自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

☆皇室の「全身全霊」

2017年06月14日 | ⇒メディア時評
  けさ(14日)新聞を読んでいて、皇太子が13日、デンマーク訪問を前に東宮御所で記者会見をされた記事に目が止まった。注目したのが見出しだった。「皇太子さま務め『全身全霊』で」(朝日新聞)。もう一紙も「象徴の務め『全身全霊』 皇太子さま会見 退位法、言及控える」(北陸中日新聞)。

   「全身全霊」という言葉を両紙ともに見出しに使っている。前後の記事の文脈を読むと、記者から、生前退位特例法(今月9日成立)について感想を求められたが、皇太子は「皇室の制度面の事項について、私が言及することは控えたい」とコメントを避けた。続いて記者から象徴天皇の役割を引き継ぐことについて尋ねられ、「陛下はお仕事の一つ一つを心から大切にしてきた。そうした陛下のお気持ちを十分に踏まえ、これまで陛下より引き継いだ公務も含め、それぞれの務めに全身全霊で取り組んでいきたい」と答えられた。

  会見で皇太子は「全身全霊」という言葉について、昨年8月の陛下の生前退位の願いを込めたお言葉の中で使っていて、「とても心が揺さぶられた」と述べていて、今回はご自身の言葉としても使われ、陛下の思いを継承する決意を示したようだ。

  では、陛下は昨年8月8日のお言葉で「全身全霊」をどのように述べたのだろうか。「既に八十を越え、幸いに健康であるとは申せ、次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」

  全身全霊という言葉は一般的に「身も心も捧げる」といった意味で使うが、皇室ではもう一段踏み込んだ意味があるのではないかと推測している。そう思う根拠は、陛下の以下のお言葉から察する。「更にこれまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き、その後喪儀に関連する行事が、1年間続きます」。「重い」と表現された「殯の行事」は、一般の葬儀とは違って、ご遺体と共にする「お通夜」が2ヵ月にわたって続く。つまり、ご遺体の腐敗が進むまで儀礼を続けることになる。

  こうした死者の弔い方は東南アジアで一部今でも残っている。ユネスコの世界文化遺産にも登録され、棚田で有名なフィリピンのイフガオを訪れたおり、聞いた話だ。死者を布でくるんで白骨化するまで自宅に置く。家族は死者を身近に置くことで、亡き人をしのぶ。日ごとに悲しみにと同時に死者への畏敬の念が沸いているのだという。その後、家族で洗骨の儀式を営み、埋葬する。こうした死者の弔い方は古代からの農耕文化の名残なのだろうか。

  話を戻す。昭和天皇の「殯の行事」は皇太子も体験されていることだろう。天皇を継承するということはこうした「重い」儀式を経て受けつがれるのだと察する。天皇が発した「全身全霊」という言葉に皇太子が反応して記者会見でも発しということは、この言葉は一般で考える以上に皇室ではよりスピリチュアルな響きがあるのではないだろうか。

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