今後新しい展開があると予想されます。