もっと売れる「数理モデル」活用入門

2015-10-12 17:47:25 | 日記


(プレジデントオンライン)


PRESIDENT 2011年8月1日号 掲載


前回、「ヒット現象の数理モデル」の肝といえる数式を紹介しました。私たちはこの数式に、ブログ書き込み件数のデータや映画の興行データ、宣伝費などのマーケティングデータを入力してシミュレーションを繰り返し、「ヒット現象の数理モデル」を使って映画の需要予測ができるという結論を導き出しました。


そして「ヒット現象の数理モデル」分析によって、どのくらい前からキャンペーンを張れば最も効果的か、あるいは映画なら公開後、商品なら発売後にどのくらい宣伝を続ければよいかも計算できるとわかってきました。数理モデルを使えば、発売直後のブログの反応からキャンペーンの内容を修正することも可能です。これらはすべてデータを使ってシミュレーションした結果であり、もとになるデータが入手できたからこそシミュレーションができたともいえます。


ブログを中心にした「ヒット現象の数理モデル」分析を行うときに必須なのは、日々の変化を表す日時ごとのデータです。


「ヒット現象の数理モデル」は時間依存の数理モデルで、1日ごとの変化の度合いでどんなマーケティング施策がどのような効果を生んだかがわかります。逆にいえば、関連の日次データなしに効果は測定できません。


もしあなたがある商品やサービス、イベントなどのマーケティングを担当していて、「ヒット現象の数理モデル」をマーケティングに活用したいと思うなら、関連の日次データの取得から始めなければなりません。手順としては、まず担当している商品やサービス、イベントに類似した成功例のデータを集めます。


(1)商品なら1日ごとの販売実績や売り上げ、イベントであれば1日ごとの参加人数、(2)日次のマーケティング施策、(3)ブログのエントリー数の日次推移。これら3つについてできるだけ詳細なデータを集めましょう。たとえば販売実績に関しても、男女比や年齢別などでデータを集めれば、より対象を絞った施策を検討できます。


商品やサービスの場合、類似の成功例を他社に求めても「ヒット現象の数理モデル」分析に使えるほど詳細なデータを取得するのは困難でしょう。類似の成功例は社内で探すのが適当です。とはいえ、たとえば公共のイベントなら必ず公の報告書から情報が集められるし、公共のイベントでなくても決算報告書などIR情報として公開された資料から、案外入手できるものです。


実施した施策の費用などに関して公開された情報は少ないでしょうから、データの取得には少し知恵が必要です。私たちが映画でシミュレーションをした際、広告については広告出稿費か、あるいはGRPのどちらかのデータを電通広告統計から取得して、数式に代入しています。


データを集めたら、それを数式に代入して「ヒット現象の数理モデル」を用いたシミュレーション計算ができるようになります。それを実際の販売数や参加者数の推移とフィットするように調整すれば、「宣伝?報道」「直接コミュニケーション」「間接コミュニケーション」などの各パラメータ(係数)を特定することができます。


方程式ではパラメータが決まらないと答えを出せません。私たちが「ヒット現象の数理モデル」でこれまでに多くの映画の分析を積み重ねてきたのは、映画のヒット現象に寄与するパラメータの値を特定するためです。映画にもさまざまなタイプの作品があり、作品によって適正なパラメータ値は変わってくる。1つの映画でパラメータを特定すれば、それを応用して同じようなタイプの映画に利用できます。


パラメータを特定して初めて方程式は使えるものになります。類似の成功例を分析するのは、そのパラメータを探り、暫定的に「ヒット現象の数理モデル」分析の方程式をつくるためです。自分が担当する商品やイベントと比較するための基準をつくるのです。



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