私の研究日記(映画編)

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『once ダブリンの街角で』(DVD)

2008-07-18 09:31:19 | わ行
 DVD『onceダブリンの街角で』を見た。

 物語の舞台はアイルランドの首都ダブリンである。

 アイルランドというと、北アイルランドに関わる武力紛争やテロといった、どこかきな臭い印象があった。だが、作品で見るアイルランド(ダブリンだけだが)は、そんなことを微塵も感じさせない。むしろ、時折映し出される素朴な町並みや、美しい海岸の景色を見ていていると、妙に心穏やかになってくる。

 主人公はある男(グレン・ハンサード)と女(マルケタ・イルグロヴァ)。二人の名前は、物語の最初から最後まで分からない。
 
 男は父親が営む掃除機修理屋を手伝いながら、毎日、ダブリンの街角でギターを弾き歌を歌っている。女はチェコからの移民で、ダブリンの町で花を売り歩いたり、掃除婦をしながら生活している。だが、ピアニストだった父親にビアノを教え込まれた彼女は、優れた音楽の才能を持つ。
 この作品では、偶然出会った二人が、互いの音楽の才能を認め、一緒に曲を作るまでが描かれている。

 見ていて戸惑いを感じたのは、冒頭で述べた紛争のイメージもその一つだが、アイルランドに関してこれまで自分が描いてきた印象と、映像の中のアイルランドとのギャップである。アイルランドに関する私の知識は、せいぜい高校世界史と『MASTERキートン』(笑)から学んだものに過ぎない。知識が、10年以上前のかなり古いバージョンの段階でストップしているのである。

 例えば、豊かさ。アイルランドは、西ヨーロッパの中でも、経済発展から取り残された国という印象を持っていた。しかし、作品で見るダブリンの町並みや、町の中を歩く人々の服装を見ていると、アイルランドが豊かな国であることを感じさせる。

 また、男が暮らす父親の家は、どう見ても豊かそうには見えない。息子一人を自分の店で雇うぐらいはできるのかもしれないが、昼間から音楽をやらせるゆとりなど、どこにあるだろう?。

 統計局のデータを見ると、アイルランドのGDP(名目)は約2180億ドル(31位)で、日本の約4兆3755億ドル(2位)と比べてはるかに少ない(2006年)。これだけを見ると、先進国の中でも際だって豊かな国とは言えない。
 しかし、一人当たりのGDPを見ると、この国に対するイメージが一転する。日本の一人当たりGDPが3万4252ドル(20位)であるのに対し、アイルランドは5万1665ドル(5位)となっている(2006年)。さらに、一人当たりの国民所得を見ると、日本の2万6045ドル(19位)に対し、アイルランド3万6218ドル(8位)。いささか短絡的ではあるが、一人が享受できる経済的な富は、日本などよりずっと豊かなのであろう。

 もう一つ。物語に登場する女は、チェコ移民で、母親と娘と3人で暮らしている。女が暮らす町は、いわばチェコ人街である。この点についても、なぜにチェコ人街?と不思議に思った。

 これまた、調べてみると、アイルランドは、チェコやポーランドなどの東欧諸国からの移民を、安い労働力として積極的特に受け入れてきたのだそうだ。この国は、90年代に大きな経済成長を遂げているが、成長を影で支えていたのは、恐らくこうした移民であったのだろう。

 話は変わって、映画を見ていると、否が応でもはっと気付くのが、カメラワークである。静的なのだ。被写体に対するカメラの角度と間隔、家庭用のビデオカメラで撮っているような手ぶれ感は、まるで、ドキュメンタリー映画のようである。

 だが、ストーリー、・・・というより主人公の男と女が歌う歌が、作品全体をとてもドラマチックなものにしている。
 過去の恋愛で深い傷を負っている二人が歌う曲は、優しくどこか切ない。特に、男がかつての恋人のビデオを見ながら作曲するシーン。ここで流れる歌(「LIES」)は、かつての失恋経験を思い出すようで、胸に染みた(TmT)。それにしても、男役のグレン・ハザード(アイルランドを代表するロック歌手なのだそうだ)の搾り出すような歌声は、渋みがあり、聴いていてとても心地良かった。今ではすっかりファンである。
 
 あえてこの映画のジャンルを選ぶとすれば恋愛映画となるが、日本やハリウッドの恋愛映画にありがちな男女のベタベタ感が全くない。恋愛映画がどちらかというと苦手な私でも、十分楽しむことができた。
 そして上で述べたばかりではあるが、劇中で流れる歌の優しく切ないメロディと、歌詞のストレートなメッセージとが、とても心に響いてくる。心揺さぶられる良い作品であった。
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2 コメント

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TBありがとうございました (シムウナ)
2008-10-19 11:23:56
TBありがとうございました。
ラストはう~んって思いましたけど。
音楽と恋愛が見事にマッチしていました。
二人のアンサンブルは最高でしたね。
サントラ盤が欲しくなりました。

今度、訪れた際には、
【評価ポイント】~と
ブログの記事の最後に、☆5つがあり
クリックすることで5段階評価ができます。
もし、見た映画があったらぽちっとお願いします!!
コメントありがとうございます (モッサン)
2008-10-20 11:11:30
シムウナさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

確かにラストは、がっかりでもあり、切なくもあり、格好良くもあるという複雑な心境にさせられた場面でした。

私はサントラを毎日聴いておりま~す^^。

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