明日にはやっと日本に戻れそう。
かれこれ、東南アジアをあちこち、くるくると回っているうちに3週間が経とうとしている。
毛穴は開いたり、閉じたりで、体中のデトックスが終わってしまったようで、汗の臭いもしなくなっている。
フライトの予約を入れたら、今日は久々に現地代理店のJとセールスの連中でも呼び出して、サウナからクラブでも一緒に行こうか?
電話をしようと思い、携帯を取り上げた瞬間に呼び出し音が・・・。
「ああ、たーさん。元気でやってるか?」
本社の人事担当取締役からだ。
「ええ、まあ、なんとかやってますよ。明日は日本に戻りますから。」
「おお、それなんだよ。明日、A社の社長がそっちに行くからよろしくね。」
「ええーっ!何でまた?」
「表敬訪問とか言ってたけど・・・」
「どこにですか?」
「さあ・・・」
「ここだけの話だけど、まーらいおんが見たいとか、何とか独り言を言ってたぞ。」
「???」
「まあ、特に仕事云々は言ってなかったし、観光でもさせといてよ。」
「明日のフライト取ってあるんですけどねえ・・」
「ま、仕方ないから変更しといて、ホテルの予約他、一切合財任せておくから。頼んだよ。」
がああーん!
仕方がないので、早速先方の秘書さんへ連絡してみると、さすがに気が咎めるのか、フライトは最終便をとってあると言う。 ま、それはそれで結構だが、迎えに行くほうの身にもなってもらわないとなあ・・・。
最終便のシンガポール到着はPM11:30頃になってしまう。
車を確保しておかないと、のんびり出てくると、タクシーが一台もいないなんて羽目にならないとも限らない。
「社長だからなあ・・・」
独り言をいいながら、ホテルでベンツを手配してもらい、空港に向かう。 あーあ、まったく。
「いやあ、たーさん久しぶり。今回は申し訳ないねえ。」
「ようこそ、シンガポールへ。」
自分の会社の中では強面で通っている社長さんだが、僕にとってみれば、気のいい、明るさがスーツを着て歩いているような人。オーストラリアにはやたら詳しいが、他の地域はめっきりという珍しい人でもある。 どうもオーストラリアには別荘を持っているらしい。
「どうしたんですか?今回は?」
「いや・・・、特に仕事がどうとかいうことはないんだ。忙しくてね。逃げて来た。」
「はあっ?逃げてきたとは?」
「言ったことなかったかな。煮詰まっちゃうと一日・二日行方不明になるんだよ。」
「連絡もつけないでですか?」
「そりゃ、今はなあ・・、さすがに行き先を教えておくけど、滅多なことでは連絡は受け付けない。」
「どうしてまた?」
「うん。まあ、社長業に向いてないんだな。根が。おやじが健在だったら、今の会社はやってなかったろう。」
「何になりたかったんですか?」
「何にも。」
「へっ?」
「何になろうかという目標も特になかったんだ。世界でもみてやろうと思っていた矢先におやじが死んだ。」
「で、社長に?」
「そう。当時は番頭が生きていてくれたから、そんなに深刻じゃあなかったんだけどね。番頭が引退してからが大変だった。毎日、どうしたらこの重圧から逃げられるのか考えてた。」
「で、編み出した作戦が "行方不明“?」
「そう。いい考えだろ?みんな心配してくれる。 ハハハ。」
「今回は何日行方不明になる予定なんですか?」
「2日しかないんだ。まーらいおんを船から見たくてね。あとはうまいもんでも食べようよ、のんびりとね。」
「では、僕も連絡とるのをやめておきましょう。こちらに電話が来たら台無しですからね。」
「ハハハ・・、それはいいね。皆に心配してもらおう。」
「さて、じゃあ、今夜はゆっくり寝て、明日から行方不明ツアーといきましょう!」
こんな悪戯なら、いつでもお付き合いしたい。
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